小説・成熟までの呟き 21歳・2

題名:「21歳・2」
 2012年冬、美穂は就職活動を始めていた。この国の社会では、大学に進学したら3年には卒業後の進路を決めるために就職活動をするという。その際には皆、黒か紺のようなスーツを制服を着る。格好もそうだが、話し方や仕草も決まっていて、まるでロボットのような動きである。この国の社会側にいる人間は、社会に出る前の学生に対しては乱さず皆で同じような動きをするように求めているようである。女子学生はタイトスカートを穿くことが多い。この国の社会では、女性は足のような体の綺麗さを出すように求めているようである。女性に対する嫌がらせのようにも捉えられるが、固定観念を持つ多くの人々がその考え方で支配している。男性は強さを、女性は美しさを求められるのかもしれない。それは社会が決めた髪の長さにも影響しているのかもしれない。尚、男子学生はきついネクタイを締めることや髪を短くすることを強要される。また、「誰かを支えたい」という気持ちを示すと弱々しいと捉えられる。男性が髪を伸ばしたくなる心理としては、優しすぎて心が弱くて誰かに守ってもらいたいという感覚を持っている人もいるかもしれない。幼い頃からおとなしくするように育てられた学生にとっては不利である。肉体的に弱い点や冴えない点ばかり注目された学生は、結局就職活動に失敗して進路が未定なまま卒業する者もいる。その場合、卒業後も就職することは難しく、一発逆転を狙わざるを得なくなる。例えば、芸能人になって成功するとかである。それらの進路が実現するかは未知数である。それらが実現するまでが長くなるほど、「そもそも自分は就職してフルタイムで働ける能力はなかったのでは」と捉えるようになる。その場合、旅のような何か生きているうえでの楽しみがあればうまくやっていけるかもしれないが、それすら見つからない場合は一層引きこもりになるかもしれない。この国の前倣え精神は、人々を生き苦しくさせる。彼女は、黒くて後ろに縛った髪型で真面目そうな格好で面接を受ける。本意とは違うが社会に出るための試練だと考えて、「頑張らなくちゃ」と思う。それまでの人生では、どちらかというと周りを支える態度をとることが多かったので、「1つの集団を陰から支える存在になりたい」というように発言する。結果、3社から内定を得る。

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