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ブロックチェーンの実用化①

東京大学大学院工学系研究科「CO.NECTブロックチェーン学生起業家支援プログラム」の5期生に合格したため、今回は少しブロックチェーンについて話そうと思う。

ブロックチェーンで何ができるの?

ブロックチェーンで扱えるものは、仮想通貨だけではない。ブロックチェーンを実用化するにあたって、何に応用できるかまとめてみた。

地域通貨の活用

地域通貨の例として考えられるのは、地方銀行、商店街(商工会)、または地域の企業が発行したもので、その地域でのみ利用できる通貨である。企業通貨と同じように、発行元の信頼を担保に発行することになる。

地域通貨を発行する目的としては、地域振興や活性化、地域の雇用促進のケースが多く、その意味では地域振興券やプレミアム商品券といった施策と似ている。

しかし、地域振興券などは助成金や補助金を原資にした自治体などによる一時的な町おこし施策にとどまってしまうことが多いのが現状です。本来、地域通貨は助成金や補助金などを原資にするものではなく、継続的にお金が循環する仕組みを作り上げることが必要だ。

ある意味、GoToTravelキャンペーンの地域限定クーポンも地域通貨である。これは、インバウンド効果を狙ったものであろう。これをより循環させるためには、旅館に行った後、地域通貨を発行してまたその土地に足を運ばさせる仕組みを作れば良い。こういう風に考えれば、今のGoToToravelは地域活性化にもってこいの政策だとわかる。

さらに、地域生活者の雇用においても活用できる。ある企業が人材を集めたいときに、給与の先払いを提供できれば強力なアピールになる。この給与先払いの仕組みを仮想通貨の技術によって実現できるかもしれない。

証券分野への適用と課題

証券分野とブロックチェーンは非常に相性がいい。従来業務の多くを省力化できる可能性が高く、この分野はかなりレッドオーシャンになってくると容易に想像がつくだろう。

有価証券のように、財産上の権利や義務を表し、移転する性質を有する証券についてもブロックチェーン上に流通の基盤を構築するメリットがある。

ブロックチェーンを用いると転記業務がなくなり、証券業務を大幅に省力化できる。

中央証券取引所が扱うような高速取引が求められる分野への導入にはまだまだ課題が多いが、店頭取引のような相対取引(OTC)の場合には、十分実用に足る、現実味のある性能と機能を兼ね備えている。

現在、株式の店頭取引や、クラウドファンディング分野におけるブロックチェーン活用については、実用化が近い。

課題は、「法定通貨」での実現化である。法定通貨に関係する政府や日銀がブロックチェーン上に法定通貨を発行してくれるかどうかが大きなカギとなる。

もし、法定通貨がブロックチェーン上に発行されるということは想像以上に革新的なことだ。

なぜなら、デジタル的な価値の取引の DVP(Delivery Versus Payment:配達と支払いの同時履行)を確実に行えるようになるためだ。

文書の管理

証憑書類の保管・デジタル文書の真正性証明に活用することも可能である。

ブロックチェーンには大きく3つ特徴がある。「耐改ざん性」「存在証明性」「事実否認防止」である。これら特性を駆使できるのが「証憑書類の保管・デジタル文書の真正性証明」の分野となる。

通貨や証券では、その銘柄と数値という風に比較的サイズが小さいため、その権利の制御を直接記録することが可能だった。

しかし、証憑書類をスキャンした画像や、契約書などのデジタル文書をブロックチェーンに関連づけて、その真正性や存在性の証明を行うときは、そのハッシュ値(元になるデータから一定の計算手順により求められた固定長の値)のみをブロックチェーン上に記録し、本体データは分散ストレージなどに別途配置しておく必要がある。

ブロックチェーンの応用の幅を広げる分散ストレージ技術が今後期待される。

分散型ストレージはストレージ(データを長期間記録しておくための補助記憶装置)の一種類であり、ストレージ自体はパソコンやスマホなどにも内蔵されている。

分散型ストレージのメリットは、サーバーがないため情報流出のリスクは低くなる。現在の中央集権的なストレージにも分散型ストレージに対して優位な点はある。しかしこれらのリスクから、将来的に分散型ストレージが中央集権的なストレージに置き換わる可能性は十分ある。

ブロックチェーンは可用性と分断耐性に優れたシステムで、内部のデータは改ざんが困難である。しかし、金額的コストとファイルの書き換えができないという課題がある。

分散型ストレージはそのブロックチェーンの欠点を補うことができる。

ファイルそのものは分散型ストレージへ保存し、ファイルのハッシュ値をブロックチェーンに記録する。そうすることで、間接的にブロックチェーンをストレージとして利用することが可能になる。

この仕組みを「コンテントアドレス(コンテンツアドレス)」という。

この仕組みを用いることで、ブロックチェーンに収まりきらないデータをブロックチェーンに関連づけて評価できるようになる。

終わりに

コンテントアドレスは応用範囲が非常に広い手法であり、ブロックチェーンの可能性は未知数ということがここからわかるだろう。

今回紹介したのはわずか一部である。今後ブロックチェーンを応用してできることをどんどん紹介していきたいと思う。

参考文献

ブロックチェーンの欠点を補う!?「分散型ストレージ」とは?

一番やさしいブロックチェーンの教本

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