tomo🇹🇭โทโม

僕がタイで視えたもの、聴こえたもの。 ちょっと偏ってるかもしれないタイのあるき方を、…

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僕がタイで視えたもの、聴こえたもの。 ちょっと偏ってるかもしれないタイのあるき方を、ポエムエッセイ風につづっています。 タイの旅のおともにどうぞ。

最近の記事

台湾のことをタイで考える

僕がタイに住んでいた頃、一緒に住んでいたのは台湾人で、花や木が好きだった。 部屋の中央に置かれたダイニングテーブルには、いつも活けられた蘭があった。それは彼の生き方を具現化するかのように、いつも凛として咲いていた。 そうなのだ。凛としていなければならない。 外国人がタイで生きるということは、常に凛としているということなのだ。 僕は一度彼にひどいことを言った。ちょっとしたけんかになったとき、「君はタイ人になった」と言い放ったのだ。 彼は瞬時に傷ついたような顔をした。僕

    • クイティアオ屋台のおばちゃん

      タイに初めて住み始めた頃の話。 職場はバンコクのアソークにあり、アパートはプロンポンのソイ39にあった。職場からアパートまでは徒歩20分くらいだったかな。 仕事帰りに晩ごはんを買って帰るんだけど、その時によく行った店がソイ39の入口にあるクイティアオ屋台だった。 当時はタイ語が全くわからず、コミュニケーションをとるのが困難だったけど、足繁く通ううちに店のおばちゃんと顔見知りになり、次第に言葉はなくともお互いに笑顔を交わすようになっていった。 知り合いも全くいないタイ生

      • 気が抜けないバス停

        タイのバスに時刻表はない。いや、正確にはあるのだけれど、あったとしても定刻にはまず来ないので、機能していないと言ったほうが適切かもしれない。 それがタイらしいといえばタイらしい。それでこそタイのバスなのだ。これで文句を言う人はタイに向いていないのだろう。 タイのバスには時刻表がない。じゃあそのいつ来るかもわからないバスを、一体どうやって待つというのか。 ひたすらバスが来る方向を監視して、自分が乗るバスを 見逃さないようにするのである。なんと原始的な待ち方だろうか。 バ

        • 幽閉

          バンコクで生活していると、身近においしいものが溢れているせいで、気が付くと腹に余分な肉がついているということがままある。 しかし、食べないという選択をするのはもったいない。 だからこそ運動をすることが重要になってくる。 僕が住んでいたアパートの最寄の駅、BTSラチャテウィー駅の目の前に、「アジアホテル」という老舗の大きなホテルがあった。 ホテル内には宿泊客だけでなく、誰でも利用できるフィットネスクラブが入っていた。僕はラチャテウィーに住んでいる間、ここのジムに通っていた

        台湾のことをタイで考える

          クイティアオを再考するくらいだから

          タイに住んでいた頃、よく食べていた料理の一つ、「クイティアオ」という麺料理のことを再考してみたいと思う。なぜなら僕にとって、タイで最も身近だった料理がクイティアオだったから。 道を歩けばクイティアオ屋を見かけない日はないと言えるくらい、クイティアオ屋はバンコクで一番目にする機会の多い屋台だった。 では、その「クイティアオ」とはなにか。 「クイティアオ」は米麺を使った麺料理で(麦麺を使ったものもある)、パクチー、もやし、鶏肉などが乗ってて、麺の太さや汁のありなしを選べる、

          クイティアオを再考するくらいだから

          古のバンコク、郷愁のショッピングモール

          バンコクの王宮などがあるエリアと中華街(ヤワラート)の間に、「オールドサイアム」という名のショッピングモールがある。インド人街の「パフラット市場」から程近い場所だ。 僕はこの「オールドサイアム」というショッピングモールがとても好きだった。シーロムの近くのサムヤーンに住んでいた頃は多くて月2、3回は足を運んでいたほどだ。 どうしてそんなにこのショッピングモールが好きだったのだろうか、と考えてみると、このショッピングモールに過去のバンコクを見ていたからなのかもしれないというこ

          古のバンコク、郷愁のショッピングモール

          「タイの暮らしはどうでしたか?」と聞かれても

          日本に帰ってきて、たびたび会う人に「タイの暮らしはどうでしたか?」と聞かれることがある。 僕はこの質問をされるたびに、それは「昨日一日はどうでしたか?」と聞かれることと同じで、答えようにも答えられず困った。 タイで働くってどうでしたか?とか、タイ人とコミュニケーションをとるのって難しいですか?とか、タイの生活は大変じゃなかったですか?とか。 細かいことを言えば色々あることはあるけれど、一言で言ってしまえば、「日本の暮らしと同じ」、これに尽きると僕は思っている。 実は僕

          「タイの暮らしはどうでしたか?」と聞かれても

          無印を知らないなら無罪にしてほしい

          バンコクのプラトゥナームという地区には巨大な衣料品市場がある。 ただでさえ安い衣料品が、ここに来ればさらに安く買えるということもあって、連日観光客や地元客で大賑わいだ。 そんなファッションタウンでよく見かけるのがこの靴下。「無●良品」風のタグが付いている。あの「無●良品」がこの名もなき露店に靴下を卸していないと言えないこともないが、限りなく言えないことを直感で悟る。タイに住んでいると、パチモンセンサーが研ぎ澄まされる。 しかし僕がいつも思うのは、これを卸したり仕入れたり

          無印を知らないなら無罪にしてほしい

          ラチャテウィーのレストランに流れる三つの川

          僕がラチャテウィーに住んでいた6ヶ月は、それまでよりももっとタイの暮らしの深奥に潜り込めた期間だった気がしている。 ラチャテウィーはBTSサイアム駅(タイ随一の繁華街)から一駅の場所でありながら、少し路地を入っていくと一気にローカル感の増すエリアを有する。 そういうエリアに住んでいると、日本人であるというだけで目立ってしまい、通りを歩くだけで会釈をしてくれる人も増えてくる。 ここで紹介する「Kopi7」というレストランもその一つだった。 僕はここに来ると、いつもハンバ

          ラチャテウィーのレストランに流れる三つの川

          タイ語と足掻き

          なかなかタイ語に触れることのない日本での生活を過ごしていると、このままでは本当にタイ語を忘れてしまうのではないか、という恐怖に見舞われることがある。 それでいそいそとAmazonを開き、タイ語のテキストを購入して、届いたテキストのページを開いてみるのだが、そうすると意外とそれほど忘れていないことを思い知らされる。 「一度勉強したことはなかなか忘れないものなんだな」とやや安心しつつも、やはり全て当時のまま覚えているというわけではないことにも気づく。そういうわけで僕は今、タイ

          タイ語と足掻き

          彼は本当はタイを愛したいと思っている

          (これは以前書いた日記をリライトしたものです。日本人の僕が見たタイのことを、今一度記録として残しておきたいと思って掲載しました。) 僕にはタイを憎んでいるタイ人の友人がいる。 彼のおじいさんは日本人だ。彼はよく「俺は日本人の血が入った大和民族だ」と主張した。日本こそが祖国だとして、日本を愛していた。 そして彼は心からタイが嫌いだった。口を開けば、タイの悪口を言っていた。悪口と言うとかわいく聞こえてしまうが、そんな生優しい感じではなく、ほとんど憎悪に近かった。 彼はタイ

          彼は本当はタイを愛したいと思っている

          バンコク家賃2万円のアパートで地域と暮らす

          サムヤーンという町がシーロムの隣にある。シーロムは言わずと知れたバンコク随一の歓楽街として有名だが、その隣のサムヤーンは行ったことがないという人が多いかもしれない。殊に観光客がここに行くことはそうそうないだろうと思う。それくらいバンコクの中では目立たないほうの町だ。 ただ近くにはタイ最高峰の大学、チュラロンコン大学があり、その南側にはチャムチュリースクエアという巨大な複合ビルが隣接している。決して派手な町ではないが、ローカル感だけしかないというエリアでもない。さらには近年、

          バンコク家賃2万円のアパートで地域と暮らす

          シーロムで泡沫の恋をしたことがある

          サムヤーンに住んでいたころはシーロムが近かったので、仕事が終わってちょっと散歩するときはシーロムを歩くことが多かった。 シーロムはタイ人と外国人が半々か、もしくは外国人のほうが多いと感じるくらい、外国人が溢れている街だ。 僕はタイ独特の様々な人種が行き交う風景が好きなので、シーロムのような外国人の多い街を見ることも好きだった。シーロムはこれはこれでタイならではの風景なのだ。 隠微さの漂う路地のピンクや紫のネオンが足元を照らして、そこをビルの隙間の闇から現れた猫が駆け抜け

          シーロムで泡沫の恋をしたことがある

          引っ越し

          僕がまえに歩いたスクンビット通りのプラカノンから、アソークの間。 タイの冬が訪れそうな、11月のある夜。知り合いとルームシェアをすることになって、住むまえに部屋を見に行った。 部屋のなかで雨の音を聞きながら、ここに住むことを想像した。小さい部屋に、IKEAのベッドと机。新しい生活のことを考えて、また考えた。 部屋を見た帰り、プラカノンに住むことになったことに高揚して、意味もなく、心地良い暖かい風に吹かれて、アソークまで歩いて行こうと思ったあの夜。 僕はプラカノンがその

          タイの男はバスの中でよく立ち上がる

          タイの男は優しい。もちろん全ての男というわけではないが、おおかた優しい男で溢れていると感じる。どうしてそう感じるのか。 それは特にバスのなかで感じることが多い。僕がタイに住んでいるときに、バスの中で100回以上は見かけた風景、それが席を譲る男の姿だ。 もちろん男だけではなく女も譲るのだが、男の方が譲る対象が多いぶん、譲る回数も多くなり、見かける回数も増えるのだと思う。 どのように譲るのか。その譲り方に迷いがない。バスの座席は乗客で埋まっている。そんななか、お年寄り、小さ

          タイの男はバスの中でよく立ち上がる

          ソムタムの思い出

          今日はタイ料理のソムタムの思い出について、書いておこうと思う。 ソムタムとは熟していないパパイヤをささがきにしたものに、刻んだインゲン、トマト、ピーナッツ、干し海老などを加え、ナンプラー、ニンニク、ライム、砂糖、唐辛子などで味付けしたタイ風サラダのこと。 ↑ソムタムタイ ただサラダといっても、味はしっかりついているし、しんなりしているし、どちらかと言うと酢の物と言ったほうが感覚的に近いかなと、僕は密かに思っていた。 上記の材料を使ったものが「ソムタムタイ」と呼ばれる最

          ソムタムの思い出