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ドクターのための労働法の勉強法

1.はじめに

こんにちは。あらきん(@arakin_1019)こと、弁護士の荒木優子です。

私が医師の労務問題について情報を発信すると、ドクターの皆様から、労働法を勉強したいのでお勧めの書籍などを教えてほしいというご質問をよくいただきます。

正直いうと、私の手持ちの書籍をお伝えしても必ずしもドクターの皆様に役立つとは限らないことと、医師の労務問題では頻出する宿日直やオンコールの問題などは、労働法分野ではやや特殊な問題で、労働法の基本書といわれる法学部生やロースクール生が勉強する書籍には登場せず、基本書を勧めても結局、知りたい問題には辿りつけないのではないかとぐるぐる考えるうちに、何て答えてよいか分からずという状況になっていました。

今回、自分なりに考えをまとめてみようと思います。

2.ドクターのための労働法の勉強法

(1)勤務医のドクター

ⅰ 労働法の基本を勉強したい

著名な労働法の学者の水町先生が書かれた本で、労働法の歴史からはじまり、労働法の全体像、労働基準法、労働組合法、労使の紛争解決などひと通りのことが書かれていると思います。有名な判例を題材にした事例も書かれていますので判例をしるきっかけになると思います。

内容はもちろんですがお勧めのもう1つの理由は、Kindle版もあるのでスマホやタブレットで気軽に読める点です。ハードカバーですと結構な厚みですし、労働法の本を持ち歩くのはなかなかハードルが高いと思いますがKindleで購入すれば勤務医のドクターの先生でも手持ちの端末で気軽に読むことができると思います。

注意点として、勤務医の先生に頻出する宿日直の問題、オンコールの問題、自己研鑽の問題などは、書かれていなかったと思います。

ⅱ勤務医特有の労働問題について知りたい

残業代が一定額以上支払われない等、実際にご自身や周りの勤務医のドクターの待遇が労働基準法などの法律に違反していないか知りたい場合です。

こちらは、労働法や法律の知識に加えて経験など様々な要素が必要になりそうで、この書籍を読めば解決できますというものは思いつかないのですが、参考になりそうな情報を挙げていきたいと思います。

参考になりそうな判例や通達

・医療法人社団Y事件(最高裁平成29年7月7日判決)

医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意がされていたとしても,当該年俸の支払により時間外労働等に対する割増賃金が支払われたということはできないとされた事例

・旧県立奈良病院事件(奈良地方裁判所平成27年2月26日判決)

医師の宿日直勤務・宅直(オンコール)勤務の労働時間制について判示した貴重な裁判例

医師、看護師等の宿日直許可基準について(通達)

医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方について

残業代を自分で計算したい


給与第一という残業代計算ソフトを開発した弁護士が著者の書籍。

こちらの書籍を参考に給与第一という残業代計算ソフトを使用すれば、自力で残業代の計算も可能になるではと思います。

給与第一という残業代計算ソフトは、労働者が自身で残業代を計算するために無償で提供されているようです。検索するとすぐにみつけられると思います。


(2)開業医のドクター

雇用主の立場で、実際に直面する労務問題について、具体的な事例ごとにQA形式で記載されています。ややお高めの書籍ですが、QAが沢山載っていて、職場で労務問題がおきたときにまず参照する書籍としてお勧めです。

顧問社労士や顧問弁護士がいる場合には、揉めそうな場合は、早く一報を入れておくことが何より有益だと思います。


3.さいごに

いかがでしたでしょうか。ドクターの皆様から多く寄せられる質問に自分なりに回答してみました。参考になれば幸いです。

おわり

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