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三分小説

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明日ノ澪の三分小説
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#小説

【三分小説】眠れる夜の声

【三分小説】眠れる夜の声

物語はいつも浮かんでいる。

目を閉じる前には、
この様にして、
頼りない程度の灯りでこの紙を照らし、
持ち前の温かな気持ちを呼び起こす事が
何よりも良い夢を見せるのです。

"夜には星が輝き、月は微笑んでいる。"
そう思い込む猫が、居る。
正確にはハクビシンという。

ハクビシンは、夜がだいすきだった。
彼は夜行性で
「ぼくは電線を渡るのがとっても早い。
流れ星よりも早く
向こうの電柱まで行く事

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【三分小説】命綱

【三分小説】命綱

僕はね、今も昔も、はっきり言って生きづらいんだ。
今から話すのは過去にあったできごとの、ひとつ。
辛かったら、途中で読むのをやめてもいいからね。

靄のかかった冬の薄明かり。
芳醇な香りが辺りに漂っていると錯覚するくらいに濃い夕方。

中学3年生の僕はひとり、下校途中の高校生たちが行き交うのを、橋の上から眺めていた。

彼らは未成年という名の下、支配され、みんなどのように息をしているのだろうか。と

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【三分小説】バス停

【三分小説】バス停

蟹クリームコロッケが一欠片落ちた。
そしてわたしは1か月前、
新しいアルバイトをはじめた。

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決まって黒猫が横切るバス停。
わたしは週6日
夕方になると
日曜日の夕飯を作るような気持ちで
大きなバスを待つのだ。

店の前に着く頃には、
街は琥珀色に輝きはじめている。
暖かそうに見えるが、心は冷たかった。

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