「無給医問題」の真の問題は、「労基法に従った待遇がされていな医」こと。

1.無給医に関する報道

 2018年10月、医療現場行為を行っているのにも関わらず給与が支給されていない医師(いわゆる「無給医」)が複数の大学院病院において存在する旨の報道がされた。文部科学省は、各大学に調査を指示し、2019年6月28日、調査結果が公表された。文部科学省が公表した調査結果は以下のリンク先。

 「大学病院で診療に従事する教員等以外の医師・歯科医師に対する処遇に関する調査」の公表について

2.調査結果の内容

(1) 調査対象者は、31801名

 調査対象は、各公私立大学附属病院(本院、99大学108附属病院)で、調査対象者は、2018年9月1日から30日の間で、大学病院で診療に従事した教員等以外の医師・歯科医師であり、常勤・非常勤、卒後年数を問わず対象となった。調査対象者は、31,801名である。なお、初期研修医は調査の対象外である。

(2) 報道された「無給医」の数は、2191名

 調査結果の公表後、無給医の数が、2191名(全体の7%)存在したという報道がされた。

・「無給医」2191人 国が公表(NHK NEWS WEB) 

・50大学病院で「無給医」2000人超 文科省調査(日本経済新聞)

(3) 2191名の問題に留まらない

今回調査対象者は、上記①~⑤の5つのカテゴリに分類された。無給医約2000人と報道されたのは、上記③「合理的な理由があるため、給与を支給していなかったが、・・・今後支給するとした者」と④「合理的な理由が無く給与を支給していなかったため・・・遡及も含め給与を支給するとした者」の合計である。

つまり、②「合理的な理由があるため・・・給与を支給していない者」3591名(11%)は、問題とされていない。大学は、「合理的な理由」として以下を挙げている。

・自己研鑽(最新の医療情報の収集、診療技術の向上等)、自己研究(自身の臨床研究推進等)等の目的で診療に従事している。

・大学病院とは別に本務先のある医師で、本務先の業務命令により研修として診療に従事しているため、大学病院での診療従事分も含めて、本務先から給与が支給されている。

 大学側が給与を支払わないことに合理的な理由があると述べているのみで、本当にそれが合理的な理由かどうかまで検証された形跡は伺われない。

(4) 給与が支給されている24,712人(78%)は、問題が無いのか?

 気づいている方も多いと思うが、今回の調査にあたって、質問の仕方が「有給医」か「無給医」かの2者択一の質問になっている。24,712人(78%)の医師に対して給与が支給されていることは分かるが、どれだけの労働時間に対してどれだけの給与が支払われたのかが、今回の調査からは分からない。

 更に、調査結果の中に気になる記載があった。

 「給与(謝金)を含む」

 「謝金」

「謝金」とは、何を指しているのだろうか。

「謝金」という書き方は、給与の支払いと評価できないような、少額の「謝金」を支払うことで「無給医」に該当することを免れている病院があることを伺わせる記載である。

 実際に、私が話を聞いた医師の中にも、月2~3万円でフルタイム(週40時間)働き、更に当直をこなしていたという医師がいた。

 さすがに2~3万円の支払いを「給与」とは言えないと考えたのか、「謝金」も含めた「給与」という新しい概念を作り出して、「無給医」のカテゴリに入るのを阻止しているようにしか思えない。

 給与が支給されているとされた、24712名のうち、実際に最低賃金法、労働基準法をはじめとする労働関係法令に沿った待遇の医師は何名いるのだろうか。

(5)雇用契約は25,230名(79%)が締結されているが、問題は無いのか。

 調査結果では、全体の79%にあたる25,230名については、雇用契約が締結されていたと公表している。

 こちらも雇用契約の「有」「無」のみを問題にするのでは無くて、実際の勤務状況にあった雇用契約が締結されているかどうかが重要であるのは当然である。しかしながら、勤務実態を反映した雇用契約が締結されているかどうかまで精査した形跡は伺われない。

3.大学院生から寄せられた声

(1)大学院生の労務管理

私がTwitterで実施したアンケートでは、約80%の大学院生がそもそもタイムカード等で労務管理がされていないという実態が明らかになった。また、タイムカードがあってもタイムカードに付けられる時間に上限がある大学院生もいることが明らかになった。

また、私のもとにはタイムカードはあるが暗黙の了解で大学院生はタイムカードは押させて貰えないという声も届いている。

大学病院がタイムカード等で大学院生の労働時間を管理して把握していないと、実労働時間数に応じた給与の支払いはできるはずがない。

(2)大学院生の労働実態

現在又は過去大学院生であった医師から寄せられた声

※個人や施設が特定されない形で情報発信等に利用させて頂くことの了解を得ており、情報は一部、加工・抽象化しています。


・アシスタント(TAなど)として雇用されると、月15~20万程度。しかし、全員が雇用されるわけでは無いので、教室内で内々に徴収されプールされ、他の大学院生の論文投稿費用や学会参加費等に充てられた。週1は外勤バイト可能でそれ以外は、当直以外は臨床免除。論文に目処がたつと臨床に呼び戻され、フルタイムで病棟、当直をを行ったが、当直のみ1回1万数千円の手当が支払われ、フルタイムの病棟勤務は無給。
・時給1500円前後、月10時間前後の契約であるが、実際はフルタイムで200時間超の勤務。しかしながら、月10時間を超えた勤務に対する時間外手当(残業代)は、一切支払われない。外勤バイト先での当直が月10回程度で、眠れなかった場合も翌日、大学病院で通常勤務があった。
・無給で週6日働き、外勤バイトは月1回行っていた。学費を支払っているのに研究に割ける時間が無かった。
・大学から月20万円前後貰えるが、研究はほとんど出来なかった。外勤バイトは月に5回程度。
・毎日深夜まで医局の仕事、研究をしているが無給。
・1~3年次は通常の病棟業務を行い、月数万円~10万円程度。1~3年次は研究はほぼできない。4~5年次にようやく研究中心。当直は、大学病院と外勤バイト先のものと併せて週1~2回。
・月130時間前後の勤務で大学からの給与は、月に2万円程度。別途当直あり。当直は1回1~2万円。
 ・月に半日の勤務で月に5万前後貰える契約であった。しかしながら実際は、週に6日の勤務。研究は、平日の夕方以降にしかできない。
・時給1,000円前後、時間に上限があり何時間働いても10数万円しか支払われない。別途、夜勤のようなハードな当直が月に3~4回、外勤バイトは月に10回前後。
・フルタイムで外来、病棟業務があり、更に当直もある。外来、病棟業務については無給。当直のみ1回あたり1万円程度の手当の支払いがあり月に数万円の支給。
・フルタイム勤務に近い働き方であるが、雇用契約では週2日しか勤務していないことになっている。
・月130時間前後の病棟勤務。労働契約の締結は無し。大学からの振り込みは、月額1万円前後。時給に換算すると100円以下。大学からの振り込みを超える医局費の支払いがあった。さらに別途、年間50万円前後の学費も支払ったていた。
・月300時間超の勤務で月2~3万円。更に月20回前後の外勤バイト。
・関連病院に出向させられ、週6日の病棟業務、週1日の外来業務で月10万円前後。その他に研修医や学生の指導も。月6回の外勤バイトで生計をたていた。ベッドフリーになるまでの約2年間は、研究に割ける時間も体力も無かった。
・大学院4年間のうち2年間はベッドフリーで研究ができるが、残りの2年間は病棟業務があり研究がほぼできない。病棟業務の時給は約1000円。眠れない当直が月3~4回。
・1年間は無給の期間があり、外勤バイトも週7日間のうち2日間しかできない。実家からの金銭的サポートが無いとなりたたなかった。
・研究はできず、病棟業務を命じられる。土日の外勤バイト先は自分で探している。
・時給は1500円前後で月約40時間が上限とされていたが、実際は、150時間前後は働いていた。100時間分は無給で働かされていた。
・フルタイムで病棟勤務さらに週1回程度の当直をこなして月に1万円以下の支払い。
・月100時間前後の病棟勤務で無給。主治医制で頻繁に呼び出されたため、研究の妨げになった。
・月10時間前後しか働いていない計算で1万円程度の支払い。実際は100時間程度働いていた。
・月20万円程度、ハードな当直は週に1回以上あり救急業務に従事したが、1万円程度の当直手当のみ。4年間のうち研究に従事できる期間を1年間与えられる予定だったが大学の都合で与えられなかった。
・最初は、病院に泊り込みでの病棟業務で無給かつ研究もできない。その後も外来業務等で日中に研究はできなかった。夜間も週に2~3回は当直アルバイトをしていた。アルバイト先への移動中に居眠り運転で事故をおこした先輩医師がいた。
・時給1000円未満で週3~4日勤務。眠れない当直バイトの後、そのまま出勤。

中には、研究時間が確保されている大学病院もあった。

・労働条件(労働時間、休日、当直の回数)や給与等の待遇は、常勤の勤務医と同様。研究は、病棟の仕事が免除され、研究日や研究に専念できる期間が与えられた。
・時給1000円前後で月に5時間前後の勤務。週に30時間以上は研究に時間を割くことができた。外勤バイトを月に10回前後。
・時給1000円前後で月に10時間前後の勤務。外勤バイトを月に10回前後。

(3)無給医問題に対して寄せられた大学院生の声

・無給医だけでなく、「半給医」や「1/3給医」も取り締まってほしい。
・実際に病院に業務を行った対価を支払うのは当然。学費を支払っているのに研究時間を奪うような雑用を押し付けるのは問題。
・大学病院は、「臨床」と「教育」と「研究」が仕事となっているが、それを分けるべき。
・奴隷
・医療が崩壊するかもしれないという話にすり替えて、無給医がタダ働きさせられた。
・給与が支払われるようになったとしても「半給医」~「1/4給医」だと思う。
・大学院を卒業して医員になっても看護師や技師よりも低い給与(月20万円程度)しか貰えない。
・大学院生であっても他の医師と同様に臨床業務をさせる以上、社会保険に加入してほしい。
・無給医の存在は、優秀な医師の損失につながると思う。
・市中病院に勤務していたときと業務量や責任は変わらないのに、対価が1/5程度に下がるのは、モチベーションの維持が辛くなるときがある。
・大学院生は無給では無かったが専攻医のときは無給であった。
・無給医問題だけでなく、医師の働き方改革の問題など、勤務医の労務問題が広く認知されてほしい。
・リスクが高く専門的な業務をしているのに待遇が悪いと割に合わない。
・無給医問題は許されるべきではない。病院側の搾取する意図が透けて見える。
・大学院生の研究時間をきちんと確保してほしい。
・自身は大学院生としての環境に恵まれていたが、無給医問題は悪しき慣習の一つであり、これを機に是正されてほしい。
・病状的に最も重症で時間も医療資源も割かれているポジションなのに薄給過ぎる。
・時給100円に満たない謝金を支払って「無給医0」と回答していることに憤りを感じている。

 このような悲惨な実態があるにも関わらず、これまで明らかにならなかったのは、大学院生は、医局の中で弱い立場で、声をあげることができなかったからである。

4 無給医問題の真の問題点

(1)労働基準法をはじめとする労働関係法令に従った待遇がされていない

〈最低賃金以下の待遇〉

最低賃金法第4条第1項 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。

 参考までに、現在(2019年7月1日時点)の東京都の最低賃金は985円。各都道府県の最低賃金は以下の厚労省のウェブサイトで確認できる。

 必ずチェック最低賃金

 高額な給与の支払いを受けているイメージのある医師が、最低賃金以下で働いている実態があるということは、すぐには信じられないかもしれない。しかしながら、実際に、月数万円から多くても10数万円の給与で、300時間前後の病院業務を強いられている大学院生の医師がいる。その医師の時間単価(時給)は100円~500円である。

 大学病院の医師が最低賃金で働くことの是非は別として、現状、最低賃金以下で労働を強いられているという実態がある。

 〈外勤バイトで稼げばいい?〉

 医師は、外勤バイトで稼げるから大学病院からの給与は最低賃金以下でも問題無いという意見があるかもしれない。

 しかしながら、大学院生も大学病院の指揮命令の下に、常勤医と変わらない病院業務に従事しているという労働実態がある以上、大学病院は、大学院生に対しても、労働基準法をはじめとする労働関係法令を遵守する義務があることは言うまでも無い。

 労基法を遵守していない者が「他で稼げばいい」というのは、全く通用しない言い訳である。

 〈労働時間の管理がされていない〉

 更に、大学院生に対して病院業務をさせ、更に外勤バイトを余儀なくさせるということは、長時間労働の点でも問題がある。

 労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有している。

 大学病院も大学院生の労働時間を把握する義務を負っている。

 しかしながら、大学院生については、先ほど紹介したアンケート結果や私が直接大学院生から話を聞いた内容では、タイムカード等で労働時間が管理されていないケースが多い。

 大学院生はタイムカードを押させて貰えないという暗黙の了解があるという声も寄せられた。

 大学病院が大学院生の労働時間を管理して把握していないと過労死基準を超える時間の労働をしていても気づかない。

 先程、外勤バイトを除いた病院業務だけで、月300時間前後の労働をしている医師も少なくないという話をした。これは、時間外労働時間(残業時間)だけみるとおおよそ130時間前後になる。

 参考までに過労死基準は、発症前2~6か月間平均で80時間の時間外労働、発症1か月前に100時間を超える時間外労働であるから、過労死基準を優に超える労働を強いられている。

 これに加えて、外勤バイトと研究をするのが、私の元によせられた大学院生の実情である。

 繰り返しになるが、大学病院の業務だけで過労死基準を超える時間外労働をして、更に生活のために外勤バイトをし、残りの時間で研究を余儀なくされるというのが大学院生の実態である。

 アンケートでは、外勤バイト先に車を運転して向かう途中に事故を起こした先輩医師がいたという声も寄せられた。

 2003年に徹夜の緊急手術に参加した後に外勤バイト先に向かう途中に居眠り運転による交通事故で無くなった大学院生(無給医)もいた。地方はもちろん、都心であっても外勤先は地方の病院という場合もあり、自家用車での移動を余儀なくされるケースも少なくないという。

 生活が出来ないような少額の給与や謝金で、大学院生を病院業務に長時間拘束することの弊害は大きいと思う。

〈雇用契約の内容と労働時間の実態が合っていない〉

 アンケートや直接情報提供して下さった大学院生の中には、雇用契約で定められた所定労働日・労働時間と実際の労働時間にあまりにも乖離がある方が散見された。

 雇用契約では、非常勤で週1回~3日の勤務日数で週の労働時間は数時間~10数時間程度と定められているのに、実態は月100時間超~300時間前後のフルタイム勤務である。

 形式上は、非常勤の契約であり、所定労働時間や労働日が少なく規定されているため、形式的には雇用保険や社会保険の加入条件を満たさず加入していないと考えられる。

 雇用保険の加入条件                        ①所定労働時間(休憩時間を除く労働時間)が1週間で20時間以上    ②雇用見込みが31日以上ある
 社会保険の加入条件                        ①雇用の見込みが2ヶ月以上ある
②労働時間が正社員の4分の3以上ある

(2) 大学院生なのに研究時間が確保できない

 そもそも大学院生は、「研究」を行うために大学に学費を支払って大学院に入学している。

 しなしながら、大学院生の多くは、大学病院の他の(大学院生ではない)医師と同様に外来、病棟、当直業務を行い、無給又は数万円~10数万円の定額の給与しか得られないために、外勤バイトを余儀なくされ、大学院生であるのに研究をする時間も体力も残っていないという医師もいる。

 「研究」をしたいという高い志を有する医師が研究が出来ないほどに働かされている実態は、医療の発展にマイナスであると思う。大学院生だけの問題では無く、患者サイドにとっても不利益につながるのである。

 このような月300時間前後の大学病院での勤務が4年間続く大学院生もいれば、年次によって研究の時間が取れる年と病院業務と外勤バイトに追われる年と分かれている大学院生もいる。

 今回の調査ではそのような実態は明らかになっていない。

(3) 大学院生は「研修中の身」という意見に対して

 先述した2003年に大学院生が外勤バイト先に向かう途中に居眠り運転による交通事故で亡くなったケースの裁判では、大学側は大学院生の診療は、診療「演習」、当直は、当直「演習」、手術は、手術「演習」、更に第三助手として参加した緊急手術は、「見学」と主張した。

 そもそも、大学院生よりも研修の要素が強い研修医であっても最高裁判所の判例で労働者性が肯定されている(関西医科大研修医事件・最二小判平17.6.3)。

 アンケートや直接話を聞いた大学院生は、1人で診療を任され、高度な治療を行い、後輩の医局員、研修医、医学部生の指導も行っていた。また、常勤医と同様に外来の担当等のシフトに組み込まれている。大学病院の重要な戦力として診療業務にあたっている。

(4) 私 見

 ここからは、私個人の意見である。

 私が話を聞いたのは、30代~20代の若手の医師が大半である。今の管理職的立場にある上の世代の医師が、大学院生のときは、それこそ真の無給で、数万円の手当すら貰えないのが当たり前だったかもしれない。今、数万円~10数万円の給与(謝金)が貰えているだけマシだと思っているかもしれない。

 しかしながら、30代、20代の世代、年代が若くなればなるほど、労働条件や労働環境についてはシビアに考えているように感じる。長時間働くのはやむを得ないが、「定額働かせ放題」では働きたくない、当直時間帯を含む時間外労働については時間外手当を労基法に従って支払ってほしいと考えている医師が世代が若くなるほど増えていると思う。

 また、先行きが不透明な今の時代、若い時に大学病院に奉仕しても、将来的にリターンがあるかどうかという保証もない。実際に、無給労働をしたのにあることがきっかけで学位も専門医も潰されてしまったという声も届いた。

 労基法に従った待遇を求めるのは、たとえ医師であっても労働者として当然のことである。

 いま働いた分の対価は、いま貰うのは当然である。将来、無給で働いた労働を上回るリターンがあるかどうかは分からない。

 これから労働環境や労働条件を重視する医師は増えていくと思う。若い世代ほど労務に関する関心が高いと思う。

 そして、少ないながらも労働環境を改善した病院、大学院生にきちんと研究の時間を確保している病院もある。

 今後は、労働環境や研究環境に恵まれた病院に医師が集まり、医師を極限まで働かせて酷使する病院は、たとえ有名大学でも避けられる可能性があると思う。

(5)  最後に

 今回の調査結果を踏まえた対応として、大学院生に対してわずかな手当を支給することにより「無給医」問題を終結させてほしくない。

 問題は「無給」かどうかではなく「労基法に従った待遇がされていな医」や大学院生なのに「研究できな医」がいること。

 労基法に従った待遇がなされ、生計が維持できる給与が支払われ、大学院生が研究に専念できるような環境が整備されるように改善されることを望む。

 最後に、アンケートや個別に勇気をもって情報提供して下さった現在又は過去大学院生であった医師、忙しい中医療用語等について教えて下さった医師に感謝します。

 最後まで読んで下さりありがとうございました。

5 7/7補足 無給医問題解決の糸口

(1)社会問題として解決が必要

 個々の大学院生を救済するには、労基法を適用した待遇を求める、未払の賃金等を請求をすることはできる。このようなことができる医師は、ごくごく一部である。

 ほとんどの大学院生は、大学病院(医局)に対して声を挙げることはできないのが現実である。私の元にも、医局が怖くて医局に異を唱えることを考えることすらできないという声が複数届いている。異を唱えない医師は、過労死基準を優に超える労働をし、更に外勤バイト、研究もしていて、いつ倒れてもおかしくない現状がある。

 このような優秀で向上心の高い、医師を酷使して、万一、働けなくなってしまったら、日本の医療にとっても損失ではないだろうか。

 大学院生は、市中病院の勤務医レベルの高い給与を求めているのではない。生活できる水準の給与を求めている。結婚してお子さんもいて家族を養っている大学院生もいる。

 先述した2003年に大学病院での徹夜の緊急手術から外勤バイト先に向かう途中で居眠り運転による交通事故で亡くなった大学院生は、月30万円を稼ぐために外勤バイトをしていた。時給1000円程度支払っていれば、それ位の収入は得られたのではないだろうか。


(2)寄せられた声

・医師の名義貸しから含めて、本来あるべき配置数が実態として不足しているのを官民挙げて誤魔化してきたのが遠因。一つ誤魔化す為に医局の人事支配という労働者斡旋に関わる不正についても誤魔化す必要に。
 現状を肯定して少しずつ改善する常識的対応では生ぬるい。現状否定、現状評価(足りない事に正直に、名義貸しも不足に数える)からはじめる。
 せめてこれ以上医師が死ぬ前に、HIV感染同様に、雇用の自由に制限課してILO111号条約を批准出来る国内環境作りを司法も協力して欲しい。
 勤務医の過労死は戦後直ぐ始まっています。例)昭和20年代にある県の結核療養所医師が立ち去りサボタージュで孤立して100名越える入院患者対応で過労死。昔からみて見ぬ振りが真面目な医師の使命感を利用しているんです。(医師 20年目以上)
・大病院が高度医療と研究の双方を行っており、大学院生など本来研究に従事すべき医師が臨床業務に低賃金で忙殺されてしまうという状況と解釈している。ただ、日本の保険診療が現状の低価格、アクセス良好、それなりに高品質の3つの要素を保ったままこの問題を解決するのは実際のところ困難のように思う。医療に対するアクセス制限を設けて臨床医の仕事量を減らす、もしくはコメディカルやパラメディカルに対してタスクシフトを進めて医師がするべき業務を分散させるなどは現実的かもしれない。もしくは医療費の患者負担を上昇させて、保険点数を上げるなど(おそらく無理だと思うが)。日本の政治が大学予算や医療費の抑制政策を続けていく以上、現状の医療体制を維持したままこの問題を解決する手段は残念ながら思い浮かばない。(医師 10~19年目)
・医療経営コンサルにて経営状況を把握してた経験から言えば、大学病院における本件は、看護職の給与(ボーナス)を数万円単位で減らすだけで大きく解決に向かう。
看護職は職員の約50%占めており病院経営幹部に厚遇を受けている状態。これは手当だけでなく働き方や手技等も。
事実、診療報酬においての寄与率と還元率の関係性が大学病院の医師を遥かに超えている。
ただし需要供給にて給料が決まる側面から考えると致し方ない点もある。しかしその側面で論述すると医師も少ないが、労基法や労基署が味方せず、モラハラや専門医取得しないといけないなどの無駄な競争環境から搾取し続けられた結果、数十年前の看護職の政治的運動を発端に現在まで優遇を許してしまってると考えられてます。
極論を言えば、保険点数が足りない。(医療経営コンサル)
・まずは世間一般が医師も労働者であることを認識することが大切。労働に対する対価は支払われるべきであり、勉強のため、将来のためといった言葉で無給または低給与で働くことを当然としてきたこれまでの慣例を完全に排除することが大切。(大学院生)
・医学部の教員と付属病院勤務医の分離(兼務不可)と付属病院の診療報酬の引き上げ(医師 10~19年目)
・看護師、パラメディカルの業務を拡大する(医師 10~19年目)
・根本的には、大学病院における医師の仕事内容の改善が必要。大学院生が臨床を手伝わなければならない診療体制に問題がある。(医師 10~19年目)
・研究も仕事とみなした上で完全に出来高制の給料体制にし、さして仕事をしていないのに時給が高い人物を職種問わず解雇すれば良いと思う。(医師 1~9年目)
・急性期病院の集約化で総ての診療科で常勤専門医の交替勤務制による24時間対応体制を整える…そのためには、原則、急性期病院は2000床規模にする。(医師 20年目以上)
・大学院生としての時期と病棟業務や外来業務などの医師としての仕事をする時期を完全に分離する。
 ①医師として仕事をする時期:(肩書き上、院生ではない時期)は、現行の無給医・低給医制度を廃止して仕事量に見合った給与を支払わう。外病院などの外勤は+αの収入で考えられるレベルまでには病院から給与を支払せる。(外勤しないと生活できないレベルの病院給与は言語道断) 
 ②大学院生としての時期:あくまで「学生」の立場として、臨床業務からは完全に離れる。(研究としてのデータ収集として臨床に関わる場合はその限りでは無いが、臨床業務に責任を持たせない)この時期はあくまで「学生」なので、病院からの収入は最悪なし・所属・入局しているという意味で現行程度の収入で構わない。外勤先からの給与も含めて生活できるようにする。外勤のバイトは切れないが、研究する日数が現行より圧倒的に増えるので、研究により集中できる(1週間のうち4〜5日は研究、1〜3日を外勤など)
(医師 1~9年目)
・医者の最低時給1万円以上(バイトの一般的な相場)を義務にする。サービス残業が発覚した場合は院長、事務長に刑事罰を科す。(医師 1~9年目)
・保険医療費を増やす、大学を自由診療にする。(医師 10~19年目)
・診療報酬の抜本的な改正。まず大学が儲からないと給料払えない。女性医師の離職問題を含めた人員不足の改善。(医師 10~19年目)
・医師の仕事を全体として減らすなど、全てにおいて現在が異常だという認識を高める。(医師 1~9年目)
・労働基準法に関して勉強会やメーリングリストなどで周知する。(医師 10~19年目)


(3)最後に

追加のアンケートや個別の情報提供ありがとうございました。司法に対する厳しい意見もいただきました。無給医問題をわずかな手当を支払って終わりということは絶対に避けたいです。一過性の問題にせずに、引き続き、色々な形で問題提起や情報発信していきます。

                         (あらき ゆうこ)



 










いただいたサポートはアイス代になります🍨