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小説のこと

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読んだ本の感想など。
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記事一覧

精霊の木(上橋菜穂子/新潮文庫/2019.5.1)

守り人シリーズをまだ読んだことがない人に「上橋さんの作品ってどんな感じ?」と訊かれたら、場合によっては先にこちらをおすすめしても良いかもしれない。守り人シリーズよりも分かりやすく、スカッと感がある。だけど上橋さんの作品にいつも感じる、別世界に連れていかれるのだけど現実世界の思考にも浸食する感じは変わらない。

自分のなすべきことにまっすぐな生き方ってかっこいいなあと思う。現実ではそれが実を結ぶとは

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西の魔女が死んだ(梨木香歩/新潮社/2001.08.01)

会社員時代、仕事でいろいろ悩んでいたとき、メンター的にしていた小説。中学校時代、学校生活に悩んでいたときにも知りたかったなあとも思う。

学校に行かないと決めた主人公が、田舎の一軒家に住むイギリス人のおばあちゃんの元で一夏を過ごす話。おばあちゃんは実は魔女、その教えを受けて魔女修行をする。魔女というとファンタジーな感じだけど、そういうことは一切出てこなくて、いかに日々を丁寧に暮らすかという話。いわ

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これは王国のかぎ(荻原規子/理論社/1993.01)

老舗の異世界転生もの。はじめて読んだのが10代のときで、ファンタジー好きな子どもとしては、今日の延長線にこんな世界があってもおかしくないというしっかりとした実体を感じたのを覚えている。

真面目で、優等生で、そのことにプライドもあるけど自己嫌悪もある。そんな気持ちを冒険させてくれるお話。そして、恋のきらきら感。どろっとした気持ちもあるんだけど、やっぱりきらきらしてる。

アラビアンナイトの世界がベ

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RDG レッドデータガール 1~6(荻原規子/角川文庫)

勾玉三部作が荻原さんの作品との出会いだった自分にとって、これぞ荻原規子さんの世界観という気持ち。大人になった今でも没頭して読んでしまうけど、10代のころに読んでいたらもっと大変なはまり方をしたと思う。

姫神、修験道、九頭竜、陰陽道、そして学園生活と、和風ファンタジーの定番設定のようでそうは感じさせない。知識があまりなくても楽しめるライトさがありながら、薄っぺらくない重厚さが共存していて感動する。

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りかんさん(梨木香歩/新潮社/2003.6.28)

日本人形のイメージが変わった本。日本人形が愛しく思えるようになったし、自分と遊んでくれた人形たちに感謝の気持ちを抱くようになった。

祖母から譲り受けた日本人形から始まる、不思議体験。リカちゃんではなくりかさん。不思議な存在なはずなのに、お姉さんみたいな、友達みたいな、お守りみたいな存在。

不思議な設定と並行して、女性であることで経験する、理屈だけでは割り切れない、相反する感情が共存する、混沌と

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天国はまだ遠く(瀬尾まいこ/新潮社/2006.10.30)

2008年に映画化され、加藤ローサさんとチュートリアル徳井さんが主演をつとめたお話。最初は映画から入ったのだけど、この作品きっかけで瀬尾まいこさんの作品のファンになった。

都会で疲れた若い女性が田舎で気力を取り戻す話。筋書きを一言で説明するとべたな感じもするのだけど、瀬尾まいこさんの描く主人公の内面や眼差しがべたにさせない感じ。20代のとき、日々の仕事に追われて消耗していたこときに何度助けられた

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魔法使いが落ちてきた夏(タカシ トシコ/理論社/1996.7.1)

小学生の頃に何気なく図書館で借りて面白い!って20年くらい経ってもその感覚が残ってる本。漫画とかラノベとか読んだことない頃だったから余計新鮮で刺激的だったのだと思う。日常が非日常になるファンタジー。こんなこと起こらないかなあと小学生だった私は妄想してた気がする。

そんなことを思い出していたたらどうしてもまた読みたくなって、ネットで探したら中古品があった。すばらしい時代だ。

そして、今読んでもや

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