あらきん*弁護士

弁護士荒木優子(第二東京弁護士会所属) ほぼ毎日、Twitterで勤務医の労務に関する…

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弁護士荒木優子(第二東京弁護士会所属) ほぼ毎日、Twitterで勤務医の労務に関する情報をツイート。 https://twitter.com/arakin_1019 問合せ先↓ https://www.bengo4.com/tokyo/a_13101/l_202706/

最近の記事

雇われ院長の法的責任~開設者となるケース~

1.雇われ院長の2つのパターン こんにちは。弁護士のあらきん(@arakin_1019)こと荒木優子です。 以前、医療系の人材紹介会社を通じた転職で、勤務医のつもりが、クリニックの開設者になってしまったドクターのインタビュー記事を書きました。 いわゆる「雇われ院長」という形態でクリニックのオーナーが非医師の場合で診療所の開設者となってしまったケースです。 私は、診療所の開設者となる「雇われ院長」を「雇われていない雇われ院長」と呼んでいます。 記事を書いてから1年以上経過し

    • 【判例紹介】透析クリニックのスタッフの引き抜き、患者の勧誘が違法とされたケース

      1.はじめに こんにちは。弁護士のあらきんこと荒木優子です。今回は、Twitterで反響のあったクリニックのスタッフの引き抜きと患者の勧誘が違法と判断されて、損害賠償の支払いが命じられた裁判例を紹介します。 2.事案の概要 引き抜きにあった透析クリニックは、雇われ院長A、看護師13名、透析技師3名、事務長1名で構成されており、当時87名の患者が通院により人工透析の治療を受けていました。常勤医師は、雇われ院長Aの1名でした。 雇われ院長Aは、H6年4月から雇われ院長として雇用

      • ドクターのための労働法の勉強法

        1.はじめにこんにちは。あらきん(@arakin_1019)こと、弁護士の荒木優子です。 私が医師の労務問題について情報を発信すると、ドクターの皆様から、労働法を勉強したいのでお勧めの書籍などを教えてほしいというご質問をよくいただきます。 正直いうと、私の手持ちの書籍をお伝えしても必ずしもドクターの皆様に役立つとは限らないことと、医師の労務問題では頻出する宿日直やオンコールの問題などは、労働法分野ではやや特殊な問題で、労働法の基本書といわれる法学部生やロースクール生が勉強

        • 人材紹介会社経由の転職で大変な目に

          こんにちは。あらきん(@arakin_1019)こと弁護士の荒木優子です。 今回は、初めての転職を仲介会社を通して行い、大変な目に遭ってしまったドクターのお話をしたいと思います。ドクターのことをA先生と呼びます。 この記事の公開にあたっては、A先生ご本人の了解を得ており、自分と同じ目に遭わないように、他のドクターの参考にしてほしいとの言葉も頂いています。  A先生にインタビューした内容をまとめました。 1.転職の経緯A先生は医局を離れて初めての転職先を探すため医療系の

        雇われ院長の法的責任~開設者となるケース~

          労基申告マニュアル(暫定版)

          こんにちは。あらきん(@arakin_1019)こと弁護士の荒木優子です。 今回は、とにかく沢山働いているのに残業代(時間外手当)が一切支払われていないという勤務医のドクターの架空のケースを題材に、労基署にその違反の事実を申告にいくまでの流れについて説明したいと思います。 あくまで一例ですので、労基に相談に行かれるときには、事前に行く予定の労基署に電話で確認しておくことをお勧めします。 1.勤務医のドクターからの相談内容(あらきんが創作した架空の事例です) 雇用契約書で

          労基申告マニュアル(暫定版)

          大学病院勤務のドクターと労基署へ

          1.はじめにこんにちは。あらきん(@arakin_1019)こと弁護士の荒木優子です。 大学病院に勤務するドクターと労基署に労基法違反の事実を申告した結果、違反の事実が是正され、労働環境が改善したということを書きたいと思います。 もちろん、このnoteを作成するにあたっては、ドクターご本人の承諾を得ており、内容も確認いただいています。 2.事前準備労基署に行く前に、労基署に申告に行く内容を整理して、それを裏付ける資料(証拠)を準備することが有益です。 今回、私と一緒に

          大学病院勤務のドクターと労基署へ

          医師として働くのが辛くなったときの対処法

          こんにちは。あらきんこと弁護士の荒木優子です。Twitter:@arakin_1019 1.はじめに大学病院や市中病院で勤務する中で、長時間労働、職場の人間関係、ハラスメントなどによって働くのが辛くなるドクターも少なくないと思います。 特に、若いドクターの場合、初めての経験でどのように対応したら良いか分からない、周りに相談できる人がいない、先輩ドクターや同僚のドクターと比較してしまい更に自分を追い詰めてしまっている方もいらっしゃると思います。 アンケートで、「医師として

          医師として働くのが辛くなったときの対処法

          大学病院の医師はなぜ忙しい?

          1.診療業務だけではない。様々な業務医師の業務といえば、まず診療業務が思い浮かぶと思います。 私も約1年前までは、医師不足のために医師が診療業務に追われて、結果として長時間労働に繋がっていると考えていました。 しかしながら、特に大学病院に勤務する若手の医師からは、診療業務以外の大学病院や医局の雑務で忙しいという声を耳にしました。 2.アンケートの実施診療業務以外にどの様な業務があるのか、勤務医のドクターにアンケートを実施しました。 3.アンケートの結果(1)大学病院の

          大学病院の医師はなぜ忙しい?

          COVID-19が大学院生(いわゆる無給医)に与える影響

          1.いわゆる無給医問題 大学病院には、無給又は非常に低額な対価で患者の診療に従事する大学院生の医師(いわゆる無給医)がいます。  大学院生といっても、ボリュームゾーンは、概ね医師免許取得後、5年目~10年目前後で、専門医を取得している医師もおり、1人で診療やオペを行い、後輩医師の指導をすることができ、外勤アルバイト先では相応の報酬が支払われている、中堅医師です。  そのため、大学院生の診療は、研修や実習だから無給で良いということは当てはまらず、むしろ、大学院生が無給又は定

          COVID-19が大学院生(いわゆる無給医)に与える影響

          3月29日(日)急遽Zoomでセミナーを開催してみた感想

          1.ウェブセミナーに切り替えた経緯この1週間は、あまりに目まぐるしく状況が変化してついて行くのに必死でしたが、何とか予定通り「勤務医として知っておきたい労務のポイント」のセミナーを開催できてほっとしました。 ・3月22日(日)…東京都千代田区の事務所で開催する案内を送付 ・3月25日(水)夕方…都知事がコロナウイルスの感染者急増につき、週末の外出自粛を要請 ・3月26日(木)朝…オンライン配信することに切替えることを決める。 ・3月27日(金)…資料をgoogledr

          3月29日(日)急遽Zoomでセミナーを開催してみた感想

          若手医師のリアルな勤務実態(前編)

          1.はじめに 元々は、小児科医が0人となる危機に陥った丹波市にあった兵庫県立柏原病院※の2007年の小児科医の勤務実態をツイートしたところ多くの反響がありました。 ※兵庫県立柏原病院は、柏原赤十字病院と統合して2019年7月1日から兵庫県立丹波医療センターと丹波市健康センター“ミルネ”となっています。 一般の方からは、医師の過酷な勤務状況は過去の話であるとか、地方だけの話といったコメントもある一方で、医師の方からは自分の方がもっと働いているというコメントもあり様々な反応

          若手医師のリアルな勤務実態(前編)

          旧県立奈良病院事件(奈良地裁H31.4.25)

          1.事件の概要旧奈良県立病院(現奈良県総合医療センター)に勤務する2名の産婦人科医師が平成26年分の①宿日直勤務時間と②宅直当番に従事した時間分の残業代を病院に対し請求した事件です。 請求額と認容額は、以下のとおりです。 産婦人科医X1は、約648万円の未払残業代と、それと同額の付加金を病院に請求し、判決では、約206万円の残業代と約100万円の付加金の支払いが命じられました。 産婦人科医X2は、約1206万円の未払残業代、それと同額の付加金を病院に請求し、判決では、約

          旧県立奈良病院事件(奈良地裁H31.4.25)

          ハードな当直、それは夜勤です

          1.当直とは勤務医の先生のTwitterを見ていると、「当直室」や「当直飯」が話題になったり、当直中にひっきりなしに患者が救急車やwalk-inで来院することが話題になっているのを目にします。 また、常勤先の当直手当は数万円であるのに、外勤先のハードな当直の場合は10万円前後という差があることに疑問を感じたことは無いでしょうか。 ここで、当直に関する法律上の規定について見ていきましょう。 医療法16条「医業を行う病院の管理者は、病院に医師を宿直させなければならない」

          ハードな当直、それは夜勤です

          無給医をはじめとする大学病院の医師の待遇の解決への糸口

          無給医問題をはじめとする大学病院の勤務医の待遇についての解決策をTwitterで募ったところ、沢山の回答を頂いたのでご紹介します。 無給医からの訴訟が相次ぎ、全国の病院がそれに恐れをなすところまで行かないと、実行力はないのでは。 違法であるということはわかっていながら、何十年も放置されていたので、適法かどうかは最早経営者は気にしていないと思う。(医師1~9年目) 大学病院への受診制限(完全予約紹介制)、大学病院受診時の自己負担増(保険費適応、1回の外来受診1科あたり1万円

          無給医をはじめとする大学病院の医師の待遇の解決への糸口

          「無給医問題」の真の問題は、「労基法に従った待遇がされていな医」こと。

          1.無給医に関する報道 2018年10月、医療現場行為を行っているのにも関わらず給与が支給されていない医師(いわゆる「無給医」)が複数の大学院病院において存在する旨の報道がされた。文部科学省は、各大学に調査を指示し、2019年6月28日、調査結果が公表された。文部科学省が公表した調査結果は以下のリンク先。  「大学病院で診療に従事する教員等以外の医師・歯科医師に対する処遇に関する調査」の公表について 2.調査結果の内容(1) 調査対象者は、31801名 調査対象は、各公私

          「無給医問題」の真の問題は、「労基法に従った待遇がされていな医」こと。