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パワポ中毒コンサルタントの蔓延を憂う
戦略コンサルタントのアップルです。
先日、漫画の作り方とコンサルのアウトプットの作り方はとてもよく似ているという記事を書きました。両者ともストーリーやアウトプットの骨格を作る段階では手書き(漫画の場合は鉛筆で、コンサルの場合はホワイトボードやノートにペンで)を使い、清書していく段階で漫画ならペンを、コンサルならパワポを使っていきます。
ただ、こういうセオリーとも言うべき動き方ができていないコンサルタントが昨今散見されます。いつもパワポを触ってしまう「パワポ中毒者」です。
パワポ中毒者は一昔と比べて確実に増加しています。パワポというツールがそれだけ普及したとも言えますが、ことコンサルティングファームにおいては、パワポ中毒者は害でしかないです。業界生産性を下げている一つの象徴的な現象ともいえるんじゃないかと考えています。
今回の記事では、パワポ中毒者はなぜダメなのか、なぜパワポ中毒者は中毒から抜けられないのか、といった点について書いてみます。
これから戦略ファームに飛び込むことを考えていらっしゃる方にとっても結構大事な話なので、ぜひご覧ください。
パワポ中毒者 ≒ できないコンサルタント
アップルは長年いろんなコンサルタントをみてきましたが、パフォーマンスがパッとしないコンサルタントほど、上流工程での手書きを軽視する傾向があると感じています。
会議室に一人こもりホワイトボードに向き合って色々と書きなぐっている。
ノートだけを机に広げ、ペンで色々と書きなぐっている。
こういう動きをしているコンサルタントは、大概仕事ができます。一方で、
ずっとPCに向き合っている。何をやっているのか知らないが非常に長時間デスクにはりついている。
レビューや社内ディスカッションの際、アウトプットの初期段階なのに必ずパワポが出てくる(まだ清書する段階ではないのに、、、)。
こういうコンサルタントは、大概仕事ができません。
ちょうど、同じようなことを、経営コンサルタントのブロガーの方(小暮隆さん(仮名))が書いていらっしゃいました。
タイトルに「パワポの出番は最後の最後」とあるように、中身をしっかり詰めてから、満を持してパワポに落とすべきと説いています。これには強く同意します。
小暮氏も指摘するように、メッセージが浅いスライド、コンテンツの示唆が弱いスライドを作っても、戦略コンサルティングでは一切役に立ちません。そんなものはとてもお客さんに出せないからです。そのレベルのものは出すより出さない方がましです(出すとレピュテーションリスクになる)。
したがって、そういうスライドは、没になるか、マネージャーが大幅に作り変えるかのどちらかになります。
つまり戦略ファームにおいてクオリティの低いスライドを作ることは、かなり大きな「悪」なのです。サンクコストと追加コストをともに発生させてしまうからです。
・そのコンサルタントがクオリティの低いスライドを作った時間が無駄になる(サンクコストの発生)
・マネージャーのリカバリーが発生し、マネージャーの時間とリソースを不必要に使う(追加コストの発生)
こうしたサンクコスト/追加コストを回避するために、手書きを駆使することはとても大事です。
・手書きを駆使して、インプットした情報とそこから得られる示唆を徹底的に考え抜く。書いては考え、書いては考え、を繰り返す。
・手書きを駆使して、パワポを開く前に、個々のスライドで伝えるメッセージとそれを伝えるために最適なスライド表現の骨格を固める。
一見遠回りに見えますが、このやり方が質の高いアウトプットへの近道だと断言できます。
ついついすぐパワポを触ろうとしてしまう人は、次のことを頭に叩き込んでおくとよいでしょう。
「最初から万年筆で漫画を描き始める漫画家がいるか?いやそんな漫画家はいないよな」
なぜパワポ中毒者は中毒から抜けられないのか?
上記のようなことをアップルはファームに入社して間もない新人などに言うことがしばしばあります。それで改善する人もいれば、一向に改善しない(やり方が変わらない)人もいます。
パワポ中毒が抜けない人は、何が原因でそうなっているのでしょうか?
この点については、アップルも正直完全にはわかっていませんが、最大の要因は、仕事のアウトプットに対する責任感が弱い点にあるのじゃないかと考えています。
限られた時間の中で高いアウトプットを出すためのHowを教えられ、それを頭では理解しても、行動に移さない。これは結局のところ「限られた時間の中でアウトプットの質をなんとしてでも最大化しよう」というマインドが弱いからだと思います。
こういうマインドの問題は、根本的なものなので、なかなか変わりません。こういう人とはともに高いクオリティのものを目指せないので、アップルは徐々に距離を置くようにしています(これはプロフェッショナルファームとして当たり前のこと)。
コロナがさらにパワポ中毒者を増やす可能性
とこのように、パワポという便利なツールが普及した結果、パワポ中毒者が増えてしまっているわけですが、アップルが懸念するのは、ウィズ・アフターコロナではさらに中毒者が増えてしまうのではないかという懸念です。
アップルが所属するファームもそうですが、コンサルティング業界も現在はかなり在宅ワークが浸透していると思います。社内のミーティングも各自が自宅からオンラインで参加し、オンラインでディスカッションするやり方が中心になっています。コロナ収束後も「社内ミーティングのオンライン化」は一定の割合で残るでしょう。
ミーティングはF2Fが当たり前というこれまでの常識は完全に崩れます。
さて、オンライン社内MTGの問題点は、ホワイトボードが使えない点です。コンサルティングファームのF2Fの社内MTGでは、マネージャーやコンサルタントが適宜ホワイトボードに文字や絵を描きながら進めます。議論内容をリアルタイムにホワイトボードに可視化することで、議論が進化するとともに、メンバーでのコンセンサスが作られていきます。
また、F2Fであれば、会議前に手書きで作ったポンチ絵や構造図などをコピーして紙で配ることも容易にできます。アップルもコンサルタント時代は会議の直前に書き上げた手書きの”スライドもどき”数枚で社内MTGを乗り切ったことが多々ありました笑。
こうしたことが、オンラインになると(技術的にやる方法はあるとは思いますが)基本的にかなりやりづらくなります。
実際、コロナ以降、社内MTGでのパワポ使用率がさらに高まったと感じています。メンバーのコンサルタントが、社内MTGなのにわざわざパワポに落としてzoomに共有し、説明する。このスタイルが強まりました。
パワポは非常に便利なツールで、だからこそこれだけ普及したのだと思いますが、一方で便利だからこそ思考の弊害になるという側面があります。つまり諸刃の剣です。
パワポもあくまで一つの道具。道具は使い方を間違えば害になる。
ウィズ・アフターコロナでも、これを心得ておくことが、特にコンサルタント初心者の人にとっては大事だと思います。
今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!
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