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この世は「自分ではどうにもできないこと」ばかり

先日、久しぶりに会った知人が「最近、落ち込んでいる」と話し出した。聞くと、知人が若くして亡くなったうえ、自身も体調がすぐれないのだという。「自分ではどうにもできないことがあるのだとショック」と悲痛な声で吐露してくれた。

ああ、私もそういう風に思うこと、特にここ数年はたくさんあったなあ…と思い出す。

親しい人の死。自分の病気。望みの仕事に就けない、恋人や家族とうまくいかない、天候不順に自然災害…コロナのパンデミックもそうですね。

世の中には「自分の思う通りにいかない」ことが、本当にたくさんある。
以前はそういうのに遭遇するたびに打ちのめされ、「どうして…」と絶望していた。そういう経験が増えてくると、徐々にあきらめることを知り、「これが年を取るということなのか」と半ば寂しく思っていた。


思い通りにいかないものの筆頭が天気。思いがけず素晴らしい面を見せてくれることも。Syracuseは本当に夕焼けが美しく、このようなサプライズがほぼ毎日見られる

Syracuseでは、よくカウンセリングのお世話になった。
キャンパス内のクリニックに併設されていて、学生や職員は無料でいつでも利用できる。対応する側も、利用者のレベルに応じて心理学を学ぶ大学院生からプロのカウンセラーまで様々だ。私も、不眠で悩みクラスメートや教授以外(ようするに、自分が所属するサークル外)の人に愚痴を聞いてほしいときや、行き詰った気分の時など、気軽に訪れた。

日本で「カウンセリング」というとまだまだ敷居が高く、メンタル不調は他人事…のようなとらえ方も多い。アメリカでもメンタル不調に対しての偏見はまだあるというが、だからこそ重症にならないうちにカウンセリングを活用してもらって健康を保とうという態勢が整っていた(特にSyracuseは冬が暗く長いために気分が落ち込む学生も多いらしく、メンタルヘルスの対応をとても重視していた)

私も、気分がとても落ち込んで悲しみが止まらないときがあった。
アメリカで新しい挑戦をしたいと思っていたのだが、うまくいかない。仲良くなった留学生の友人たちが、先に母国に帰ってしまい寂しくて仕方がない。そんなときに限って、親しい人と大喧嘩してしまったり、引っ越しを迫られたり、挙句の果てに体調を崩したり…。あらゆることがうまくいかず、世の中のすべてが私に対立してきているように感じた。

今までも何度も同じような経験をしてきて、そのような時もやがては過ぎ去るとはわかっていても、それでも渦中にいるときは苦しくてやりきれなくて、早く逃れたいともがいてしまう。

ぽろぽろと涙を流す私に向かって、カウンセラーが諭すようにいった。

「この世の中には、自分の力ではどうしようもできないことがある」

「でも今の状況は、あなた自身に問題があるわけではない。あなたのパーソナリティーや個人の資質に問題があるわけではない。環境に問題があるの」

「考えすぎずに、目の前にある今できること、に集中して」

1つ1つ話すカウンセラーの言葉は、静かに私の心に沁み込んできた。

そうか、私自身が原因じゃないんだ…じゃあ、じたばたしてもしようがないな。私は私が今、できることを粛々と、でも確実に、やっていけばいいんだ。

時には成り行きに身を任せ、なすがままというのもありなんだな。だって、今まで私は思い切り頑張ってきたから。

自宅そばにあるローズガーデン。可憐な見た目、甘い香りが癒しに

じたばたしたくなったり、カーっとなったりしたときには、その状況から一歩退いて自分自身を「reframe(リフレーム=別の視点で見つめる)」することも学んだ。

そうすると、「あれ、私いまめちゃ怒ってる?なんで怒ってるんだろう?」とか、「めっちゃ悲しい…けど、この悲しみってすでに何度もリフレインしてるよね」とか、少し自分自身を客観的にみられる余裕が出てくる。そうすると、少し落ち着き、別のことを考えたりしたりすることができるようになる。

世の中には本当に、自分ではどうにもならないことばかり。だからこそ、一番身近で大事な自分自身のご機嫌は自分で取って、いつでも良い状態にしてあげたい。「今目の前に見えている景色」以外にも、世界はたくさんある。今いるのは「八方ふさがりの洞穴」ではなく、「いつか必ず出口にたどり着くトンネル」だよ、と自分に教えてあげたい。

そして辛いときは、カウンセリングのお世話になるのもおすすめです。思いがけない視点のアドバイスや考え方を提示してくれて、新しい発見がありますよ。

世の中には本当に、自分ではどうにもならないことばかり。そんなときは、思い切ってしばらく運命に身をゆだねてみよう。必死で抗って消耗するより、来るべき時に備える期間だと思って、今できることをしよう。

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