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幽閉

バンコクで生活していると、身近においしいものが溢れているせいで、気が付くと腹に余分な肉がついているということがままある。

しかし、食べないという選択をするのはもったいない。
だからこそ運動をすることが重要になってくる。

僕が住んでいたアパートの最寄の駅、BTSラチャテウィー駅の目の前に、「アジアホテル」という老舗の大きなホテルがあった。

ホテル内には宿泊客だけでなく、誰でも利用できるフィットネスクラブが入っていた。僕はラチャテウィーに住んでいる間、ここのジムに通っていた。

そんなに広くはないが、器具は一通りそろっている。利用客は少ない。落ち着いて静かに、トレーニングに取り組める環境を有している。

タイのフィットネスクラブ全般に言えることだが、契約期間が長いほど月会費が安くなるシステムになっている。

ジムの会費にいくらか上積みすることで、プールとジャグジーを利用することもできた。また、1回のみの利用も可能である。

プールのあるエリアは、四方が客室のある棟に囲まれているため、まるでここだけ時が止まっているかのような、非日常的な空気を感じる。

ジムのスタッフがときどき、植物に水をやる手を止めて、誰もいないはずの水面をじっと見つめる。まるで、浮いているはずのないものが浮いているのを見るような鋭い目つきで。

擬似的に、僕はこの時の流れが停滞した淀みの空間に幽閉されにいく。老舗ホテル特有の、威厳とも不気味とも取れる奇妙な雰囲気に安らぎを抱きに。

うだるような暑さの夏の午後2時。マンゴースムージーを飲みながら、外界から遮断された白昼のプールサイドで過ごしていたい。

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