見出し画像

シミセンの受験談義

 中学受験、高校受験対象の進学塾で理数系の教科を担当しております。校舎で毎月発行している通信に連載している記事です。受験生・受験生保護者の皆さんの参考になりましたら幸いです。


4月 受験って何であるの?


 今年は1年かけて受験についてのあれこれをお話していこうと思います。中学受験や高校受験の仕組みとか、最近の様子とかが話の中心になっていくと思います。ですが、今回は1回目なので、受験全般についてお話しておきましょう。
 まずは、どんな受験があるかですね。皆さんはすぐに中学受験や高校受験が思い浮かぶと思いますが、他にも会社に入るための入社試験とか、公務員試験、お医者さんになるための医師国家試験、法律を専門とする仕事(裁判官、検察官、弁護士)につくための司法試験、先生になるための教員採用試験。その他、士や師のつく仕事を書き出してみると、建築士、公認会計士、司法書士、行政書士、弁理士、公認心理士、社会福祉士、気象予報士、保育士、美容師、理容師、調理師、栄養士、理学療法士、作業療法士、薬剤師、看護師、獣医師、歯科医師、歯科衛生士、介護士、測量士、・・・、いやあ、ちょっと調べてみると国家資格ってあるわあるわ、まだまだ出てきます。いま、聞いたことあるなあというものだけ書き出してみたのですが、この10倍以上ありそうです。こういう仕事も国家資格が必要なんだと思われるものもいっぱいあります。クリーニング師とかピアノ調律技能士とか、パン製造技能士とか。まあ、専門の仕事に就くということは、それなりに勉強して、きちんと責任を持って取り組んでいかないといけないということですね。逆に言うと資格がないとそういう仕事には就けないわけで、努力して勉強して資格を取れば、安定した仕事につけるということですね。そう言えば、義兄が若いころ一生懸命勉強して水道技術管理者か何かの資格を取っていました。それで、今70歳を過ぎても、週1回会社に行くだけだけれど、ちゃんとお給料がもらえるのだと言っていました。他に資格を持った人がいないのですね。希少価値があればあるほど、市場価値は高くなるわけですね。僕はこういう資格試験を受けたことがなくて(教員免許は取ったのですが、これは大学でちょっと余分に勉強して単位を取っていれば卒業と同時に免許がもらえます。教員として働くためには別に採用試験に合格する必要があります。ただし、常勤・非常勤という立場ならば採用試験に受かっていなくても授業を担当することはできます。)どうして皆、大人になってからも一生懸命勉強して資格のための試験を受けるのかなあと思っていました。でも、資格があるということは、自分の独自能力になるわけで、資格がない人とは置き換え不可能なのですね。そうすると将来的にも安心ということなのでしょうね。ちなみに、資格試験を受けるにあたって、認定を受けている学校等で勉強し、受験資格を得る必要があるものと、単に自分で勉強して受ければいいものとがあるようです。気象予報士とかは中学生が受けて受かったなんて話題になったこともありましたね。それと、調べてみて気になったのは士と師の違いです。士は専門的な技術を身につけた人、師は多くの人の前に立って教えたり導いたりする人、だそうです。うん?クリーニング師? ちょっと当てはまらないものもありそうな気がしますが、良かったら調べてみてね(探究)。
 受験は受検と書く場合もあるのですが、入学試験か適性検査かの違いですね。公立の中高一貫校では適性検査ということばが使われていますね。単なる知識を問う問題ではないという意味のようです。思考力や表現力を見るための検査ということですね。まあ、こちらからすると大きな違いはなくて、私立でも難関校になればなるほど単なる知識では太刀打ちできないですし、相当思考力・表現力が必要になります。だから、公立中高一貫校を受検するには難関校と同じような対策が必要になるわけです。
 さてさて、後半は入学試験にしぼってお話しましょう。幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、大学院と進学するための選抜試験ですよね。どこの学校でも定員(入学できる人数)が決まっているので、入学を希望する人の数がその定員を上回っていれば、何らかの試験が課せられることになります。まあ、早い者勝ちとか、抽選とかいろいろできるわけですが、まずは公平性が保たれていなければいけませんね。納得しやすい形のものでないと、不合格になったときに文句を言う人が出てくるかもしれませんね。それから、透明性も必要ですね。これはなかなかそうなっていない場合もあるようです。男女で差がつけられていたとか、大学入試だと現役(高3)か浪人(既卒)かによって差がつけられていたとか。親が卒業生だとか兄姉が通っている(た)とかの場合には優遇されることもあるようですが、まあ、これは私学で募集要項にちゃんと明記されているのであれば許されるのでしょうね。それから、推薦入試などはどうなのでしょうね。クラブ活動などで優秀な成績(全国大会に出場とか)を収めていたりすると、かなり優先的に合格が約束されます。まあこれは、自分の実力なので、誰にとっても納得はできますね。私立高校などでは別のクラスで勉強したりするので、学力的にはちょっと厳しいという場合も問題ありません。他の生徒たちといっしょのクラスとなると、学習面ではきつくなるかもしれませんね。気をつけておきたいところです。
 大学入試改革がずいぶん騒がれましたが、なかなかこの入学試験の仕組みを変えるというのは難しいものです。入学試験が変わると、勉強の仕方を変えていかないといけません。だから、入学試験を課す学校側としては、こういう能力がある生徒たちに入学してきてほしいという思いを込めて問題をつくられるわけですよね。そして採点についても、良い学校ほど、部分点なども含めて、本当に力のある生徒を取ろうと一生懸命なわけです。毎年どんな問題を作ってこられるのかが楽しみな学校もありますね。入試問題をつくられる先生方のご苦労は本当に大変なものだと思います。灘中高の先生の話などを聞くと、常にどんな問題をつくるかを考えているそうですよ。だから、批判をするわけではないのですが、1年に何回も試験をされる学校とか、即日発表される学校とか、どういうふうにされているのか不思議なくらいです。まあ、どうしても記述問題は少なくなりますよね。採点が大変ですからね。採点ミスは必ず起こるので、ダブルチェックは絶対必要です。するとやっぱり時間はかかるわけです。採点ミスで不合格にされたらたまりませんものね(まあ、逆もあり得ますが)。
 僕は入試問題というのはそれぞれの学校からのメッセージだと思っています。こういうことができる子、こういうことを考えている子、こういうところが優れている子に来てほしいというメッセージなのだと思うのです。入試の制度自体もです。学校ごとにいろいろあっていいのだと思います。一発勝負とか、内申を重視するとか、推薦を多くするとか、色々混ぜてもいいのだと思います。その学校に入りたいと思う受験生と、こんな子どもたちに入ってきてほしいと思う学校側とをうまくマッチングするために受験(受検)というものがあるのでしょうね。皆さんにはまずあこがれの学校を見つけて、そしてその上で、しっかり努力をして、あこがれの学校から選んでもらえるようになってほしいと思います。
 来月は中学受験と高校受験の違い、メリット、デメリットなどについてお話します。

 

5月 中学受験と高校受験はどう違うの?


 今月は中学受験と高校受験の違いについてお話します。よく高校受験と中学受験はどちらが良いですかと聞かれます。でもこれはそれぞれの価値観の問題であって、どちらかが良いということはできません。そこで、とりあえずは事実を並べていくので、そこからそれぞれでじっくり考えて選んでみてくださいね。(もちろん、すでに中学生の皆さんは中学受験を選ぶという選択肢はないのですが、弟妹とか、将来の自分の子どもとか、いろいろと思い浮かべてみてください。)
 まず、中学受験の入試の仕組みですが、現在では1月中旬の統一日から4日ほどの間に午前・午後と受験機会があり、多ければ7,8校を受験する生徒もいます。基本的に入試は一発勝負なので、その日の体調とか精神状態とかいろいろなものに左右されます。ですので、できればたくさん受けてみて、合格できた学校の中から自分が実際に通う学校を決めることができればいいと思います。もちろん、地元の公立中学校は無試験で進学できるわけですので、合格してもその学校に進学しないという選択肢もあります。最終的には将来のことをしっかり考え、自分の性格のこととかもよく吟味して決めていければ良いですね。ところで、先ほど、基本的に一発勝負と書きましたが、まず公立の中高一貫校は学校の成績(いわゆる内申)が必要です。洛北は小4~6、西京は小5,6の学校の成績を提出することになります。どれくらいのウエイトで合否に影響するのかはよく分かりません。しかし、適性検査でボーダーライン上にいる生徒にとっては非常に重要になってくるものと思われます。10点分くらいの差はひっくり返ることがあるようです。面接の影響もきっとありますが。また、私立でも、自己推薦入試の制度がある学校では学校の成績を重視される場合もあります。ということで、小学校での成績も気には留めておいてもらった方がいいかと思います。
 受験(受検)をして中学に進学することにどんな意味があるのでしょう。まずは、おそらくですが、より良い環境で学習に取り組めることでしょう。6年一貫の難関進学校では、中高6年間の内容を5年に圧縮して、高校3年では大学入試の対策にしっかり取り組んでいかれます。それでこそ、過年度生(浪人生)に太刀打ちできるということです。また、高校受験で中断されることがないので、中1の段階から将来を見据えた深い内容に取り組まれたりもします。これは公立中高一貫校も似たようなものだと思われます。それに対して、大学附属の私立中学校はどうでしょう。こちらは10年一貫です。中学受験を終えるとそのあとはもう受験がないのです。ずいぶん楽なような気がしますね。実際に、30年近く前の生徒の話ですが、「中学受験をしたときが私のピークで、それ以降は下がる一方でした」と言っていた方もいました。もちろん、その子はその子で、自分の好きなこと(マンガを描いたり、同人誌を作ったり)を見つけて、それに熱中していたようです。また、こんな話を聞いたこともあります。附属高校のある大学では、附属から入ってきた学生は受験をして入ってきた学生に比べて最初は学力的に劣っているが、余力があるために後からぐんぐん伸びてくる。一方、受験を終えた学生は気が抜けてガタガタと崩れていく。まあ、こういう話は人によりけりということでしょうね。
 次は高校受験について。まず、京都の公立高校ですが、2月中旬に前期選抜、3月初旬に中期選抜となっています。専門学科(堀川探究科や西京エンタープライジング科、嵯峨野こすもす科などをさしています。昔で言う工業科や農業科・商業科なども専門学科にあたりますが、その辺はここでは含んでいません。)は前期選抜でほぼ100%が決まります。それに対して前期の普通科は定員の30%くらい。そのために毎年かなりの高倍率になります。前期普通科は狭き門ということです。しかし、普通科の残りは中期で決まるので、中期まで頑張れば受かることが多くなります。しかも京都の普通科中期選抜ではまわし合格という制度もあり、不合格になりにくい仕組みになっています。さらに、入試問題も全国的に見て最も基本的な問題であると言って良いでしょう。ただしこれは普通科の話であって、専門学科になると学校独自の問題でかなりの難易度になります。だからこそ、早期から発展的問題に取り組むためにも塾が必要になってきます。
 高校からトップの進学校に進んだ場合、3年分の内容を2年と少しの間に終え、残りの期間で大学受験への対策をしていくことになります。内容的にも中1内容を半年くらいに圧縮するのと大きく異なり、高校内容はかなり難しくなるので、それを短期間でこなすのは大変なことであると知っておくべきです。ですので、最近の高校生は本当によく勉強します(させられています)。しかし自主的に勉強するグループができて相互に教え合う姿などがトップ校では見られるようです。もちろん、これも高校によって違うわけで、ほぼ全員が大学受験をする高校と、半分くらいしか受験しませんという高校では、全然学校の様子が違ってくるだろうということは容易に想像できると思います。そういう意味では、大学への進学実績なども学校選びの重要な選択基準になってくるのだと思います。
 それから内申についてですが、普通科では内申と本番のテストがほぼ1対1となります。ウエイトが大きいということです。特に中期選抜では実技4教科が2倍に加点されますから気をつけないといけません。もちろん3年間の合計になります。専門学科の場合は内申と本番のテストでおよそ1対4となり、本番重視と言えます。ただし、持ち点は多ければ多いほど良いというのは間違いありません。
 高校から大学附属の学校に進学することもできます。その場合、推薦入試制度があることが多くなります。一般で受験するよりもずいぶん入りやすくなるのですが、学校の成績として、9教科合計40以上は必要になります。ほとんどの学校で3年間ともにということですので、中1の段階から意識する必要があります。
 ということで、高校受験には内申が必要、それも中1からずっとということです。思春期のもっとも難しい時期に、学校の先生に対して「常に素直でいる」ということを意識し続けないといけません。そして、提出物などについても常にきちんとできるというのが大前提になります。このあたりについて、今、中学受験と高校受験で迷っている人はじっくり考えてみてください。中学生の皆さんは自分の今の学校生活を見直してみてくださいね。
 さて、もう1つ意識してほしいのは、高校受験はほぼ全員がするものだということ、それに対して中学受験は、だいたいクラスの1割くらいの生徒がするものであるということです。そこがやっぱり大きく異なります。だから、中学受験についてはどうしても何らかの形で塾の存在が必要になると思います。がんばり続けるための意識づけがどうしても必要なのです。中学受験・高校受験それぞれの特徴を見極め、各自のタイプや性格もよく考えて判断していってください。もちろん、私立か公立かは経済的な部分も大きく左右します。
 来月は特に高校受験で必要になる内申の上げ方についてお話します。「うなずく」だけでも変わりますよ。

 

6月 内申ってどうやって上げるの?


 そもそも内申っていったい何なのでしょう。募集要項を見てもどこにもそんな言葉はありません。もともとは内部申告書の略だったようですが、要するに下の学校から上の学校を受験するときに児童・生徒の学習状況・生活状況を伝えるもので、基本的に内容の開示はされないものだったようです。いまは、普通、報告書という名前で呼ばれており、請求すれば開示することができます。入試の点数も開示できるのが世の中の流れです。
 さて先月も少し触れましたが、中学受験でも公立中高一貫校をはじめ一部では報告書が必要になります。高校入試では基本的にすべてで報告書が必要と考えてよいでしょう。ただし最近では、不登校であったり、何か事情を抱えたりしている生徒が高校進学を希望する場合に、報告書なしで入学できる高校もできてきてはいます。
 ここからは、高校受験を主に念頭に置いて書いていきます。報告書に記載されるものとしては、通知表の成績でいつも目にしている評定3年分(通知票を出さない学校もでき始めていますが)、3年次の各教科観点別学習状況、それから出欠状況、部活動・生徒会活動・ボランティア活動などなどの状況、表彰を受けた行為や活動、取得資格など、それから総合学習の時間の状況なども書く欄があります。5段階の評定については、絶対評価となっているため、基本的には何人に5をつけても良いことになっています。しかし、もちろんそういうわけにもいかないので何らかの基準を決めて5,4,3・・・と割り振っていくことになります。ある程度は何%が5とか何%が4とかいうのは決められているようです。それが、また学校によって違ったりするのが問題なのですね。その昔、相対評価で成績をつけていた時代は、通っている中学校によって差が出てしまうということで問題になっていました。○○中学校でオール4の生徒が、隣の××中学校ではオール3になる、というようなことが実際にありえたのです。そしてそれは今でもまったくなくなったとは言えないようです。高校受験に対してはなんとも不公平感がありますね。でもだからと言って、成績がとりやすい中学校に転校(引っ越し)するというわけにもいかないですよね。実を言うと、良い成績を取りにくい学校というのは、裏を返すととてもレベルが高い学校ということで、より良い教育が受けられる可能性もあるわけです。こういうことって、トレードオフの関係と言って、どっちを優先的に考えるかなんですよね。とっても悩ましい問題です。(これって実は高校選びでも同じようなことが言えますよ。推薦で大学に行くには高い評定が必要ですからね。)
 とは言え、どこの中学でもオール5を取る生徒はいるものです。5教科オール5だけれど、体育だけはどうしても3なんです、という生徒もときどきいますが、そうではなくて実技の教科も含めてすべて5が取れるという生徒がいます。テストの点数を聞き取ると、80点台なのに5だったりします。90点台で4の生徒もいるのに。いったいどいうことでしょうか。おそらく、成績をつける先生からすると、「この子はよくできる子」というイメージが出来上がっているのですね。客観的なデータに基づいて評価をされているはずですが、微妙なラインにいれば、ふだんの様子でこの子は5,こちらは4ということにもなりますよね。実を言うと、僕自身、中学校ではオール4あるかないかくらいでしたが、小学校の3,4年の間は、ずっと「オールできる」でした。(できる、ふつう、がんばろうの3段階でした。)転校して初めての家庭訪問では「いい子が来てくれた」と担任の先生に言われ、母親も喜んでいたようです。第一印象がよほど良かったんですね。そのオール5を取る生徒の特長なのですが、まずはとっても礼儀正しい。素直に何でも話を聞いてくれる。いつも元気で明るく誰からも好かれている。別にそれは無理しているわけでもなく、素でそういう性格なんですね。実はある1人の女子生徒をイメージして言っているのですが、その子は最終的に、西京エンタープライジング科はダメだったのですが、堀川の普通科に進学しました。なにか突き抜けたところがあるわけではないのですが、まんべんなく、何でもそつなくこなせるタイプです。大学も看護の方に進んだようですが、将来も世のため人のために活躍するのだろうなと思います。
 さて、ということで、どうすれば内申を上げることができるか、という話ですね。なんだかんだ言っても、京都の公立高校の受験にあたっては、いわゆる内申、つまりは通知表の評定ですが、これがそのまま本番のテストに加算されるわけで、ここを少しでも上げておきたいわけです。私立の推薦入試においてももちろん重要です。まずは当然ながら定期テストの点数は高ければ高いほどいいのです。そのためにも、普段からしっかり復習をする。早くから準備をする。定期テスト1週間前に範囲表が配られる頃には、すでに提出物が仕上がっている。そして、2回目、3回目に取り組んでいる。さらに、提出物は期限通りに毎回きちんと提出できている。こういうことが大事なのは間違いないです。その上で、先生の印象をよくするために、ぜひとも取り組んでおいてほしいことを3つ挙げておきます。提出物についてですが、普通にやって期日に間に合うように提出するだけなら特に目立ちませんね。皆さんには、2回、3回と繰り返し解いてほしいのですが、その様子をうまく先生にも伝えましょう。たとえば違う色のペンで直しをしておくとか、間違ったところには大きめの付せんをはって、そこに直しをしておくとか、やり直したノートを貼っておくとか。ノート提出があるなら、授業中先生が話したこともメモしておくとか。次に授業中の姿勢ですが、前のめりで、先生の目を見て、うなずきながら授業を聞くというのがいいです。実はそういう姿勢でいると、授業の内容がよく分かるようになるし、内容がおもしろいということにも気付けたりもするわけです。先生側から見ていても、最近、この生徒はしっかり授業を聞いているなあという印象を持つのは間違いないです。最後に、これは本当に内申を上げたいと思ったときの秘策ですが、毎日職員室に質問に行くということです。本当に、授業中疑問に思ったことを、授業後すぐに聞きに行くというのは大事なことです。ですが、それだけだと、その担当の先生にしか見てもらえませんよね。職員室にまで通っていると、他の先生たちにも目につきますよ。最近頑張っているなあ、と思ってもらえること間違いなしです。ただし、内申上げて上げてオーラは出し過ぎないように気をつけましょう。素直な気持ちで質問や相談に行くというのが大切だと思います。これは、10年以上前の生徒の話ですが、同志社国際高校にどうしても行きたくて、推薦を取りたいと考えていました。なぜか、中3 2学期の成績だけ合計42以上あればいいのです。それで頑張りました。1学期は合計39だったのですが、見事2学期は43になりました。「今日も職員室行ったよ」と報告してくれていました。後に大学生になった彼女と再会したとき、「あのとき頑張って良かった」と言っていましたよ。
 まあ、なんだか先生にこびるようで嫌だなと思う人もいるかもしれませんが、現状こういう入試制度なので、いつでも素直でいられたら、成績も上がって、少しは楽に楽しく生きていけるようになると思います。これって、将来に向けても今に対しても、どっちにとっても良いことですよね。
 来月は志望校選びについてお話します。それですべてが決まるわけではないですが、まあ難しい選択です。

 

7月 志望校はどうやって決めればいいの?


 志望校はどうやって決めればいいでしょうか。割りと早い時期の模擬テストで志望校欄に載せるための学校を選ぶのならば、それほど気にせずに、自分の今のレベルとかも気にせず、ここ良さそうだなと思うところをいくつか挙げておけば良いでしょう。でも、受験学年の2学期に入ってくればそうも言っていられません。実際に受験しようと思う学校を選ばないといけません。日程やレベルも考えて、第一志望の学校、いわゆる「すべり止め」として絶対合格できそうな学校、事前に練習で受ける学校、チャレンジ校などなど。これは中学受験でも高校受験でもそれほど大差はないと思います。順番に考えていきましょう。
 まずは第一志望の学校選びです。それで将来がすべて決まってしまうというわけではないのですが、それでも大学附属の中高だったりするとその後10年間を過ごす学校が決まったりするわけです。高校の3年間だけだとしても、その後の進路にまあまあ影響してきます。ちょっと考えてみてください。高校生になったとき周りが大学に進学しようとする生徒ばかりの学校とそうでない学校。どうしたって人間楽な方に流されますから、ちょっとしんどくなってくると「まあいいか」となってしまいがちです。周りが頑張るから自分も頑張れるというのはありますよね。もっとも、受験勉強から逃れたときは楽でも、高卒で働く方がよっぽどしんどいと思いますが。
 僕自身の体験を少し話しておくと、まず中学受験はしましたが失敗して地元の公立中学校に通いました。高校受験では、新しく開校した学校がおもしろそうだったので受験してみました。そうしたらうまく合格することができてその学校に通うことになりました。大学附属の私立高校です。でも僕はもともとその大学に進学したくて選んだ高校ではなかったのです。僕が学びたかったのは理論物理学だったし、工学部ではなく理学部でないといけなかったのです。それで、9割以上が内部進学する中、大学受験(当時はセンター試験でもなく共通一次試験でした)をすることにしました。周りで大学受験をすると言っていた友人も、高3春ころの模試の結果を見て内部進学に変えていきました。そんな中、僕は割りと我が道を行くという感じで動じずに予備校の夏期講習にも通って受験勉強を続けました。でもけっこう友人からの遊びの誘いに負けてしまうこともありました。結局、思っていたのとはずいぶんとレベルを落として受験することになりました。でも、まあ4年間楽しい学生生活を送れたので結果的にはそれでよかったのですが。よく考えると僕の学校選びは、まあまあ適当でした。学校見学や説明会などに参加した記憶が全くありません。まあ、そういう時代だったのかもしれませんが。
 いまはもうまずはホームページを見ればいろいろと情報は入手できるし、オープンキャンパスや説明会が何度も実施されたりしています。気になる学校にはどんどん足を運んで実際に自分の目で見てみるべきですね。夏から秋にかけてたくさんのイベントがありますから、受験学年以外の人も参加するといいですね。決してある1人の人の意見を聞いて決めるのではなくて、いろんな人の声に耳を傾けるのが良いと思います。どうしても、その人その人で合う合わないがありますからね。決め手になるものをいくつか挙げていくと、通いやすさ、校舎がきれいかどうか、設備面が充実しているか、図書館はどうか、制服がどうか、どんな部活動があるか、先生たちの様子は、在校生たちの様子は、大学への進学状況はどうか(内部進学かどうか)、私立の場合だと授業料など年間にかかる費用はどうなのか。これらの中から、それぞれの考え、家庭の事情などによって優先順位をつけて何を重視するか決めていかないといけないですね。ある程度絞り込めたら、もう最終的にはフィーリングなのです。その学校に入学した自分をイメージすることができるかどうか。ここで楽しく過ごせそうかなあ、充実した生活が送れそうかなあ、そんな感じで選ぶしかないと思います。そして、それが決まれば後はそこに入るために何をしていけばよいか考えて準備に入っていきます。同時に併願校を考えることになります。併願校選びについては来月くわしくお話することとして、後半は、第一志望校が決まった後の話をしておきましょう。
 おそらくそれは9月か10月ころのことでしょう。第一志望にする学校が確定します。もちろん、人それぞれでもっと早い時期に決まっている人もいれば、12月になってもまだ迷っているという人もいます。出願前であれば変更はできるにはできます。もっと言うと、これは中学受験ですが、同じ日の入試で2校出願した生徒もいました。受験票を2枚手元に置いて、入試前日僕の「で、明日どっちに行くの?」という質問に、「まだ決めてない、朝の気分で決める」と答えていました。当時は学校まで入試の激励に行っていましたから、はっきりしてくれないととっても困るのです。まあ、結果、受けた学校に合格して楽しく10年間を過ごしたようなのでそれはそれで良かったのですが。これはまれなケースとして、普通秋に第一志望校が決まればその学校の赤本(過去の入試問題集)を入手し取り組み始めることになります。実は、この赤本に取り組み始めるタイミングが遅れてしまうと良くないので、早めに第一志望を決めたいのです。とりあえず、現段階で決めたところで、ということでスタートはできますが、やはり自分が絶対に行きたいと思った学校でないと本腰を入れることができませんからね。まあ、高校受験の場合は、とりあえず公立普通科中期選抜の問題からやり始めるという手がありますが。自分が目指す学校に対して、その段階で自分の実力がちゃんと到達しているのか(つまりA判定とかB判定が出ているのか)どうかはもちろん大切ですが、でもとにかく、自分が行きたいと決めたならば、その学校の入試問題がどういうものかを知る必要があります。なるべく早い段階で(中学受験なら9月、高校受験なら10月)過去5年分の問題にじっくり取り組むべきです。できないのならばできるようにすればよい。解説を読んで考える。分からなければ先生に聞く。もう一度解き直す。その繰り返しです。何度も何度も合格点がとれるまで解き直してほしいですね。決してあきらめることなく、後悔のないように、しっかり取り組んでほしいです。
 さて、中学高校を選ぶ際、将来の大学進学について考えることが多いでしょう。最後にここで大学受験についてふれておきます。僕は、必ずしも大学に進学し、いわゆる有名企業に就職すれば幸せになれるというふうには思っていません。変化の激しい世の中になっていますから、皆さんにはどんな状況に置かれても生き抜く力を身につけてほしいと思います。そういう意味では大学などで専門的な知識を身につけたり、資格を取ったりしている方がいいのでしょう。ただ、そういうことをちょっとわきに置いて、大学生という時期そのものを楽しんでほしいと思っています。学びたければいくらでも学べる。やっと「やらされ勉強」から解放されて、自分のやりたい勉強ができる。働いてみたければアルバイトで経験ができる。1人暮らしができる。恋愛もできる。半分子ども半分大人、こんな時期は他にはないのです。本当に貴重な時間なのです。だから、就職活動にばかり精を出し過ぎずに、いろいろ経験して、学生時代を大いに楽しんでほしい。そういう意味で大学には進学して下さいね。
 それでは、来月はいかにして併願校を選べば良いのかをお話しましょう。少なくとも3校は受けてみよう。 

8月 併願受験ってどうすればいいの?


 先月は第一志望の決め方についてお話しました。今月は引き続き併願校の選び方についてお話していきます。中学受験と高校受験では若干違いはありますが、大きくは変わらないので一緒にお話していきますね。
 まずはいわゆる「すべり止め」としての受験ですね。高校受験では公立高校を第一志望にする人は先に、どこかの私立高校に受かっておく必要があります。行くところがなくなってしまうと困るので、行ってもいいかなと思える私立高校を1つ選んでおく必要があります。しかも、コースがどうなるかは別としてまあ合格は間違いないだろうと思える学校を選びます。京都の私立高校を第一志望にする人は、別の日程で少しレベルを落とした学校を受験しておくべきでしょう。万が一、私立高校で失敗してしまった場合、1.5次入試というものがあるので、それを受けて1つは合格を確保しておきたいものです。そうしておかないと、公立の中期選抜ではかなりランクを落として受験することになってしまいます。もしくは、後期選抜ということで、全く望んでいない学校に通うことにもなりかねません。(僕の今までの経験では一度も後期選抜を受けた生徒はいませんが。)中学受験の場合は、第一志望校1校しか受けていなくて、もしダメだったときは、地元の公立中学校に通えばよいので無理して「すべり止め」を受けるという必要はありません。でも長ければ3年間受験勉強を続けてきたわけですから、その頑張りが報われるように合格の体験もしてほしいと思います。実際に通うかどうかは別問題です。受かっても行かないのに受ける必要はないと思われる方もいるでしょうが、周りがどんどん合格していく中、1人だけ合格が得られないのは本当につらいものです。合格できる学校は必ずあるので、受験しておくことをおすすめします。
 次は、練習のために事前に受けておく学校です。中学受験は1月中旬が関西の統一日になっており、ほとんどの人がその日に第一志望を受験することになります。そのため、事前の練習は、関西圏以外の学校の県外入試を受験することになります。1月の上旬に大阪会場で試験が行われます。模擬テストと同じかというとそんなことはなくて、やはり入試本番ですので緊張感が全然違います。入試当日何があるかは分かりません。特に小学生の場合は気持ちで負けてしまうこともあります。朝、余裕を持って出発したのに、途中トイレに時間がかかってしまい、着くのがギリギリになったとか、電車が遅れたとか、ひどいときはJRが止まったとか、いろんなことが起こり得ます。受験というのはそういうものだと思っておいた方がいいのです。上靴を忘れたってどうってことはないのですが、受験前にハラハラドキドキなんていうのは避けたいですよね。朝から親子喧嘩とか嫌ですよね。だから事前の練習が大切なのです。高校受験では、京都の私立が第一志望の場合は奈良や滋賀の私立が先にあるので受験をおすすめします。公立高校が第一志望の人は、いわゆる「すべり止め」が練習にもなるのでそれで兼ねることもできます。
 これで3校は受験校を決めることができたのですが、できればもう1つ、チャレンジ校も受けてみてほしいなと思います。第一志望よりもさらにレベルが高い学校を受験するということです。合格はできない可能性の方が高いです。けれど、その学校を受験することで、そのためにその学校の赤本にも取り組むわけで、それだけ自分自身に力をつけることができるのです。第一志望合格に向けて、より安心して臨めるようにもなります。
 いくつか具体例をあげてみましょう。まずは洛北高校附属中学校を第一志望としていた小学生です。事前には愛光(愛媛県)を受けることにしました。これには、練習だけではなくチャレンジ校としての意味もありました。2日目は少しレベルを落として受験しますが、3日目をどうするか、秋の懇談で相談をしている中で、僕は東大寺の名前を出してみました。普通は洛南高校附属中なのですが、併願だとかなりレベルが高く、専願にすると受かったら洛北に行けなくなります。それならばいっそのこと東大寺はどうだろうかと。その後説明会にも行かれ、本人がいたって気にいってしまいました。すでに洛北の問題は一通り解いています。11月くらいです。東大寺と愛光の問題を解き始めました。国語・社会はまあまあ取れるのですが、算数が3割を切るくらいの結果で、合格点に届きません。まあ、とにかく算数に時間を割いて解いていきました。正月特訓で難関コースの問題を一通り解き終わったくらいからでしょうか。次第に東大寺の問題にも自信が持てるようになり、見事に合格し今も通っています。もうすぐ大学受験を迎えるはずです。次も小学6年生ですが、東山中学を目指していました。しかし、初日午前は空いています。洛星を受けてみないかという話を夏前に出してみました。本人は洛星が受けられるかもしれないということでがぜんやる気がわいてきたのでしょう。急に頑張り出します。東山ならまあまあ余裕で受かる成績だったのです。しかし洛星まではかなり隔たりがあります。それでも秋には洛星の過去問題に取り組み始めます。もちろんなかなか手が付けられない。事務所待機の先生にもお願いして、かなりの時間質問対応をしてもらいました。結果的には洛星はダメだったのですが、2日目午後に高槻後期を受験、そちらに合格し、進学しました。実は高槻は後期の場合、洛星前期よりも難易度は高くなるのです。それくらいまでに力をつけてくれたのだと思います。さらに西京高校附属中学校を第一志望にしていた生徒にも洛南受験をすすめ、その赤本に取り組んでもらいました。やはり洛南は結果的にダメでしたが。西京の理科の問題で洛南の過去問と似た問題が出たとのことで、かなりの高得点を取って西京に合格してくれました。中3生の場合は、いわゆる御三家を第一志望にする人には洛南高校の併願をおすすめしています。「すべり止め」は別日で受験しないといけませんが、洛南を受験することで洛南の過去問にも取り組むわけです。合格できるかどうかではなく、その問題に取り組むこと自体に意味があるのです。受験しない学校の入試問題にはなかなか一生懸命に取り組もうと思う人はいませんよね。洛南の入試問題は難関校を受験するにあたっては十分にやりがいあるものだと思います。それから、たとえば山城高校の普通科を第一志望にする人には、前期で山城高校文理総合科を受験することをおすすめします。普通科の問題だけでは基本問題が中心でなかなか思考力を養っていくことができません。専門学科を事前に受けることで、難易度の高い問題に取り組むことができます。前期選抜はみんなチャレンジすればいいのです。そうやって、自分自身を高めていくことができるのだと思います。
 特に中学受験では頑張れば8校くらい受けることも可能です。あるとき、7校受験した生徒が言っていました。「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」それで2校に合格しました。同じ学校を4回受けて最後の最後に合格を勝ち取った生徒もいます。しんどいことですが本人の思いも伝わったのでしょう。そして、何より、皆さんは受験を通して成長します。受ければ受けただけ力をつけていくのです。だって入試本番、みんな緊張感みなぎる中、真剣勝負で取り組むわけですから。そういう苦労が将来必ず生きてきますよ。
 来月は模試の受け方、そして成績表の見方についてお話します。模擬試験を上手に使ってほしいものです。 

 

9月 模試はどうやって活用すればいいの?


 受験するにあたってはどうしても模擬試験(京進の場合は統一テストや合格判定テストなど)が必要になります。自分の現状と入試のレベルを比較することで、それ以降の取り組み方が分かるからです。僕が中学受験をしたころは偏差値というものがなかったと思います。大学受験のときに見たような気もするので40年くらい前からなのではないでしょうか、模擬テストの結果に偏差値が使われ始めたのは。それまでは点数や順位だけで合否の判定をしていたのでしょうね。僕がこの仕事について30年以上、偏差値を意識する日々が続いています。もうそれなしでは何も語れなくなってしまいました。学校のテストでは偏差値は出てきませんよね。点数だけですね。せめて平均点だけでも教えてもらえると良いのですが、それすら知らなければ、いくら点数が良くてもちゃんとできているのかどうか自信が持てませんね。本当は偏差値なんてなくても、テストで自分のできる問題とできない問題の区別ができて、できない問題をちゃんとできるようにすればいいのですが、でもそのテストの問題がすべての生徒にとってできなければいけない問題なのかどうか、今度はそういうことが問題になってくるのです。まあ、みんなで一斉に同じテストを受けるということに限界があるのでしょうね。ということで偏差値を意識することになってしまいます。自分が受けようとする学校のレベルを偏差値で計ることにもなってきます。目標偏差値がはっきりすれば、この問題は解けなくてもいい、などの判断もできることになります。やり直しがしやすくなりますね。
 そもそも偏差値は平均点が50になるようになっていて、平均点からの隔たりを数値化しています。だから、点数は下がったのに偏差値が上がったなんてことはいくらでも起こりうるのです。そのテストがみんなにとって難しかったという証拠ですね。計算上は偏差値が60あれば上位16%くらいに入っていることになります。でもこれって受験者の点数の分布が割りときれいになっているときならいいのですが、9割以上が90点以上取っているというようなテストでは偏差値は意味がなくなってしまいます。毎週の確認テストならそれでもいのでしょうが、入試の模擬テストとなるとそうはいきません。なにしろ入学試験とは点数に差をつけて合格する人と不合格の人とを分けるテストなわけですから。ですので、模擬テストを作るときには100点満点ならだいたい平均が50点前後になるようにつくることになります。だれでも絶対できてほしい問題が2割くらい、それからこれはよほど力がある人でないと無理だろうなと思える問題を2割ほど、というところでしょうか。で、模擬テストというのはいろんなレベルの学校を受験しようとする人が受けるわけです。いろんなレベルの人の合否判定をしないといけないわけです。だからかなり難しい問題も入ってくることになります。すると、人によっては全部の問題を解く必要がないということになるのです。ということで大事なのは解けそうかどうかの判断をする能力になってくるわけです。いわゆる「捨て問」を見つける力です。この力、かなり重要で、入試のときには結果に大きく影響することにもなります。難しい問題に引っかかってしまって、後半できる問題を解く時間が無くなってしまった、なんていう経験をしたことがある人は多いのではないですか。でもね、この力を身につけるのはなかなか難しいのです。だからテスト後に成績表を見て正答率の高い問題で間違ったところを中心にしっかりとやり直しをするということになるのです。実際の入試ではその学校のレベルに合わせて問題がつくられていますから、模試のときよりもずいぶん易しく思えるような場合もあります。難関校対策としては難関向けの模試が別に準備されているので、そちらを利用すればよいですね。ということで最も大切なのは、とにかくしっかり赤本に取り組んで、自分が受験する学校の入試問題のレベルをしっかりとつかんでおくということですね。そうして、自分がどこまでできるようになっておかないといけないのかということを知っておくということですね。
 さて、ここからはテスト全般について言えることなのですが、テストを使ってうまく学習する習慣を早い時期に身につけておいてほしいと思います。テストがあるからその前に準備をします。範囲が決まっていないようなテストでも、必ずそれまでの復習をします。結果的に、そのテストには効果が現れない場合もあるでしょう。それでも最終的な目標は受験で合格することですから、そこまでに力をつけていけばいいのです。必ずやったことは身についています。そして、テストのときは毎回、入試本番と同じくらいの意識で集中して取り組むということです。1回1回緊張感を持つこと、時間を意識すること、極力ミスをなくすよう努めること、解けそうな問題かどうかの判断をすること、そういうようなことを毎回意識して試験に臨んでください。さらにテスト後、ここが一番大事ですが、その日のうちにできなかったところの確認をします。きっと、どうしてこれ間違ったんだろう、と思える問題があるはずです。テストの準備段階ではできていたのに、なんてこともあるはず。やっぱりどんなテストでも時間との戦いで焦ったりしてミスはつきものなのです。それを極力減らせるように、解ける問題を確実に解けるようにしていくのが大切です。だから、テスト後すぐに自己採点をし、どこでミスをしてしまったかチェックをして、次回以降同じようなミスが出ないように意識していくのです。そのためにもテストの問題にはどう答えたかがわかるように書いておくべきです。国語の記述問題などは難しいかも知れませんが、記号なら〇をつけておくだけです。算数・数学でも計算して答が出たらそれを〇で囲んでおけば良いでしょう。それからさらに成績表が出てきたとき、もどってきた答案と1問1問の正答率を見ながら、絶対間違ってはいけなかった問題がどうしてできなかったのかを確認してほしいのです。算数・数学で言うと、約分を忘れていたとか、比を逆に書いてしまったとか、妹の速さを答えるのに姉の速さを書いてしまったとか、÷2を忘れていたとか、マイナスをつけ忘れたとか、πを書き忘れたとか、3分の1するのを忘れたとか、もう間違い方はいっぱいありますが、でも皆同じような間違い方をするのです。ですから、自分がどんな間違い方をしていたのかを確認し、単なるミスならそれを減らす努力を、本当に解き方が分からない、全然知らなかったなんていう場合は解説を読んだり質問したりして解決していかないといけません。こんなふうにして初めてテストが意味を持ってきます。テストというのは別に皆さんを序列化するためにやっているものではありません。テストは最強の学習ツールなのです。テストをたくさん受けて、テストを活用して、しっかりと力をつけていってほしいものです。 
 最後に、外部の模擬テストを受けに行くときの注意点ですが、どうしたって全く知らない環境で、知らない人たちの中に入って試験を受けるわけで、ふだんのテストとはずいぶん感じが違って緊張もすることでしょう。思うように力が発揮できないということもあるでしょう。だからふだん通りの力が発揮できないかもしれません。でも、知っておいてほしいのは偏差値というのは母集団が大きく変わると数値そのものが大きく変化するということです。数値そのものではなく受験校の目標偏差値と比べてどうかというところに目を向けてくださいね。
 来月は受験勉強に行き詰ったときどうすればいいかをお話します。いわゆるスランプっていうやつですね。

 

10月 受験勉強に行き詰ったときどうすればいいの?


 受験校がはっきり決まりました。目標が定まったので、あとはそれに向かって努力するだけです。それで順調に成績が上がっていけば良いのですが、たいがいの人は9月以降成績が停滞します。当たり前です、みんなが努力を始めるのですから、相対的な位置づけは変わらないのです。逆に言うと、ちょっと気を抜けば一気に下降していくわけで、現状が維持できているのは、みんなと同じ程度には頑張れているという証拠です。偏差値が上がらなくても、自分がしっかり努力を続けられていると思うならば、自信を持ってそのまま突き進んでください。とは言っても、もうこれ以上努力をしても自分はダメなんじゃないか、どうせ受かりっこないのではないか、なんて思ってしまうときも来るかもしれません。そんなときのためにいくつかのアドバイスをしておきましょう。
 まず最初に言えることは、上でも言った通り、努力をしているのであれば、相対的な成績が上がっていかなくても、確実に力はついているので自信を持ってほしいということです。一番の目安は赤本の点数だと思います。1回目にやったときと2回目、どうでしょう、点数は上がっていますか? 一度解いて、解き直しをしたり、質問をしたりしているわけですから、2回目点数が上がるのは当たり前だと思うかもしれませんが、それはちゃんと力がついた証拠なのです。自信を持ってください。スランプ、つまり停滞している時期でも、努力を続けている人は必ず成長を続けています。そう信じて取り組み続けてください。
 受験勉強をしないといけないことは分かっているけれどなかなかやる気が出ないという人もいるでしょう。スランプに陥ったりしている人は、もうすでにこういう段階は越えているとは思いますが、やる気が出ないときにどうすればいいかというと、やればいいのです。とにかく時間を決めて、その時間になったらやり始めるのです。やる気が出るのを待っていては何も始められません。時間になったらやり始める、やり出すと次第に調子に乗ってやる気が出て来たりするものです。作業興奮などと言いますが、掃除の例がよく出されます。掃除を始めると、徹底的にやりたくなってしまう。そういうことってありますよね。時間になったら始めるためには、大ざっぱでいいので、まずはどの時間帯で勉強をするか決めて、手帳に書き出しておきましょう。そして、それが習慣化してしまうとしめたものです。毎日この時間は勉強するんだ、そう思って続けていると、その時間に勉強していないのが逆に何だか不安になってきたりもします。だから、極端な人の場合、入試が終わって、合格もして、しばらくはのんびりしてもいいのに、不安だからと言って毎日塾に自習に来る人もいます。毎年、1人か2人はそういう人がいるのです。一度身につけた良い習慣はずっと続けられるといいですね。
 もし不安にさいなまれて、なにもかも手につかなくなったときは、一度、不安なことを全部書き出してみると良いでしょう。これは脳科学的にも認められているようですが、誰かに相談してアドバイスをもらうとかそういうことではなくて、単に自分がいま不安に思っていることを書き出す、はき出す、ただそれだけでも不安は確実に減らすことができるのだそうです。ノート見開き2ページくらい使って、一気に不安を書き出してみませんか。まあ誰かに話すと気分も晴れるので、心配なことがあったら何でも話しに来てくださいね。つきあいますよ。
 もう煮詰まった、というときに、走って来るという人もいました。過去によく覚えている人が2人います。特に中3生で体を動かす部活動をしていたのに、引退してしまって、ほとんど運動する機会がなくなったというような人に多いのでしょう。夜に勉強していて、煮詰まってきたら、2,3km走ってきて、シャワーを浴びて、また勉強を始めるのだそうです。あるいはコロナで学校が休校になったときとかに、二条城の周りを何周か走って来たという人もいました。その後塾に立ち寄って、自分が苦手だった社会のプリントをもらって、それを一気にやり通し、すっかり苦手を克服してしまいました。1人は洛南に進学し、1人は堀川に進学しましたよ。
 まあ、それぞれで、煮詰まったときにそこから抜け出す方法を1つ2つ持っておくと良いですね。大好きな音楽を聴きながら思いっきり踊ってみるとか、あるいは大きな声で歌ってみるとか、おいしいものをお腹いっぱい食べるとか、最近見たドラマでは、コンビニで一番高いアイスを食べるというのもありましたね。それくらいの贅沢ならいいかも知れませんね。1日くらいなら気分転換にパアッと遊ぶというのもありかもしれません。
 さて、これは授業中でもよく言うことなのですが、成長というのは決して一様な上り坂というわけではありません。停滞する時期があって、どこかで一気に1つ上のステージに上がるイメージです。できるようになると、なぜそれまでできなかったのかが不思議に感じられることってないですか。自転車に乗れるようになるとか、逆上がりができるようになるとか、そういうものをイメージしてみてください。練習しても、何度繰り返してもできなかったのに、ふとしたはずみにできるようになる。一度できるようになると毎回確実にできるようになっている。でもそれって一生懸命練習を続けてきたからこそできるようになったのだと思います。徐々にできるようになるのではなく、一気にできるようになる、そういうことって勉強にもあると思うのです。そういう様子を何度も見てきました。算数がとても苦手だった生徒が、あるときを境に毎回ちゃんと点数が取れるようになりました。もちろんこれは先生から厳しいことを言われても、めげずに努力を続けてくれたからだと思います。自分の中で何かが吹っ切れたのでしょう。もう君は大丈夫だね、と言えるタイミングがやってきます。そういう子は中学校に行っても数学が得意になったなんて言いに来てくれたりします。中3であまり数学がおもしろいと思えなかった生徒が、僕があまり楽しそうに数学の話をするのでなんかだまされてしまって、高校では数学が得意になって、大学は工学部に進学しましたと報告に来てくれた人もいました。残念ながら全員がそうなるというわけではないのですが、努力を続けた人は、いつかどこかのタイミングでそういう日がやってきます。あきらめず、粘り強く取り組むしかないのだと思います。実は問題が解けるのにも似たところがあって、僕は高校生のとき1つの問題を1週間くらい考え続けて、ふと夢の中で解法を思いつくなんていう体験をしたことがあります。「なんか解けそう」から「解けた!」へのジャンプを何度も体験するのが大切なのですね。
 ところで、あなたはもうすでに受験生になっていますか? 時が来れば小学6年生や中学3年生にはなることができます。受験学年には自動的になってしまうのです。でも、自分で意識しないことには本当の受験生にはなれません。そして、本気で受験生としての取り組みをしているのでなければ、受験勉強に行き詰ってスランプに陥るということにはならないと思います。だから、もしあなたがいまスランプだと自信をなくしているのであれば、それはあなたが既に本当の受験生としての意識を持って取り組めているという証拠だと思います。だから、何度も言いますが、自信を持って、決してあきらめることなく、受験生としての取り組みを続けてくださいね。
 来月は保護者の皆さん向けに、受験生とどう接していけばよいかお話します。まあ、つかず離れずですかね。

 

11月 保護者は受験生とどう接すればいいの?


 今月は主に保護者向けにお話します。10歳から15歳、子どもたちは身体的にも精神的にも大きく成長していきます。したがって、同じ受験生とは言え、中学受験と高校受験では子どもたちへの接し方も大きく異なると言えるでしょう。前半では異なる部分を、そして後半で共通する部分についてお話しましょう。
 まずは高校受験を控えた中3生の対応について。極端な言い方をしてしまえば、何もする必要はないということになります。一昔前(僕が子どものころをイメージしています)の親はたいがい何もしませんでした。何もできませんでしたという方が正しいのかも知れません。高等教育を受けていた親は少なかったはずで、英語をはじめ中学生の学習内容を親が見てあげるということ自体出来なかったのでしょう。受験の仕組みも大きく変わって口が出せなかったでしょう。当時でも、中3生はほとんどが進学していましたから、高校受験については基本的に学校の担任の先生に任せておけばよかったのでしょう。もっとも、僕は中3の夏に自分で勝手に受験校を決めて、塾の面談では若干否定されたりしましたが(英語が得意でないのに国際高校を受験した)、結局、新設のその私立高校1つしか受験しませんでした。ダメなら地元の公立と思っていました。そのころは狭い学区制で、オール3あれば基本的に合格できました。今でも、もちろん中3生はほぼ全員が受験するわけで、基本的に学校の先生が進路指導や受験勉強の指導をしてくれます。それでは不足・心配ということで、進学塾が必要になってくるわけですが。基本的に塾ではチャレンジさせる方向で話をしますし、学校は安全志向で話をされることが多いようです。それで、意見が対立することも多々あるのですが、最終的には本人と保護者の判断ということになります。さて、近頃の親の世代ですが(今度は僕の子育てをイメージしています)大学卒の方が多くなり、中学生の学習内容ならば十分に教えることが可能になりました。特に英語や数学なら教えているという保護者の方が多いのではないでしょうか。そして、子どもたちもいわゆる反抗期がうんと減ってしまっていて、親に「教えて」と言っていくケースが増えているように思います。教えてもらえるようになったからですね。どちらが良いか、悪いかとは簡単には言えませんが、子どもたちの自立の妨げになるようなことはなるべく避けるべきだと思います。基本的に高校受験については、学校の先生や塾の先生に任せておいていただくのが良さそうです。学校選びの段階では家庭の事情などもふまえ、しっかり気持ちを伝え、相談に乗ってあげていただければいいかと思います。
 それに対して中学受験については基本的に親が大きく関わることになります。学校の先生は、必要に応じて報告書を書いていただくだけで、それ以外では全く関わる必要がありません。ですので、受験を控えた小学6年生は、保護者と塾の先生に相談しながら、勉強の仕方や志望校選びをしていくことになります。塾に通い始められる前に保護者の方にお願いするのは、慣れるまでしばらくのあいだは勉強に付き合ってくださいということです。子どもによって差はありますが、2,3ヶ月というのが通常でしょうか。ある程度ペースに乗り始めればあとは1人でやっていけます。ここでも、ずっと付きっ切りになってしまうと、受験を通して子どもが成長し、自立していくのを妨げることにもなりかねません。少しずつ手を放していくべきだと思います。一気に成績が下がることもあり得ますが、きっと自ら気付いてより良い取り組み方に変えていくはずです。しかしながら、中学受験というものは、「しない」という選択肢が存在するため、受験に向かう気持ちが維持できないと、成績は下がる一方、勉強がいやになって、受験そのものを断念してしまうということにもなりかねません。そこで、どうしても何らかの強制力は必要になってきます。本人と相談の上でルールを決め、その時間になったら勉強を始める、分からないところには付せんを貼っておいて、次の日に塾で質問する、などなど。繰り返し繰り返し時間をかけて取り組んでいけば、一定以上の成績を維持できるようになります。そうすればまずまずは安心ということになります。勉強自体が楽しくもなってきます。そうして頑張り出した6年生の子どもたちには、受験前の2,3ヶ月だけはもう一度勉強に付き合ってあげてほしいと思います。赤本を解いた後の○つけや直しを手伝ってあげたり、得点の記録を手伝ってあげたり、すべて本人が自分でできるのが理想ですが、実はこうやって手伝ってあげていることが、入試本番での子どもたちの安心感につながります。次第に追い込まれていく子どもたちは、「どうして自分だけこんなにしんどい思いをしなければいけないんだろう」という思いに至ることもあるはずです。そんなときに、保護者の方に手伝ってもらったことがずいぶんとうれしく思えることがあるようです。これは、合格体験記などで受験を終えた子どもたちが書いてくれていることでもあります。どこまで関わるかは、保護者の方々のふだんの生活もありますので、それぞれの判断になると思います。まあ、自分の子どものことですから、塾の先生に言われなくてもちゃんと見ます、という方が大半かもしれませんが。ずいぶん前ですが、ふだんは夜が遅くて子どもの受験勉強に全く関わって来られなかったお父様で、事前に練習のために受けた学校で失敗した子どものために、1週間だけ早く帰って来ていっしょに勉強に付き合ったという方がいらっしゃいました。それが、実は子どもの大きな支えになっていたようで、ちゃんと第一志望に合格してくれました。
 さて、中学受験、高校受験、さらには大学受験でも同じことが言えますが、受験生がいる家庭はどうしてもその子に気をつかうことになってしまいます。どこで勉強をしているかにもよりますが、あまり大きい音でテレビを見ながら大笑いをしているとかは、やっぱりちょっと控えたいですよね。でも、だからと言ってあまり気をつかい過ぎて、家族みんな緊張感がみなぎっているというのも、受験生本人にとってはリラックスできる場が無くなって、かえってしんどくなるかもしれません。気はつけるけれど、気にし過ぎない、そのバランスが難しいところです。他の兄弟姉妹とかいろんな条件がからんできますしね。我が家の場合は子どもたちが2歳違いで、どちらかが受験学年のときは、旅行や実家への帰省などをがまんしたりしました。父娘2人で正月に妻の実家へ帰省したことも2回あります。まあそれも良い思い出です。そして、2人ともが大学受験を終え、僕の両親が亡くなった年に、初めて家族4人で海外旅行に出かけました。その後、コロナ禍に入りましたから、いま思えばもう本当にこのタイミングしかなかったのだと思います。そして、いまは2人とも就職してしまいましたから、もう4人でいっしょに出かけるという機会はやって来ないのかもしれません。ちょっと寂しい気もします。
 なかなか子育てというのは難しいもので、親の気持ちというのは子どもには伝わりにくいかも知れませんが、その子のことを一生懸命に考えて言ったこと、したことならば、きっといつかはそのときの親の気持ちに子どもたちも気づいてくれることと信じています。まあ、それは子どもが親の立場になったときにはじめて気づくことなのかもしれませんが。
 来月は受験直前期の過ごし方についてお話します。決してあきらめないこと。1ヶ月で結果は変わります。

12月 受験直前期の過ごし方はどうすればいいの?


 毎年受験日の100日前からカウントダウンを始めています。もちろん受験生の皆さんを追い詰めるのが目的ではありません。残された時間を悔いのないように過ごしてほしいと思って掲示をしています。
 受験1ヶ月前ともなってくると、まずは出願の時期にあたります。最近はネット出願が多くなっていますが、写真を撮ったり、受験料を収めたり、手続き上のことにいろいろと時間が割かれます。そうこうしているうちに、あっという間に受験当日を迎えてしまいます。高校受験の場合は学校の先生の指示が入るので、それに従ってやっていけばあまり心配はないのですが、中学受験では、すべて自分たちで管理してやっていかないといけません。出願の期限に間に合わなかったとか、コースを間違って出願してしまったとか、いろいろなことが起こり得ます。注意していても間違いは起こるものなので、どうしても自分で解決できないときは受験する学校に相談すると良いでしょう。ていねいに対応していただけるはずです。ただし、締め切りを過ぎてしまうともう無理ですので、そこだけは気をつけてください。それから、この出願時期に起こりがちなのが、それまでにいろいろと相談して受験校を決めてきたはずなのに、だんだん不安になってきて、学校の先生に勧められるがまま、受験校のレベルをぐんと落としてしまうということです。そのときの気分に流されないように気をつけてください。それから、中学受験では、複数校受験する予定で準備していたのに、最終的に受かっても行かないところを受ける意味があるのかとふと疑問に思い、受験校を1つにしぼってしまうということです。もちろん、合格すればそれで良かったとなるのですが、子どもたちは複数受験する中で力をつけていきます。やはり事前受験で練習をしてから本番に臨んでほしいですし、もしものときのために安全なところも受験してほしい。受かっても入学するかどうかは後から考えればよいわけで、少なくとも1つはきちんと合格という体験をしてほしいと思っています。
 さて、受験生の皆さんには残り1ヶ月でもできることはたくさんあります。小6は9月から、中3でもだいたい2学期1回目の定期テストが終わったくらいからは赤本に取り組むようになります。過去の入試問題ですね。少し短めで時間をはかって問題を解く。その際には、分からないところはカンで答えてもいいし、それで正解なら得点にしてもいいのですが、必ずチェックを入れておいて、直しのときに確認するようにしてくださいね。危険なのは、たまたままぐれで合っていて、正解だから直しをしていなくて、そのため次にやったときには間違ってしまうということです。そして、入試本番で間違ってしまうのが一番怖いわけです。これは、どの段階の勉強でも同じですが、大切なのは、できることとできないこと、分かることと分からないこと、覚えていることと覚えていないことを分けるという作業です。そして、できないこと、分からないことをできるようにする、そのために前の教科書を調べたり質問したりすること、覚えていないことはもうその場ですぐに覚えると意識すること、そういうことが大切なのです。同じ間違いをくり返さないようにね。そして、入試直前になってくると、第一志望の赤本はもう2回目、あるいは3回目に入ってくる人もいることでしょう。同じ問題を何度もやって意味があるのか、はい、ちゃんと意味はあるのです。教科によって若干差はあるでしょうが、2回目解いてみて、1回目より点数が上がっていればそれが自信につながります。時間は短めにしてくださいね。何よりも、その第一志望に絶対合格したいという強い思いがあるからこそ、2回目、3回目の取り組みができるわけで、その思いがその行動に現れているのです。その強い思いが最後には大事になってくるのです。僕が見てきた生徒の中で、過去一番多くの過去問に取り組んだのは立命館中学校に合格した女子です。入試本番1ヶ月前の最後の合格判定テストで目標の偏差値には10足りていませんでした。その段階で他の学校に変えるという選択肢もあったのですが、その子は絶対に立命に行きたいと言い張りました。そしてその思いを行動で示したのです。赤本をどんどん進めていき、2回目、3回目は時間も短縮して実施し、直しの時間も短くてすむので、最終的にのべ120年分を仕上げてくれました。最後の1ヶ月は1日平均2年分(算国2教科で1年分と数えている場合もあります)のペースで仕上げていったことになりますね。あまりのペースの速さに驚いて「えっ?いつの間にこんなにやったの?」と聞いた覚えがあります。そして、見事に合格してくれたのです。ラスト1ヶ月で結果は変わります。変えられます。強い思いを持って、それだけのことをすれば。もう1人例をあげましょう。その子は小6の夏に急に受験したいと言ってやって来ました。夏休み中は相当しんどかったはずですが、9月に入ると少しずつ周りに追いつき始め、そして最後の3ヶ月、本当によく努力をしてくれたのです。洛北高校附属中学校に合格して報告に来てくれたとき、お母さんがおっしゃいました。「もう本当、最後の3ヶ月ほどはよくがんばっていました。ご飯と、お風呂と、寝る時間以外はずっと入試問題を解いていましたね。」やはり偏差値は10ほど足りていなかったのです。「受験にまさかはあっても、まぐれはない」とは昔からよく言われることばです。まさか、あの子が、というような不合格はあり得ます。本番で頭が真っ白になってしまい、まったく手が付けられなかったという生徒もいます。でも、逆に、まさか、あの子が合格するなんて、ということも起こり得るのです。数字を見ているだけでは分からない、強い思いがあれば結果は変えられます。そして、照れ隠しで言う人はいるかもしれませんが、「まぐれで合格しました」なんてことは決してないのです。それはちゃんと努力していたからこその合格なのです。
 ①一生懸命頑張って合格、②適当にやって合格、③一生懸命頑張ったけれど不合格、④適当にやって不合格 皆さんはどれを選びますか。僕は全員が①であってほしいと思います。でも、③になることはどうしてもあり得ます。それが受験です。でも、一生懸命努力していたのならば、結果がどうであれそれはあなたの将来に必ず生きてきます。ラスト1ヶ月、絶対合格するという強い思いで努力を続けてください。決してあきらめないでね。
 最後に、保護者の方へのお願いも少しお話しておきましょう。保護者が神経質になりすぎると子どもたちにも影響が出て来ることと思います。だからと言って、平静を保っていてくださいと言っても、受験生なのにそうは見えない行動をとっている子どもを見るとつい声を荒げてしまうこともあるでしょう。こういうことはケースバイケースなので一律に言えるようなことではないのですが、子どもが頑張りすぎる場合は「ちょっと休憩したら」「あまり遅くならないようにね。身体をこわしたら元も子もないよ。」などと声をかけて上げてほしいです。また、まったくやらない子には「後悔のないようにできるだけのことはやっておいたら」くらいのことは言ってもいいでしょう。言い過ぎると、かえってやる気をそぐので気をつけないといけませんが。その子その子にあわせて、つかず離れず、気にするけれど、気にし過ぎず、ほどほどに、良いさじ加減のところで、これが結構難しいのですけれどね。まあ、健康面にだけは気をつけて上げてもらえればと思います。
 来月は、いよいよ受験当日の注意点についてお話します。「できるところを確実に」もうこれしかないです。

 

1月 受験当日はどう過ごすのがいいの?


 さあ、いよいよ受験当日を迎えました。今まで努力してきたのは、すべてこの日のためでした。この日だけのためではないですが、この日に力をしっかり出し切りましょう。力を出し切るとたくわえがすべて無くなってしまうということではないのです。力を出せば出すほど太くなる筋肉のようなもので、みなさんは1回1回の受験を通してさらに力をつけていくのです。成長していくのです。初日の受験はほとんどの人は練習ですね。少々の失敗はかまいません。何が良くなかったか、何が足りなかったか、いろいろと考えて本番に向けて調整していきましょう。1日あれば1時間あれば、自分を変えていくことができます。最後の最後まであきらめずに努力を続けていきましょう。
 さて入試当日の心構えについてお話しておきましょう。受験校まで30分で行けるとして、集合時刻の少なくとも2時間前には起きていて欲しいので、ほとんどの人は6時過ぎに起きることになるでしょうね。そうすると前日は夜の10時過ぎにはふとんに入ってほしいですね。ふとんの中で「これおぼ」でも見ながらごろごろして、眠くなったら目を閉じてください。なかなか寝付けなくても、また起き出すのではなく、暗くしてごろごろしていれば疲れはとれています。できるだけ良いことだけイメージして心を落ち着けましょう。脳の中が少しずつ整理されていきますよ。朝食ものどを通りにくいという人がいるかもしれませんが、少なくともバナナ1本くらいは食べておいてほしいですね。脳には糖分が必要ですからね。水分も大切です。目をしっかり覚ますためにとコーヒーなどカフェインをとるという人もいるかもしれませんが利尿作用もあるので気をつけたいですね。前日の内に持ち物はすべて確認しておいてほしいですが、当日朝にももう一度確認して出発しましょう。上靴とか何かを忘れたとしても、試験会場でお願いすれば何とかなるものです。しかし、忘れ物をしたことで、どうしようとドキドキしてしまうのが良くないのですね。だからしっかり準備はしておいてほしいです。それと、最も寒い時期ですが、教室に入ると暑すぎるということもあります。着脱しやすい服装で行くことをおすすめします。下半身は暖かくしておくといいですね。僕自身の経験ですが、中学受験の際、席が一番前で、目の前にストーブがあり、かなり暑くて頭がボーとしたことを覚えています。(ストーブなんて今はどこにもないでしょうが。)
 学校に到着したら、受験番号を確認し、自分の教室、机をまず探します。次に、トイレの場所も確認し、必要ならば先にすませておきましょう。そして、「これおぼ」とか先生にもらったプリントなどを見て試験開始直前までの時間を過ごしましょう。ボロボロになるまでやり込んだ赤本をお守りに持って行くのはいいですが、試験会場で開いて解こうとするのはおすすめできません。パッと見て分からないものにぶつかったりするとあせるだけですからね。それから、休み時間は終わった教科のことは忘れてしまいましょう。絶対にできなかったこととかを次の教科に引きずらないこと。近くに友だちがいても、「あれどう答えた?」などと言う会話はやめておきましょう。それよりも、次の教科のことを考えましょう。そして、すべての教科が終了したら、しっかりと復習しておきましょう。問題用紙を回収された場合でも、思い出せる限り思い出して、あれはどうすればよかったのだろうとか、あの答えは何だったかなあなどと考えて、調べたり、質問したりしておきましょう。実はそれが次の入試に大きく関わってきたりするものです。
 入試問題に取り組むときに一番大切なのは、解ける問題を確実に得点することです。100点なんて目指す必要はありません。たいがいの学校は7割正解すれば合格です。公立高校の中期選抜で8割以上取らないといけないという場合もあるでしょうが、ふつうは6割とか、教科によっては5割を切っても合格できる場合があります。そこで必要になるのは、自分が解けそうな問題はどれかを見極める力です。これは、たくさん赤本を解いてきたみなさんならば大丈夫なはずです。少し考えればできそうなのか、もうこれは捨ててしまった方がいいのか、その判断をなるべく短時間でしないといけません。超難問に下手に時間をとられて、解けるはずの問題にかける時間が短くなっては元も子もありません。自分にとって解けそうな問題にまず時間をとって、ミスのないように確実に正解しましょう。分かっていたのに、答えを書き間違えた、問題文をちゃんと読んでいなくて間違えた、などというのをなくしましょう。最初から、到底受かるのは不可能と思えるようなレベルの学校を受けているわけではありません。それぞれが、この学校ならばと決めて受験に来た学校です。しっかりと自分の持っている力が発揮できれば合格点がとれるはずです。自信をもって臨みましょう。それでも、入試の日は何が起こるか分かりません。途中でトイレにでも行きたくなったらあまりがまんはせずに、手を挙げて監督の先生にお願いしましょう。僕は高校受験の国語の時間にお腹が痛くなり、このままがまんしたら30分くらい時間をボーにふる。トイレに行けば10分くらいロスするかもしれないけれどまだましと思って、思い切って手を挙げました。監督の先生がトイレまで付いて来られたのですが、まあちゃんとウンをつけてきたので、合格できたのでした。
 ときには頭が真っ白になってどうしていいか分からなくなってしまう人もいます。そんなときは、少し深呼吸をしてふだんの塾で勉強している様子を思い浮かべてみましょう。先生が言っていたこと、友だち同士で励まし合ったこと、家族が応援してくれていること、などなど思い出してみましょう。なんならシミセンの顔を思い浮かべてみてください。なんか変な顔してたなあとか、なんか変な動きしてたぞとか、そんなことを思い出しているうちにきっと落ち着きがとり戻せてふだん通りの力が発揮できるはずです。いや、ふだん以上の力を発揮してほしいものですね。「火事場のばか力」などとも言いますが、これはピンチに陥ったときに、ふだんでは出せないようなびっくりする力が出ることです。でも、実はこれはふだんみんなが並々ならぬ努力をしてきたからこそ、出せる力なのです。もともと鍛えていなければ出せる力ではありませんね。
 僕は、過去に何度も、この「ばか力」を出して合格してきた人を見ています。そういう人たちの共通点は、とにかく最後の最後まであきらめなかったということ。模試の合格判定とかは無視していいとは立場上言えませんが、しかし、入試当日にはそんなものなんの役にも立ちません。A判定・B判定をとっている人はそれを自信にして取り組んでもらえばいいのですが、E判定だってなんだってそんなこと関係ありません。一番はみんなが最後の最後まであきらめずに赤本にどれだけ取り組んできたかなのです。もう、絶対受かりたいという気持ちを持って、寝る時間と、食事の時間をのぞいて、やれるだけのことをやってきたかどうかが最後にはものを言うのです。トイレの中でもお風呂の中でも勉強はできますよ。夢の中で問題が解けたなんていうこともあります。最後の最後はそうやってやってきたことがみんなの自信につながるのです。あきらめずに最後までやり抜きましょう。
 来月は入試が終わった後のこと、合格発表のことなどについて話しましょう。結果はすぐに連絡してね。

   

2月 受験を終えた後はどう過ごせばいいの? 合格発表のことなどなど


 中学受験の皆さん、お疲れ様でした。高校受験の皆さんはもうひと頑張りです。期待しています。
 今月は受験すれば必ずその後についてくる合格発表についてお話しましょう。それから入学後のことも少し。  
 合格発表の仕方もずいぶんと様変わりしました。その昔、僕が中学受験のときは夕方校舎横の壁の高いところに合格者の受験番号がはり出されました。僕は父親に車で連れて行ってもらって、車の中から結果を確認すると、降りることもなくすぐにその場から離れてもらいました。高校受験のときは昼間で合格者の受験番号がはられた立て看を裏向きで先生方が運んで来られました。そして表向けられた掲示番号の中に自分が見つけたい番号はありませんでした。ところが、それは繰り上がり候補者の番号。受験日が他と違っていたため、かなり多くの繰り上がりが見込まれていたようです。次に表向けられたのが正式な合格者番号で、そちらにはちゃんと僕の番号がありました。おいしいものを食べると「ほっぺたが落ちそう」なんて言いますが、そのときの僕の顔もちょうどそんな感じで、顔の筋肉はゆるみっぱなしでした。帰り際、向こうからやってくる人が自分の変な顔を見て笑っているような気がしましたが、それは自意識過剰というものでしょうか。大学受験は遠くの学校を受験したため、自分では発表を見ていません。そのかわりに、事前に頼んでおいた学生に発表を見てもらい電報!を送ってもらいました。「ハルノソラトキマイアガル」今でもこのことばを覚えています。その後、大学院を2回受けてどちらもダメでした。結局、僕の場合は中学も高校も大学も1校ずつしか受けなかったため、全部で5回受験して2勝3敗という結果でした。いまは中学受験だけで7校とか受験するのにね。
 ここ数年で合格発表の仕方が大きく変わっています。コロナの影響もあって、多くの学校で掲示もするがホームページでの発表もするという形式をとられています。そのため、事前に家で合否を確認してから学校に向かうということが多くなりました。ホームページの発表にも2通りあって、1つは合格者の番号が全員分掲載されるもの。そしてその中から必死で自分の番号を探し出します。なかったときは二度見、三度見としてしまいますね。もう1つは自分の受験番号とパスワードを入力してEnterを押すと、パッと自分だけの合否結果が出て来るというもの。ピンクの桜の花びらなんかをあしらったちょっと華やかな感じで「おめでとうございます!」と書かれているか、地味に1色で「残念ながら・・・」と書かれているか。まあ、どちらにしてもドキドキしますよね。歓声を上げるような合格発表は減ってしまいましたが、でもやっぱり受験生にとってはどんな形であれ、発表のときは心にずっしりと重しがのっているような感じで、合格すればそれが取れてふわっと浮き上がる感じでしょうか。僕の今までの体験で、一番喜んでいるのを見たのは、京都女中に合格した子が報告に来てくれたときです。もう本当にぴょんぴょんと飛び跳ねていましたからね。そして、忘れもしない、一番印象に残っている発表は、灘中の発表です。20年近く前のことですが、東大寺第一志望だった子に、「灘中チャレンジしてみる?」と声をかました。東大寺は頭が真っ白になって合格できなかったのですが、なんと灘に合格しちゃったのです。僕は学校の体育館にまで発表を見に行きました。「あった!」と思って横を見たら、その子のお父さんがいて、思わず抱き合ってしまいました。その場で合格の感動を分かち合えるというのは本当に素晴らしい体験です。
 一方で、ほとんどの学校で半分以上の子が不合格になっているわけです。以前はよく言ったものです。「友だちと一緒に発表を見に行くのはやめようね」と。2人とも合格なら感動は倍増するでしょうし、2人とも不合格ならショックが少しはやわらぐのかもしれませんが、どちらかが合格でどちらかが不合格の場合、喜ぶに喜べない、泣くに泣けない、双方が気をつかい合うという状況、考えただけでぞっとします。でも、実は双子で同じ学校を受験した場合、こういうことが起こり得るのですね。そういうケースを1組だけ見たことがありますが、その子たちは2人とも合格じゃなかったら入学しないと事前に決めていたそうです。なかなかつらい決断ですね。それから、家族みんなで発表を見に行くのもおすすめできません。これも容易に想像がつきますよね。合格ならみんなで記念撮影でもして、おいしいものでも食べてくればいいですが、結果が良くなかった場合は・・・
 皆さんにお願いです。結果が分かったらすぐに電話をしてきてくださいね。良い結果でも悪い結果でも。僕たちは電話の前でドキドキしながら待っています。ちょうど発表の時間帯に関係ない電話がかかってきたりすると、その相手の人は何の悪気もないわけですが、僕たちは「もう何でこのタイミングで・・・」と思ってしまうわけです。合格したかどうかわからない状態でおそるおそるこちらから電話で聞くのは本当に気まずいのです。よろしくお願いしますね。それと、受けた学校の発表は全て確認してくださいね。過去に一度、中学受験で同じ学校の初日午前・午後両方を受験した子がいました。確かにレベル的には午後の方が難しいのです。だから午前の結果が良くなかったとき、どうせ午後の発表を見ても・・・と思ってしまう気持ちは分からなくもないです。でもでも、そのときのちょっとした調子の違いとか入試問題との相性とかでレベルが高い方に合格することだってあるのです。そのときは、受験番号が一斉に掲載される発表だったので僕の方で結果を確認することができて、待ちきれなくて電話をしたのですが、そうしたら「午前ダメでしたよね。午後の分はどうせ無理だから見てません」と。こちらからは言えないので、「確認してください」とだけ言って電話を切りました。それから数分後、喜びはたまた驚きの電話がかかってきたのは言うまでもありません。
 さて、合格から入学までの日々の過ごし方ですが、ずっとがんばって来たのだから少しはゆっくりしてもいいのだけれど、きっと勉強するいい習慣がついているはずなので、なるべくそれを維持していって欲しいものです。中学受験の皆さんなら、まずはすぐに英語の勉強に取りかかりましょう。附属小学校から上がって来る子たちがいる学校などでは、英語は普通にできるものとして進んでいきます。おどすわけではないですが、一気に訳が分からなくなりますからね。春休み中にかなりの課題を出される学校もあると思いますが、それは皆さんの学力が一気に下降してしまわないようにとの配慮から出されているものです。しっかり取り組んでいってください。不本意な結果で入学が決まってしまった場合、少しは落ち込む時間があってもいいですが、すぐに切り替えて、前向きにその学校で頑張ろうと思ってほしいものです。人生何が良かったかなんて後になってみないと分かりません。第一志望に合格して入学したけれど、なんかうまく合わなくてつらい思いをしたという人もいます。逆に第二志望だったけれど、すごく楽しく通うことができたという人もいます。どこに行ったとしてもそこでしっかり努力を続けて、次のステージを目指して頑張り続けてください。そして、どうしてもつらくて嫌になったときは、また相談に来てください。人生いろんな道があります。何度でもやり直しはききますよ。
 さあ、来月はいよいよ最終回。そもそも受験って必要なのかなあ、ということを考えてみたいと思います。

 

3月 そもそも受験って必要なの? 本当の幸せってなんだろう


 さあ、ほとんどの皆さんは受験が終了し、進学先が決まり、新しい生活に向けての準備が進んでいることと思います。中期選抜受験の皆さんはもうひと頑張りです。最後の最後まで1点でも多くとれるよう努力を続けてください。1週間でも結果は大きく変わります。
 最終回は本当に受験って必要なんだろうかという話をしたいと思います。必要かどうかと聞かれると、どちらかが正しい答であるかのような印象を受けるかもしれませんが、実はそんなことはなくて、受験はあってもなくてもいいし、学校によって違っていいし、人によって違ってもいいのです。もっと自由であっていいのだと思います。昔に比べるとずいぶんと入試制度も自由になってきたように思います。特に大学受験はいろんな形のものがあります。一番一般的なのは1月に共通テストを受けて2月~3月に学校ごとの個別テストを受けるというもの。私立も2月が一般入試のピークでしょうか。でも実は9月くらいからいろんな形の入試が始まっていて、もっと早くに進学先が決まっている人もいます。総合型選抜と言って高校での取り組みを中心に、学力面のみではなくどういう人物か、将来的に大学で伸びそうかどうかなどを判断して合否が決まるものもあります。うちの娘の場合は11月の推薦入試で決まってしまいました。学校の成績はある程度必要ですが、あとは面接と作文でした。もちろん作文と言っても英文で与えられたテーマについて英語で答えるというものでしたが、たまたま前日に復習して考えていたテーマにひきつけてうまく答えられたそうです。そして、大学入試においてはこの推薦タイプの入試で入学する学生が40%くらいになっているそうです。近いうちに半数を超えるのではないでしょうか。そうするとずいぶんと状況は変わりそうです。実はそうなると塾も大変です。冬期講習なんて受ける高校生の数が半減してしまうわけですから。大学側にとっても、早く入学者を確保したいから早い時期に推薦入試をするわけですが、その後全く勉強せずに入学してくるとなると学力がうんと下がってしまって困るわけです。そのためにあの手この手でいろいろと課題を出したり、試験を受けさせたりされているようです。
 中学受験や高校受験では、一部で12月ころに結果が出るところもありますが、ほとんどは年が明けてからです。そうしておかないと特に中3などでは収集がつかなくなりますからね。今でも前期選抜発表から中期選抜までの2週間ほどは地獄だと思います。頑張りたい子がいる一方で、すっかり浮かれて気の抜けた子が半分くらいはいますからね。入試は多様化する傾向にありますが、それでもまあ今のところはまだ昔からと似たような入試問題を解くことになっています。今後、内申、面接、作文だけで入学できる学校が増えたり、内申と抽選だけで選抜するような学校が出てきたりするかもしれません。子どもの数が減って、定員割れする学校が増えて、無試験で入学できる学校が出てくるかもしれません。今でも、試験はあるものの不合格者がいないというような学校はあります。だから、どこでもいいから高校に進学したいとか、どこでもいいから私立の中学に行きたいとかいう場合は、探せば行ける学校はあるでしょう。でも、それは、あなたが本当に望んでいることですか。それであなたは本当に幸せになれますか。
 そこで、本当の幸せって何なんだろうか、ということを考えてみたいと思います。何を幸せと感じるかは人によって違うので一般論で語ることはできません。ですので僕の感じる幸せについてお話しますので、皆さんはそれを基に自分ならどう感じるかを考えてみてください。そんな中で、自分にとっての受験について考えてみてくれるとうれしいです。
 僕が幸せだなあと感じるのは、本を読んだりテレビを見たりどこかで人の話を聞いたりしていて、今まで知らなかったことと出合ったり、「なるほど」と思えたりするときです。最近、哲学の入門書を読んでいて、哲学というのは普遍的なことを議論するだけではなく、個別的なことを深く掘り下げることも大切なのだという話を読んで、我が意を得たりと思いました。一般論ばかり聞かされてもおもしろくないですからね。具体的な話の積み重ねの中にこそ真実はあるのだと思います。それから、小説を読んだり、ドラマを見たり、映画を観たり、芝居を観たりして、感情が揺さぶられたときですね。「だが情熱はある」良かったですね。何度も笑ったし、何度も泣きました。ドラマを見ながら、何度も幸せって何だろうと思いました。大学に進学して、有名ないわゆる一流企業に就職するのが幸せですか? お金がたくさんあれば幸せですか? お金が無さ過ぎるのは困りますが、裕福でなくても、毎日楽しく幸せに暮らしている人はいるでしょう。今を楽しく生きるのが幸せなのか、それとも将来の幸せのために今は少し苦しくてもしんぼうした方が良いのか。僕はどちらかというと後者の方を優先的に考えてきたし、皆さんにもそういう話をしてきました。でも、やっぱり、今も楽しい方がいいに決まっていますよね。どっちかだけではなくて、どっちも大事なのです。だからこそ、皆さんには受験勉強を楽しんでほしいのです。楽しいことは続けられます。楽しいことはどんどん伝染していきます。そういう塾でありたいのです。
 受験はみんなが幸せになるために存在するのだと考えてみましょう。受験勉強自体がみんなの幸せにつながっている。決してそれは幸せになるための手段ではなく、受験そのものを楽しむことで、受験が幸せの源になってくるのです。受験というイベントがあるからこそ、ひょっとすると最初は仕方なく、皆さん勉強を始めるのかもしれません。でもどうですか、勉強をしているうちに勉強すること自体が楽しいと感じたことはないですか。だって、こんな勉強していなかったら絶対できなかったはずなのに、それができるようになっているのです。なかなか思うような成績が取れない人もいるでしょう。でも、半年前、1年前の自分と比べてみてください。できることがむちゃくちゃ増えていませんか。受験なんてなくて、自分の好きなことばかりやっていた方が幸せだろうと思うかもしれませんが、本当にそうでしょうか。受験勉強をすることによって、世界のこと、昔のこと、宇宙のこと、微小な世界のこと、生きもののこと、人間のこと、いろいろと知ることができるのではないですか。未来のこと、他人のこと、全く知らない他の国のことを考えたりできるようになるのではないですか。そうして、あなた自身の世界が広がって行きませんか。それって幸せなことではないですか。受験の制度はこれからいろいろと変わることでしょう。でも今のところ、この受験、どうせ乗り越えないといけないものなら、みんなで受験を楽しんでみませんか。このハラハラドキドキ、スリル満点のイベントを楽しまなきゃ損ですよ。いやいややるのではなく、前のめりに、自分から進んで、楽しく、楽しく学びましょう。そして、一生懸命に取り組んだ上での合格は、本当に最高に幸せな気分を皆さんにもたらしてくれますよ。
 1年間お付き合いいただきありがとうございました。まだまだ書き足りないこともありますが、僕自身、書いているうちに気付いたこともたくさんありました。皆さんの受験に何か役立てていたら幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?