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ショートショート

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2020年6月の記事一覧

避暑地の出会い【ショートショート】

避暑地の出会い【ショートショート】

私が小学生の頃、箱根には父の会社の保養所があった。
私達家族は毎年夏冬の二回、そこを利用していた。
保養所は強羅にあった。
夏の強羅は、湿った土の匂いがしていた。岐阜にいるときでも、夏に湿った土の匂いがすると、強羅のことを思い出していた。

保養所には草の生えただけの庭があり、生け垣で囲われていた。生け垣を抜けて下に降りていくと、なんと、沢があった。ほとんど庭を小川が流れているような状態だ。その感

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【ハゲ杯】酒の泉【ファンタジー ショートショート】

【ハゲ杯】酒の泉【ファンタジー ショートショート】

明日の父の日のことをすっかり忘れていた。
今日実家へ行く約束をしているのに。
さすがに手ぶらで行くのは気がひける。
何がいいだろうか。
この時期だとさくらんぼ?それとも肉がいいか?
けれどどのみち今から取り寄せたのでは間に合わない。
それに、さくらんぼにせよ肉にせよ、それなりに値が張る。
馬鹿の一つ覚えのようだが、今回も酒にすることにした。

「ごめんください」
「はいはい」
奥から老店主が出てく

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逢魔通りの怪談【ファンタジー ショートショート】

逢魔通りでは、毎日不思議なことが起こる。
月曜日は狸が大道芸をし、火曜日は火星人の乗った宇宙船が不時着し、水曜日にはユニコーンが庭の草を食み、木曜日は鶴が恩返しに来た。
そして金曜日には……?何が起こるかな。

「ひゃー、遅くなっちゃったなー、お母さんに叱られるかな」
学校から帰ると、僕はランドセルを放り出して拓人の家へ遊びに行っていた。
走りながら公園の時計をチラッと見た。うわ、もう7時近い。道

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ビー玉の宇宙【ファンタジー ショートショート】

ビー玉の宇宙【ファンタジー ショートショート】

月子は病弱だった。
よく風邪をひいては、奥の六畳間の布団に寝かされていた。
兄弟たちが表や庭で遊ぶ声が聞こえて寂しく感じながら、ポツンとひとり、大人しく横になっていた。
風邪をひいた時は、食欲のない月子のために、母は桃の缶詰を買ってきて食べさせてくれた。それだけが病気の時の楽しみだった。
病気の時は、大好きな本も取り上げられた。だからぼんやりと天井のシミを眺めていた。それは時に西洋人の男性の顔に見

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生霊ラブソング♥【恋愛 ショートショート】

生霊ラブソング♥【恋愛 ショートショート】

ああ、やっちゃってるなあ。自分で分かる。
多分生霊飛ばしてる。

実は最近好きな人ができたのだ。
ずっと一緒に育ってきた幼なじみ。めっちゃ今更である。
同じ幼稚園で出会い、小中学校は学区が同じだから当然同じ、高校は…彼のほうが追いかけてきてくれた。
けれど。一年の文化祭のときに、なんと彼は同じクラスの女子と付き合い始めてしまったのだ。もっとも、その頃は、私にも他に付き合っている人がいたのだが…。

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魔法のパスタウイング【ファンタジー ショートショート】

魔法のパスタウイング【ファンタジー ショートショート】

ある休みの日の昼時、私はやけに乙女チックな店にいた。
店はピンクのギンガムチェックと白と木目が基調になっていた。
カントリーテイストというやつか。
木製の飾り棚には、ミルクティー色のテディベアや、白いホーローのキャニスターなどが飾られている。
テーブルクロスはやっぱりピンクのギンガムチェック。
そこに還暦近い男が一人で座っているのだった。

ことの始まりは今朝の娘との会話だった。
朝食のトーストと

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ワープゾーン【SF ショートショート】

うちの弟が通う高校までは、家から車で30分ほどの距離がある。
しかし弟は、ある山を超えるルートだと、自転車で20分で着けるらしいのだ。

幼い頃弟は、その山ー鷺山
ーでよく遊んでいた。
私は茶化して、遊んでいたときにワープゾーンでも見つけたんじゃないかと言っていた。

大学の夏休みは長い。
弟の学校の新学期が始まってからも、私はブラブラしていた。
いつもはだらだらと10時くらいまで寝ているのだが、

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