【創作】夜のドライブで【スナップショット】
夜ってこんなに暗いんだね
ああ
雨が綺麗
窓ガラスに反射して
光の模様みたい
本当だ
吸い込まれていくみたい
このまま夜に吸い込まれて
消えてしまいたい
二人で？
わからない
そうかもしれない
ただこの瞬間
何も考えずに
消えられたら
それが幸せなのかも
そうかもしれない
疲れてしまった自分を感じる
私もそう
どうしてこうなったのか
時々考える
どうして僕たちはこうなったのか
もう会った頃も
思い出せないくらい
遠い昔に感じる
うん
あと2年
なぜ待てなかったのかと
いうことも考える
あと2年
でも待てなかったと思う
どこかでこうなっていたと思う
今こうなって
もう引き返せない
ああ
後悔している？
それは不思議とない
私もそう
よく言うでしょう
何度人生をやり直しても
同じことをするって
初めてその意味が分かったと思う
それ以外もう考えられない
自分の生きている姿が
この今以外思い浮かばない
本当に不思議
何かになりたいとか
自分の可能性とか
そうしたものが
すべて消えてしまって
体が軽くなった気がする
だとしたら僕は
君の可能性を奪ったことになる
そうじゃない
自分が空っぽになって
もう何も悩まなくていい
ただ私たち二人のことを隠し通して
あなたを感じていればいいと
それだけ思っている
年を取るってこういうことなのかなと
思ったりもした
だとしたら僕は年を取りきれないな
今でも君を失うのが怖い
どんなことをしてでも
隠し通して
生きることしか
考えられなくなっている
あと2年？
あと2年
長いね
長い、とても長い
2年なんてあっという間だよ
って言ってくれないの？
それは言えない
あっという間だと感じるのは
何の後ろめたさもなく
罪悪感も悩みもなく
幸福に過ごす時だけだから
幸福じゃない？
幸福だとは思う
でも何も考えずに
すむわけでもない
私もそう
幸福なはずなのに
先が全く見えない
この夜の高速道路みたいに
本当に私たちはここを抜けられる？
本当はこのまま
夜に吸い込まれていくんじゃない？
でもそうなっても
私は後悔しないと思う
きっと僕たちは夜に吸い込まれない
僕たちはまだやることは残っている
この夜をやり過ごして
生き続けるしかない
生き続けることは
罪ではない？
罪ではない
僕たちは投げ出す決断を
まだする必要はない
全てが明らかになったとき
僕はその全てを背負うと思う
でも自分の心に沿ったとしか
言えない
気がかりなのは
君がこの後
どう思うかということだけ
私は後悔しないと思う
そうであれば嬉しいと思う
こうなっているのに
君にはただ明るい道を
見てほしいとも思う
矛盾しているけど
僕に出会わなかった時のように
私は不思議だけど
あなたに幸せになってほしいと
そんな気がしている
自分はこのまま消えていいけど
あなたにはただ幸せでいてほしいと
それは生まれて
はじめて言われたかもしれない
だとしたら
あなたでもまだ体験しなかったことが
あったんだね
ああ
人生は不思議だ
多分この夜を抜けるまでに
僕たちはまだ多くのことを見る
うん
きっとそうだね
大丈夫
気持ちが落ち着いた
たぶん全てを見る決心がついたと思う
（終）
※【スナップショット】では
ワンシチュエーションでの
短いダイアローグや詩を
不定期に載せていきます。
今回はここまで。
お読みいただきありがとうございます。
今日も明日も
読んでくださった皆さんにとって
善い一日でありますように。
次回のエッセイや作品で
またお会いしましょう。
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