お客様が、スタッフが、ヒトがあつまる経営理念の作り方
中小企業の悩みはいつの時も、売上とヒト。
一歩進んで三歩下がるような感覚に陥り、日々心がすり減っていく経営者。
「半年後に新店舗を出す準備中に店長候補が辞めてしまった」
「何年も手塩にかけてきた管理者が退職となり、また最初からの振出しに戻るのか」
そんな中でも、お客様の「ありがとう」や「ごちそうさま」の声や、スタッフの笑顔で、「また頑張ろうかな」と立ち上がる。
私たち中小企業経営者を支えてくれるのは何でしょうか?
それは「夢」だと思います。
私たち経営者がどれほど心が擦り切れても、それでも続けたいと思えるのは、創業当初から培ってきた「世の中や地域や目の前のお客様、そして働いてくれるスタッフたちを○○していきたい」という夢が私たちの原動力です。
「夢を実現したい」という思いこそが、経営者を支える唯一の原動力となります。
その夢をどのように人に伝えていくべきかを考えていくと、ここで経営理念という言葉が浮かんできます。
この経営理念を明確に作り、そして伝えていくことで、お客様が集まり、従業員が集まってくる企業に変わってきます。
そう、経営理念が経営者のあなたを守ってくれる唯一の武器になる。
今回はこんな話をしていきたいと思います。
ビジネスをフォーカスする
ビジネスの目的は何かといえば、やはり人類を含む世界がより豊かなものになるために作られる仕組みを創ることだと思います。
世界を「便利で安全で快適に暮らせる場所」にすべく、ビジネスは目的を発揮し世の中の「不満・不安・不便」を解決してきました。
その「不満・不安・不便」は顕在化しているものもあれば、まだ誰も気づいていない潜在化しているものもある。
それらの「不満・不安・不便」を発見し、仮定し、提案し、実行していき、そして解消するものがビジネスだとすると、あなたのビジネスは世の中のどんな「不満・不安・不便」を解消するためにあると思いますか?
「なんでこのサービスはこんなに不便なんだろう?」
「今のこの商品の仕組み、おかしくないか?」
「不便だと思っているのは自分だけなんだろうか?」
「こうあるべきではないか?」という未来を構想していくことから、あなたのビジネスの目的が決まっていくのです。
これがビジネスをフォーカス(焦点)するということです。
スノーピークの経営理念の事例
例えば、この原稿を書いている2022年9月だと何かと話題のスノーピーク社は、新潟県三条市にあるアウトドア総合メーカーでプライム市場上場です。こちらの企業は経営理念の成功モデルとしてよく知られていますが、この企業を今の姿まで成長させたのは、創業者の長男であり1996年に代表取締役社長に就任した山井太さんです。(2020年より娘の山井梨沙さんへ承継していましたが、いろいろあって2022年9月に辞任し、また太さんが代表取締役社長に戻っています)
山井さんがやったのは、テントを売るのではなく、日常にアウトドアを取り入れるというライフスタイルを売ったということです。
経営理念の事例として他にも秀逸だと思うのは、百食屋です。ぜひこちらもご確認ください。
経営理念が明確だと、どんな効果があるか
経営理念が明確に伝わてっていくとどのような効果があるでしょうか?大きくは3つの効果があると思います。
▼明確なビジネスモデルが構築できる
言わずもがな、企業のビジネスモデルは経営理念から派生して生まれてきます。
上述の通り、「なんでこのサービスはこんなに不便なんだろう?」という疑問から起業家が生まれ、その疑問を解消すべくビジネスというものがあります。
そのため、経営理念が明確であればあるほどビジネスモデルも尖ったものとなっていきます。
つまりは、やることだけでなく、「やらないこと」が明確になってくるということです。上述のスノーピークで言えば、他と同じ製品は作らないということです。
自分たちが創りたい世界がどれだけカラーでイメージできているかどうかによって、やらないことをどれだけ明確にできるかが分かれていきます。
こちらの漫画を紹介しましょう。戦略についてわかりやすく、しかも的確に定義した漫画です。
何でもやるのが戦略がない企業。自社が強い分野を選択し、その分野に集中して経営資源を投入していくのが戦略のある企業です。さらのこの漫画から、戦略は経営トップが理解しているだけではなく、企業の末端まで浸透して初めて生きたものになることがわかります。
▼スタッフが集まってくる
(人材教育)
経営理念というものは企業の目指す道しるべです。なので、これが浸透している企業では、そこで働くスタッフは仕事において「何を優先すべきか」が明確になります。
単純に仕事としてこなすだけではなく、その夢の達成のために何が必要で何が必要でないかが、社長がわざわざ伝えなくても経営理念をもとに考えれば自分で判断できるようになります。
結果としてスタッフにも自分の裁量が広がり仕事のモチベーションが高まりやすいのもメリットとなります。
次に、スタッフの教育という意味でも有効です。
経営理念に従った行動をとれば評価される仕組みにすることで、公平性も高まりスタッフのパフォーマンスも自然に上がってきます。
(採用)
さらには現代の若者は「社会的意義が高い仕事」にあこがれる傾向があることが統計から読み取れます。
つまり、社会的意義を社会の課題を解決すると読み解けば、社会の課題を解決する経営理念を明確に持った企業にあこがれる人は多いということです。
そしてそれがメッセージの形で伝わっていけば、中小企業においても採用に大きなアドバンテージを得ることが可能となります。
▼社長の役割が変わる
経営理念がない企業とある企業の、社長の仕事が異なってきます。
経営理念がない企業では、社長がスタッフの見本です。社長が現場に出て、文字通り背中で教育していくスタイルでしかスタッフは指導できません。常に社長が第一線で働き、見本を見せ、口で何度も説明をして事業を未来へ導いていく必要があります。
一方、経営理念がある企業では、社長の仕事は経営理念の浸透です。会社の道しるべは社長ではなく経営理念が役割を担ってくれますので、社長はそれを浸透させることに全力を注げばいい。
企業の拡大とともに、スタッフも増えてくると社長が現場ですべて管理していくが難しくなってきます。その結果、社長が管理しきれない部分が、きちんと組織の中で不具合として顕在化してくるものです。
従業員の退職、品質の低下、クレーム。様々な形で管理が行き届かないしわ寄せが明確に表れてきます。
逆に言えば、それが企業として経営理念をきちんと作るべきシグナルとなります。
経営理念が明確にできていていれば、それを受けついていくことができます。社長のコピーは作れないけれど、企業の理念の共有は可能です。
こうやって事業は拡大させていくのです。
経営理念の浸透のさせ方
経営理念の論点で、一番難しいのがその浸透のさせ方です。
組織論においては、どのような課題もそれを仕組みとして導入できるか否かが一番重要で、そして難しい。
最初に申し上げておきますが、経営理念を浸透させる一番の秘訣は、「あきらめないこと」です。これ以外の道はなく、そして一番の近道です。
浸透方法として何点かご紹介していきましょう。
最初に忠告しておきますが、経営理念の浸透方法を考えるときに一番重要なのは企業文化との相性です。
いずれに方法が有効かどうかは誰も証明できない部分であり、完全に企業文化との相性で効果が異なりますので、そこを注意しながら選択ください。
▼唱和
朝礼等で全員で経営理念やビジョン、行動指針を唱和する企業は少なくありません。
人間というものは何度も口にしたり行動することで、自然と体に染みついてくるということが科学的に立証されています。
そのため、特に日本においては昔から実践されてきた方法であり、大企業含め今でも実践する企業はあります。
私自身も、このやりかたに共感することも多く、実践されている企業でも成功されている企業も少なくありません。
↓詳細を知りたい方はこちら
ですが、私は私の会社で経営理念の唱和は実践することをやめました。
これは企業文化に大きく起因するところと思っていて、弊社ではこれを実践することで「経営理念がキライになってしまう」スタッフが出てくると思ったからです。
朝の朝礼で、昭和をしている最中、眠い目をこすりながら心ここにあらずで唱和しているスタッフを、私は怒れるかと言ったら無理だなと思いました。
弊社の企業文化では、唱和を徹底することでスタッフみんなが経営理念を好きになり理解してくれるようになるとは思えませんでした。
その代わりに、朝礼等では話をするときに経営理念や行動指針につながるような話を多くするようにして、「うちの行動指針では~」という言葉をあえて伝えるように工夫しています。
▼クレドカード
クレドとは、企業の信条や行動指針を簡潔に示した言葉です。ラテン語で「信条」を意味するクレド(Credo)に由来しています。
クレドは経営判断や社員が現場で行う判断の指針となります。企業内や取引先、顧客との間に共有し、馴染ませることで効果を発揮するのです。
代表的なクレドとして、ザ・リッツ・カールトンホテル カンパニー L.L.Cの「ゴールドスタンダード」が有名です。以下にクレドの文章をご紹介します。
企業理念は企業の存在意義や基本的な考え方を示したものです。創設時に定められることが多く、基本的には大きく変わらずに使い続けられます。また、企業理念はトップダウンで作られ、抽象的な文言が使われているケースが多くあります。
クレドは具体性のある文言で簡潔に作られており、社員に伝わりやすい言葉になっているのが特徴です。
最近ではこのクレドをカードにしてスタッフに配布し常に携帯しながら、折に触れそれを確認してもらえるような仕組みにしている企業もあります。
こちらも、御社の企業文化としてなじむかを検討してみてください。
個人的には、このクレドカードが浸透するのは、スタートアップやベンチャー企業のような、もともとスタッフの愛社精神が情熱的に高い企業に限られると思っています。
▼人事評価制度
そしていろいろな経営理念の浸透方法の中でも一番有効と思うのは、人事評価制度の評価項目として行動指針通りの行動をしているかという項目を取り入れていくことです。
評価項目、つまり給与に関連させることで自然と従業員も行動指針や経営理念を理解してくれるようになることが期待できます。
こちらの方法は、給与というスタッフのモチベーションにも直線関連する要素に訴求することで経営理念の浸透方法として優れていると思います。
ただし、経営理念や行動指針をもとに作成する人事評価制度を構築する必要がありますので、難易度は高いものとなります。
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今回は、事業運営の根幹部分となる、経営理念の観点から切り込んでみました。
少しでもお役に立てた部分があれば幸いです。
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