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エスプリの効いた百合

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自分が自分でいたいから、彼女たちはもう一度つながる。『ギークス!』『あたしは可愛くなんてない。』の続きでありながら、新しい世界である百合小説シリーズ。 (『エスの旋律』) かつて…
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#恋愛

処女失格(5) 君との日々

処女失格(5) 君との日々

 お姉ちゃん。
 私……本当は、ただお姉ちゃんが好きなだけだよ。
 恋だった、はずだったんだよ。
 お姉ちゃんにしかなれないお姉ちゃんのこと。

 あの言葉に迷いがあるその理由は、私にはとうとう分からなかった。
 きっとこれからも分からないままだろう。
 だって私には、ああいう類の気持ちを受け入れる力はないのだ。
 明里の……私のもうひとりの母のように、「藍里ちゃんは何もなくて運が良かったのね」と

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処女失格(3) つぼみのアリア

処女失格(3) つぼみのアリア

 僕はここで待ってるから、その唇を奪いに来て。
 巽清隆お得意の、深い水底のようなEDMサウンドとともに歌詞が紡がれている『つぼみのアリア』。
 初めての恋のはずなのに、夢で何度も会っていた運命の人。
 紅の薔薇がほころんでゆくみたいなその感情に戸惑いながらも、僕は孤独の中で歌うのだという。

 ……そんなもの、理解できるはずないじゃないか。
 私が分かる愛おしさとは、傍らで手を握って添い寝してく

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処女失格(2) いばらの彼女

処女失格(2) いばらの彼女

 名ばかりアイドルの朝は遅い。
 寝ぼけ眼をこすって台所に入ると、ひとり、おにぎりを握っている人物がいた。
「おはよう、お姉ちゃん」
 えらく平然とした、いつもの落ち着きのある妹だ。
 すっぴんにメガネという出で立ちではあるが、ちゃんと小綺麗に着替えている。
 一日中パジャマという日も珍しくない私とは大違い。
「今日は塩昆布とねぇ、梅おかかにしてみたんだぁ」
「そっか。どうも」
「それとねぇ、通販

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【百合好きがやってみた #目合い祭 】君としたいの

【百合好きがやってみた #目合い祭 】君としたいの

※2024年4月追記:元々の企画は成人向け設定のワンクッションのために有料化しておりました。
が、noteで正式に成人向けのゾーニングがなされることとなったのと、あさのがnote内で収益をいただくことを終了させたので、全編無料公開となりました。
作品自体は今でも大切なものなので残しておきます。
よろしくお願いします。

 こんにちは、朝乃です。

 元々は、この企画のために考えていた百合モノではあ

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処女失格(1) 君が男ならいいのに

処女失格(1) 君が男ならいいのに

 今年の冬将軍は、人に甘かった。
 街はやれバレンタインだ何だと浮かれているのだけれど、私の子供の頃に比べれば随分と優しいイベントになったような気もする。
 何故なら、チョコレートをあげる相手は必ずしも恋仲の関係じゃなくても構わなくなったから。
 いっそ義理チョコまでやめてしまえ、という動きまで出ているのだから驚くばかりである。
 でも私は……同性から貰う安いチョコを、バレンタインデーの後からチビ

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エスの旋律(6) ここにいるから

エスの旋律(6) ここにいるから

 窓から見えるのは、桜の若葉。
 花が散ってしまったからという理由で残念がられている、青い若葉。
 彼女はその、桜の若葉みたいな人だった。
 だけど自分は真実を知っている。
 その青さだっていつかは衰え、今以上に誰にも愛されない結末を迎えるからこそ、眩しいのだと。
 そんな風に感じていたかった。
 自分だけの特別なものにしたかった。
 最愛の彼女を。

 そんな風につづられていた天野椎菜の想いを、

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エスの旋律(5) エスの旋律

エスの旋律(5) エスの旋律

 私はきっと、ほのかに暗い道の中を歩いている人間なのだろうと思う出来事があった。
 父の友人、そして、私の友人でもある男性の、告別式に出た時だ。
 確かあの頃の自分はまだ垢抜けない、制服姿だっただったはずだ。
 参列者の多くが年上のお兄さんとかおじさんで、とても浮いていたかもしれない。

 その、亡くなった彼は年齢の割に顔が幼かった。
 しかも女っぽくて、私はそれを「お姉ちゃん」とからかって遊んで

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エスの旋律(4) 麗しき悪魔

エスの旋律(4) 麗しき悪魔

 ROSY ARIA(ロージー・アリア)というバンドは、狂っているのが普通だ。
 ドラァグクイーンでお金持ちで、愛人もいるおキヨさん。
 妻子持ちだけど何故かニューハーフである次郎さん。
「次郎って呼ばないでください黒曜ですから」
 あ、これは黒曜さんを本名で呼ぶ定番のギャグね。
 そして、ヤバそうに見えてまとも、と言われ、でもゲイだと時々勘違いされるぼくが寄せ集まった結果なのだ。
 何故か二丁目

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エスの旋律(3) 君はそれを徒花と呼ぶ

エスの旋律(3) 君はそれを徒花と呼ぶ

 カナタでなくなった凛花というのは、暇だ。
「おーい、サナちゃーん!」
 大学の授業が延期になり、夜のバイトもままならなくなったあたしは、やることがすっかりなくなってしまった。
「どう? 今の、天野セナに似てた?」
「似せなくていいです」
 東京の端っこで、ジャケット姿の彼女とまた遭遇した。
 浅草で出くわした時もそうだったが、これは本当に偶然である。
 久保田明里という共通の知り合いがいるだけで

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エスの旋律(2) こんな世界になるなんて

エスの旋律(2) こんな世界になるなんて

 天野セナは金がかかる。
 こまめに手入れの要る、派手な色をしたショートカットの髪。
 顔もそうだが、背中にブツブツがないかとか、お尻の肉付き具合にも気を使う職種。
 初めて出す写真集に向けて、キッズモデル時代と違う魅力とは何かを模索する日々。
 そんな彼女は再び、あたしの手の届かない世界の人になった気がする。
 セレブな女優と庶民的な芸人の夫婦が話題になって、でも結局はすれ違いが重なって離婚した

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エスの旋律(1) 約束を待ちわびて

「ふぅ……ふぅ」
 あたしの体の奥は、まだジンジンと熱っぽかった。
「サナちゃんにこんなとこ見られるの、恥ずかしい」
「え、でもセナは……セナは業界のおじさんと散々してるじゃない、何を今更」
「恥じらいくらい、あるよ」
 だって相手がサナちゃんだから。
 本当に愛おしい人が目の前にいるからこそ、あたしは恥ずかしさと戸惑いを隠せないのだ。
「でも分かんない。何でボク……こんなに……」
 深く息を吸っ

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