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2024年5月の記事一覧
星色Tickets(ACT1)_SCENE11
//背景:住宅街_夜
車の走行音を聞きながら、静まり返った夜の街を歩く。
くたくたになって帰路を辿るこの時間は心地よくて好きだ。今日も頑張ったなぁ、前に進んでるなぁって、そう強く実感できる時間だから。
//背景:恭司の暮らすマンション_夜
五分ほどして家に到着する。
近くに小川があるからか、仄かに鈴虫の鳴き声が聞こえてくる。
夏場になるとヒキガエルの鳴き声とセミの鳴き声が混ざってなかな
星色Tickets(ACT1)_SCENE10
//背景:喜多川書店_夜
志那「時間ですよ、先輩」
恭司「ん、もうそんな時間か」
週五日のアルバイトの内、三日はここ、喜多川書店で働いている。
恭司「さ~て、ここからはアルバイトとして掃除に精を出すとしますかねぇ」
志那「羨ましいもんですね。実労働十分で時給換算三時間分の給料を稼げてしまうなんて」
ここは、時給が飛びぬけて高いわけでもべらぼうに低いわけでもない都内平均やや上くらいの、稼ぐの
星色Tickets(ACT1)_SCENE9
//背景:職員室_夕方
アリス「これでよしっと。明日から演劇サークルは公認の部に昇格です」
恭司「ありがとうございますアリス先生」
アリス「どういたしまして。むしろ、これくらいしかできなくてごめんね?」
恭司「いやいや、顧問に加えて全国高等学校演劇大会のエントリーまでしてもらって。不満なんて少しもありません」
恭司「いつも俺を支えてくれてほんとうにありがとうございます」
アリス「ふふ、恭司くんは
星色Tickets(ACT1)_SCENE8
//背景:演劇サークル部室_夕方
恭司「ここが俺たち演劇サークルの部室。まだ正式な部とは認められてないけど、手続きが済み次第正式な部になる予定だよ」
最終下校時間までまだ一時間近くあり、ふたりともこの後に用事が詰まってるわけでもないみたいだから、部室の場所を教えるとか入部手続きを済ませるとか、そういう事務的な用事は今日の内に片づけてしまうことにした。
時間は有限だからな。一秒だって無駄にはで
星色Tickets(ACT1)_SCENE7
//背景:中庭_夕方
瑠奈「それで忸怩くん。その子があなたの運命の相手ってことでいいのかしら?」
恭司「お前、わざと誤解させるような言い回ししてるだろ」
星「……」
恭司「雛鳥? 息してるか?」
星「……あ、ああ、すいません。藤沢せんぱいが誰かと話してる姿をはじめて目にしたので、ちょっとびっくりしちゃって……」
今の言葉から推測するに、藤沢瑠奈という生徒の存在は、既に一年生の間にも浸透している
星色Tickets(ACT1)_SCENE6
//背景:中庭_夕方
少女「それでおおかみせんぱい、仲間ってなんですか?」
いや自己紹介の意義……
ま、当面はおおかみ先輩として過ごしますか。
恭司「これから演劇サークルの一員として、一緒に全国最優秀賞をめざす仲間を探してるんだ」
恭司「といっても、部員はまだふたりしかいないんだけどね」
脚本も役者もいなくてまだ正式な部とも認められていないのに、なに夢物語ほざいてんだって罵倒されそうだけ
星色Tickets(ACT1)_SCENE5
//背景:演劇サークル部室_夕方
すもも「で、どうしまっせ部長さん」
東にあった太陽が南中高度の最高点をすぎたのは、たぶん五時間くらい前のこと。
南中高度なんて中学以来耳にした覚えがないのによく覚えてんなぁ……
とか、思いのほか優れてる記憶力に感心してる場合じゃない。
恭司「……土下座しかないよな」
約束の十七時まで、残すところ一時間。
俺とすももは、部室で頭を悩ませていた。
すもも
星色Tickets(ACT1)_SCENE4
//背景:校門_朝
恭司「演劇に興味ある人いませんか~! 初心者でも大歓迎! 今ならレギュラー入り確実だよ~!」
女子生徒1「おはおはきっしー。今日も朝から精が出ますなぁ」
恭司「おはようございます福原先輩。入部希望……ではないですよね」
女子生徒1「受験がなければねー。力になりたいのはやまやまなんだけどさー」
女子生徒1「っと、一分一秒が天下の分け目だからわたしはこれで! ファイトだよきっしー
星色Tickets(ACT1)_SCENE3
//背景:住宅街_夜
オレンジ色の空は藍色に染まり、かと思えば黒色に染まり、気づけば時刻は二十時。
恭司「……やっぱりそうなるよな」
あれから校舎を駆け巡って生徒をスカウトしたけど全滅で。
バイトが終わる頃にはすももから吉報が届くだろうと期待していたけれど、現実は『ダメでした……』の凶報がスマホの画面に躍っていて。
恭司「……まぁなんとかなるよな」
けど俺は、決して悲観的にはならない。
星色Tickets(ACT1)_SCENE2
//背景:演劇サークル部室_夕方
恭司「というわけで明日までに役者が必要なんだけど、誰か心当たりはないか?」
ところ変わって、演劇サークルの部室……になる予定の部屋。より細かく言えば、旧校舎二階。
すもも「いやいや……え、冗談でしょ?」
廊下に反射した夕陽が室内を仄かに照らし、どことなくムーディな雰囲気が漂う部室に、場違いもいいところの調子外れな声が響く。
すもも「あの、難攻不落の藤沢さ