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【公認心理師が解説】 「信じると裏切られる。だから最初から信じない」 という心のメカニズム

歳をとると、どんどん月日が流れるように過ぎていきます。

先日、分子生物学者の本を読んでいると、
この時間感覚のことが書いてありました。

「新陳代謝速度が加齢とともに確実に遅くなる。つまり、体内時計は徐々にゆっくりとなる」
 (引用/福島信一 動的平衡 p44)。

感覚はゆっくりなのですが、
実際は現実はいつもと同じスピードのまま、、、、。
なるほど、だから私には、時間が早く過ぎ去っていくように感じる、、、。
あ、これも実は錯覚なのですね。

この記事では、「人を信じるのが怖い」という心のメカニズムと、心理的錯覚についてお伝えします。

裏切られることを学習する


「人を信じること、、、、。

う〜ん。
また裏切られるじゃないかと、
心の奥で信じきれていない私がいるんです。
 
でも、好きな人ができるとやっぱり信じたい。
けど、信じることが怖いの。

私、どうしたらいいのでしょうか」

このように、
人を信じることが怖くなっている方の多くは、

信じる → 裏切られる
信じる → 信じてよかった
信じる → 裏切られる
信じる → 裏切られる
信じる → 裏切られる
信じる → 信じてよかった
信じる → 裏切られる
信じる → 裏切られる

このように、
信じるという行為の繰返しの中、

「信じたとしても裏切られる可能性が高いんだ」

ということを学習してしまったのです。


痛みを避ける3つの方法


そしてその可能性の中に大きな痛みが伴っている場合は、
次に《信じる》ことにまつわる何かが起こった時、
とっさに、裏切られた後に感じる《激しい痛みのほう》に注視してしまい、
それを避けるためにはどうしたらいいかと考え始めます。

例えば、
何度も浮気をした彼をそれでも《信じたい》と思っても、
《信じたのに裏切られた時の「痛み」》の方が重要と考え、
それを避けるためには
どうしたいかという考えの方にエネルギーを注ぎます。

痛みを避けるための選択としては、

1 本当に信じることができる人(事、物)を探す
2 信じる「きる」ことをしないようにする
3 最初から信じない。(正確にはふりをする)

と、大きく分けるとこの3つに絞られてきます。

(心を鍛えるとかは、早めの段階で選択肢から消えていきます)


単純なケースで説明すると、
友達が「このおまんじゅうは美味しいから買って食べてみて!」と言ったとき、痛み(美味しくなくてがっかりする)を避けるため、


1 自分の味の好みとぴったりな美食家を探しその人の意見をきく。
2 信じて買って食べるけど、
  美味しくなかった時のがっかりを味わいたくないので、
  「あんまり期待しない」という自分をあらかじめ作っておく。
3 買わない。
 (がっかりする可能性が少しでもあるなら、本当は買いたいけど最初から買わない)

この場合の信じるは、
《おまんじゅうが美味しい》を信じることと、
《薦めてくれた人》を信じることの2つがあります。


ではこの場合はどうでしょう。

彼が浮気性で「もう絶対に浮気はしません」と言ったとき、
痛み(私は愛されていないんだと傷つく)を避けるため、

1 その彼とは別れて絶対浮気しない人を探す。
2 浮気はしないということを信じるけど、
  もしもの時を考え100%は信じないようにておく。
3 浮気をしないという彼の宣言を信じない。というか全く信じないフリをする。
  (男なんて浮気をするものよと、最初から浮気をしない宣言を信じないでおけば、信じた後に落ちるより楽だと考える)

この場合も、
《浮気をしない》という行為を信じることと、
《浮気をしないと言った彼を》を信じることの2つがあります。


多くの人は、
現状を維持する方がストレスが少ないと考えてしまうので、
違う選択をする1を選ぶのは難しく、
痛みを避けるためには2か3を選択するようになります。


この、

《信じたいけど、
 信じた後に裏切られる痛みを考えてしまい、
 それを避けるための行動を選択してしまう傾向》は、

実は、小さい頃の経験から作られた
記憶と学習パターンが大きく影響をしています。

信じることが怖くなる原因


小さい頃に、
信じることが怖くなる原因としては、

1 親との関係
2 大人(権力者)との関係
3 友達との関係

があります。
それぞれをみていきましょう。


【親との関係】


言動に一貫性がない親に育てられた場合。

例えば、好きなものを食べていいと言いながら、
選んだアイククリームを「お腹を壊すからダメだ」とか、
「もっとまともなものを選べ」とか、
ディズニーランドに連れて行ってくれるって言ったのに、
「いつ行くの?」と聞いても、
「今は忙しい」「今度ね」とか言われてしまい、
期待しても、その期待はいつも叶わない。

などです。

【大人(権力者)との関係】


権力でコントロールしようとしている大人から学んだ場合。

権力者は親も含みます。
例えば、先生の命令通りに動かないと成績を下げられたり、
「正直に言いなさい」と言われたので正直に話したら、
先生は味方になってくれるどころか悪者扱いにされたり、
親の場合なら、
「誰が金を払ってるんだ!!!」と、
生存の恐怖を煽って子供をコントロールしている。

などです。

【子供との関係】


いじめなどを受けた場合。

いじめを受けている状態でも
そのグループから出るという選択は子供には難しく、
「仲良しだと思っている子はいじめなんてしない」と思いながら、
いじめで怖い嫌な経験をしたことがある。

などです。


このように、
小さい頃は、痛みを与える、
親、権力者、友だちという環境から離れることは難しく、
また、この痛みを与える人たちのことは
「好き」という気持ちも持っており、


好き = でも痛みがある = でも逃げられない。


この状態の中で、どうやったら、
少しでもこの痛みを避けることができるのかと、
いろんなパターンを考えます。

そして先ほど説明した、

1 本当に信じることができる人(事、物)を探す
2 信じる「きる」ことをしないようにする
3 最初から信じない。(正確にはふりをする)

この3つに集約され、
難しい1は切り捨てられ、2と3を選択することとなるのです。

こうやって、ショックを和らげるために、

《最初から低くしておく、低め安定な私》

が出来上がります。


過去の傷から生まれる心の錯覚


ここで非常に重要なのが、

【本当は信じたい】

が、基本な気持ちであることです。


本当は信じたいんだけど、
心の傷から学んでしまった信じるパターンは、
心のメガネのようなものになり、
大人へ新しい道のりを歩むときでさえ、
このメガネのからの視点の方を
優勢に見てしまうようになります。

新しい可能性で見ることもできるのに、
メガネに合わせて「どうせ裏切られるでしょ」と、
低め安定でいる方が
もしもの時はショックが和らぐんだと、
自己防衛として心の奥で持ち続けることとなります。

そして実際裏切られたら、
メガネに合わせて
「やっぱりそうだったじゃん」と言って、
ショックは軽減されたと思いながら、
自己防衛のメガネはどんどん強化されてしまうのです。

でもそれは、
【本当は信じたい】からこその心の綱引だったのです。



この記事のテーマ、
【信じると裏切られる。だから最初から信じない】

これも、実は心理的錯覚です。

しかし、何度も、
痛みという身体感覚を伴いながら強化していきますので、
錯覚ではあるのですが、
当の本人にはリアルなんです。

反応で《過去の傷から選んだ昔のパターン》で、
見て、感じてしまうが、
今の現実からすると錯覚なのかもしれないのです。


このように、
小さい頃に傷ついた心の傷が、
大人の行動に影響を与えることを、

インナーチャイルド

と言います。


インナーチャイルドが錯覚している、
痛みを避けるために選んだ、
行動パターン、認知パターン、セルフイメージのパターンが
潜在意識に深く刷り込まれています。

錯覚で今の世の中をみて感じるのではなく、
一旦そのメガネを外して、
本来のあなた自身の目で世界を見てみませんか?

過去から作られた心のパターンという心のメガネが
その解決の鍵を握っていることでしょう。

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