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生霊ラブソング♥【恋愛 ショートショート】

ああ、やっちゃってるなあ。自分で分かる。
多分生霊飛ばしてる。

実は最近好きな人ができたのだ。
ずっと一緒に育ってきた幼なじみ。めっちゃ今更である。
同じ幼稚園で出会い、小中学校は学区が同じだから当然同じ、高校は…彼のほうが追いかけてきてくれた。
けれど。一年の文化祭のときに、なんと彼は同じクラスの女子と付き合い始めてしまったのだ。もっとも、その頃は、私にも他に付き合っている人がいたのだが…。
思えば彼は、幼稚園の頃からずっと、私を追い続けてきてくれたのだった。それに安心して、私は、色んな人に恋をし、付き合ってきた。
好きな人が出来ると相談し、失恋すると泣きついた。彼は私のことを好きだと公言して憚らなかったが、それでも私の恋の話に付き合ってくれた。
そんな彼に彼女ができた時、心にすき間ができたのに気づいた。
だけど私はそれを見ないふりをした。淋しかったら別の誰かと付き合って、埋めてきた。
けれど、気づいてしまった。私は洋平のことが好きだって。

実は私は特異体質である。なんと生霊を飛ばせるのだ。
飛ばせるというか、飛ばしてしまう。
誰かを好きになると、こんな苦情が入ることが多かった。
『お前、怖いんだよ』
夜な夜なその人の元に私の生霊が現れているのだという。
私自身はそんなつもりもないし、寝ているときのことなので、記憶にもない。
それを理由に離れていく彼氏も多かった。
続くのは、それでも好きだと言ってくれる人か、生霊を飛ばすほど好きでない相手とだけだった。
私は、どんなことでも洋平に話してきた。けれど生霊のことは話していなかった。

「おはよ」
昇降口で洋平と会った。以前は迎えに来てくれて、一緒に登校していたが、洋平に彼女ができた高1の秋からは、別々になっていた。
「おう」
洋平に、探りを入れてみる。
「最近、何かおかしなことない?」
「別に。俺急ぐから」
…なに?なんなの。
これは避けられているのかもしれない。
私は心のどこかで、洋平なら生霊のことも引っくるめて私なんだと思ってくれるように感じていた。

その日の帰り道、洋平を見かけた。彼女と一緒だ。
と、突然彼女が洋平に何か怒鳴った。
バシッ!
平手打ちが、こんなに激しく音の響くものだとは思っても見なかった。
彼女は走って行ってしまった。洋平は頬を押さえて、ぼんやりその場に立っていた。
彼は私に気づいていなかった。私は見なかったふりをして踵を返そうかと思った。
けれど、勇気を出した。これまで私のこと、慰めてくれてたんだもの。今度は私が友達として洋平の相談に乗らなきゃ。
「どうしたの?」
ゆっくり、さりげなく近づいた。
「…見てたのかよ」
洋平は、目を合わせずに答えた。
「何かあったの?その…友達として相談乗るから」
私は微笑んで言った。洋平が喜ぶと思って。
けれど洋平は吐き捨てるように言った。
「友達かよ」
え…なんで…。私はただ慰めたかっただけなのに。
すると洋平は声を荒げてもう一度言った。
「友達かよ!」
私は洋平の気持ちが分からず黙っていた。
「なんで友達なんだよ!あんなことしといて…なんで今更!」
洋平は顔を赤くして今にも泣き出しそうだ。
「あ、あんなことって…?」
私は恐る恐る聞いた。
洋平は、私のことをキッと見据えて言った。
「俺はお前の事、ずっと好きだった」
息が止まるかと思った。やっとのことで声を絞り出す。
「なんて…」
洋平が、きまり悪そうに言う。
「彼女に告られて、ずっと好きになれるように頑張ってきた。けど、やっぱりお前の事忘れられなくて…」
そこで洋平は、ふうっと息を吐いた。
「お前、俺のこと好きなんだろ?」
「な、なんでそれ…」
「毎晩出てくんだよ、お前の生霊。…俺、彼女に言っちゃったんだよ、やっぱり忘れられない人がいるって」
「洋平…」
私は洋平の胸に飛び込んでいた。
「これからは生霊でなく、お前が会いに来いよ」
「うん、分かった」

その日から、生霊は出なくなったと洋平は言った。
私の心は満たされた。
私に必要なのは洋平だったんだ。
もう、生霊は二度と出ないだろうと思った。


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最近、心の恋人がいて、生霊飛ばしてないかなあと心配になって、思いつきました(笑)


あと、最近ハマってる化物語シリーズの影響もあります(^^)


昨日、ナンバーが333の車を見かけました。エンジェルナンバーで、アセンデッドマスターの数なので、お導きかなあと思いました!
最近暑さにやられてるけど、頑張らねば!と思いました☺

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