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【今週の1冊】2021年3月②『教養の書』(戸田山和久,筑摩書房)

教養とは何か?あなたは考えたことはあるだろうか?

大学生は教養科目を低学年のうちにたくさん履修することが多いと思う。しかし、世の大学生はその意味を理解して学んでいるのかと言えばかなり怪しい。進級や卒業のために単位を埋める、つまり単なるタスクとして処理していないだろうか?正直、耳が痛いという人も多いのではと思う。

本書は、大学で教養科目を教えてきた著者が長年考えてきた「教養とは何か?」という問いに答えた教養論である。具体的には、教養とは何かを考察したうえで、私たちがそれを身に着けていく過程に待ち受ける落とし穴とその対処法について解説し、最後に教養を身に着けるうえで役立つ考え方や勉強法を紹介するといった内容となっている。

本書の序盤では理系の大学生には耳が痛い形で、大学における教養教育の意義が語られている。簡単に言うと、理系の専門家と言うには少なくとも大学院の修士までは修了している必要がある(現に就活の現場では多くの企業が、学部生については文理不問という姿勢をとっている)が、多くの学生は学部までで就職するため、専門教育だけを重視するのでは"専門家のなり損ない”を量産することになってしまう、ならばせめて教養をしっかり身に着けさせることが重要なのではないか、というようなことが書かれている。本当に耳が痛い。

そもそもなぜ教養を学ぶ必要があるのか、肝心の教養とは何かについては、ぜひ本書を読んで学んでほしい。少なくともただの知識、知っててうれしいトリビアなどでは決してなく、はるかに深い意味があるのだ。

私は大学で学ぶなかで、漠然と「教養を身につけたい」とは思っていたものの、肝心の「教養とは何か?」ということに関しては「知っていると人生の中でいつか役に立つかもしれない知識」くらいの認識だった。しかし教養に関する本をいくつか読む中で、私のその認識は完全に変わった。中でも本書は私の教養に対する理解を深めるうえで特に役立った本の1つだ。

大学でなんとなく教養科目を学んでいる人は必読だが、学ぶことの意味について考えたい人やシンプルに教養を身に着けたいと思っている人など、年齢関係なくお勧めである。大学教授の書いた本というととても難しそうに感じるかもしれないが、語りかけるような文章でわかりやすく、そして面白く書かれており、普通に読み物として楽しく読めるくらいなので安心して手に取ってほしい。


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