戦略ファームの提供価値進化の系譜
戦略コンサルタントのアップルです。
今回はやや久々に戦略コンサルの仕事ど真ん中のことを書きます。
戦略コンサルティングサービスの価値の進化についてです。
戦略コンサルというサービスは昔からさほど変わっていない印象をお持ちかもしれません。
「知恵を絞って戦略を策定してくれるんでしょ?」
とこれくらいのイメージで捉えていらっしゃる方も多いと思います。
ですが、実は近年、戦略ファームのサービス内容や価値の付け方、プロジェクト運営、コンサルタントに必要なスキルセットは結構大きく変わってきています。その点について何回かにわたってご紹介していこうと思います。
主な想定読者は以下です。
<想定読者>
・戦略ファームの志望者
・戦略コンサルティング業界に興味のある方
・より広く、頭脳労働をされている方
第1回は、戦略ファームのサービスの変化についてお話します。
私がこの業界に入った数年前に比べても、クライアントのニーズやそれに対し我々が提供するサービスは変化しています。そこを具体的にお話します。
戦略コンサルティングサービスの進化
結論から言うと、戦略コンサルの価値の付け方は3段階で進化してきており、現在は②から③への過渡期という印象です。
①戦略策定
②実行支援
③イネーブラー
①は戦略の絵を描く支援で、戦略ファームのルーツともいえるサービスです。これは引き続き今も根強いニーズとして存在しています。
次に出現したのが②実行支援です。たとえいい戦略を描けたとしても、それが実行されなければ「絵に描いた餅」になります。実行の壁になる要因はいくつかありますが、そのうちの一つが実行力の欠如です。例えば新規事業の戦略だと、そもそもクライアントに新規事業をやった経験がほとんどなくて、何から手を付けてどう進めたらよいかわからないというケースがあります。その実行力の補完を戦略ファームが担うのが実行支援です。
長らく、戦略策定と実行支援をセットで請け負うのが戦略ファームの勝ちパターンでした。というのも、戦略策定だけだとプロジェクトの期間が3~4ヶ月と短く、太くフィーが取れないからです。これに実行支援を加えることで1年~数年の長期支援となり、売上が巨大化/安定化します。
ただ、この「戦略策定+実行支援」というモデル、戦略ファームにとっては都合のいいモデルですが、クライアントの目線に立つと必ずしもそうでもありません。なぜなら「コンサル依存度」が高まるからです。
戦略ファームを起用したときの戦略・実行はうまくいくかもしれませんが、ひとたび戦略ファームが離れると自分たちだけではうまくできないということになりかねません。すなわち、「再現性」が担保されないのです。
そうした中、近年新たなニーズとして高まってきているのが③イネーブラーです。イネーブラーとは、耳慣れない言葉かもしれませんが、日本語に訳すと「できるようにする」という意味です。
これまでは戦略ファームが請け負っていたようなこと、つまり、戦略策定やその実行をクライアント自らが力強くできるようにしていくところを支援するということです。
具体的にどのような支援になのか?8割方は「人材育成」になります。クライアント側にメンバーを明確にアサインしてもらい、そのメンバーの人たちと一緒に戦略を作ったりすることで、メンバーの人たちができるようにしていく。二人三脚でアウトプットを作りながら人材を育てていくという支援スキームになります。
このイネーブラーは、うまくいけばものすごくバリューがでます。実際に一緒にいい戦略を作り上げたり、人材が成長すると、クライアントの高い満足が得られます。
一方で、プロジェクト運営は、難しい側面もあります。若手のコンサルタントでもクライアントのメンバーを育成しないといけないので、その分ストレッチする必要があるからです。自分でやるのと、他人にやってもらうのを方向付け・リードするのとでは、圧倒的に後者の方が難しいです。
さて、戦略ファームのサービスは、このように3段階で進化してきました。この進化は、前掲のポンチ絵の中にも記載の通り、クライアントに対して提供するアウトプットが本質的に変わってきたとも言えます。
①戦略策定 ⇒ アウトプットは「戦略」
②実行支援 ⇒ アウトプットは「戦略実行」
③イネーブラー ⇒ アウトプットは「戦略実行の再現性」
戦略を描いて提言しておしまいというレベルと、戦略実行の再現性を持たせるところまでもっていくというレベルとの間には、非常に大きなギャップがあります。このように、一見そんなに変化していないようにみえる戦略コンサルティング業界もサービス内容や成果物を大きく変化させているのです。
次回予告
このように戦略ファームの価値の付け方が変化するのに伴い、プロジェクトの進め方や、戦略コンサルタントに求められるスキルセットも変わってきます。このあたりについては次回の記事でお話したいと思います!
特に、戦略コンサルタントに求められるスキルセットの変化は、頭脳労働者全般にある程度共通する変化ではないかとアップルは考えています。そういう意味で、頭を使って価値を出す仕事をしている方全般に示唆があると思いますので、ぜひご期待ください!
最後までお読みいただきありがとうございました!
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