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戦略ファームが扱うテーマの多様性

戦略コンサルタントのアップルです。

戦略ファームと一口にいっても、実に多種多様なテーマがあります。近年では企業の経営課題やニーズも多様化しているので、ピュアな戦略ではないテーマのプロジェクトも増えてきています。

また、戦略ファームがデジタル領域に進出するなど、戦略系と総合系の境界線もあいまいになってきています。

つまり、戦略ファームが扱うテーマは以前よりも多様化しています。

その結果、
・各テーマの難易度
・各テーマで求められるケイパビリティ(能力)

も多様化しています。

そこで、本記事では、
・戦略ファーム志望者
・戦略ファームを使う側の事業会社の方
を読者として想定の上、どんなテーマが全体としてあるのか、どれが難しくてどれが難しくないのかということを記しておきます。

戦略ファームが扱うテーマの種別

アップルが思いつくだけでも、戦略ファームのテーマは10種類くらいはあります。以下、列記してみましょう。

①全社戦略
中期経営計画の土台となる全社戦略を策定するもの。事業ポートフォリオの概念が入ってくる。

②事業戦略
ある事業の戦略を立案・策定するもの。最も多いテーマのひとつかも。

③新規事業立案
既存事業がじり貧の中で、新規事業を新たに起こしていかないといけないという問題意識の会社は増えてきています。戦略ファームの知恵を結集して新規事業を提案するというプロジェクト。

④マーケティング・営業戦略
売り方の改革や、効果的なリソース配分(選択と集中)を検討するもの。

⑤シナリオプランニング
クライアントを取り巻く事業環境などについて、未来のシナリオを描き、それに基づいて長期的な戦略の方向性を策定するもの。

⑥組織改革・組織づくり
戦略にとどまらず、その実行を担保するための組織にメスを入れていくもの。最近ではイノベーション組織を新たに作るようなニーズも増えてきている。

⑦構造改革
事業や組織がかなりうまくいっていないときに発生するテーマ。構造を改革するというくらいなので、課題の根っこ(真因)をしっかりと特定し、そこに対する効果的な打ち手を検討する。

⑧業務改革・業務改善
ある一部の業務領域(営業、生産、バックオフィス、等)に絞って、その効率化を促すための策を打つもの。デジタルトランスフォーメーションの検討もこのカテゴリに入る。

⑨コスト削減
コスト構造を可視化し、どこにコストの無駄があるのかを特定し、コスト削減策(調達先業者のスイッチ等)を図るもの。

⑩ビジネスDD
ある事業や会社のビジネスを徹底的に分析するプロジェクト。ファンドが買収しようとしている会社を対象に、ファンドからフィーをもらって行うケースが多い。

⑪調査
クライアントがひとまず何らかの領域(主に業界)で調査をしたいときに発生するもの。野村総研などのシンクタンクが得意なテーマだが、戦略ファームが請け負うケースもある。


こんな感じでしょうか。合計11種類です。
細かいのを入れると、もう少しあるかもしれませんが、9割以上のプロジェクトはどの戦略ファームでもこの11種類のどれかに当てはまると思います。

このように、戦略ファームと一口に言っても、全社戦略や事業戦略ばかりをやっているわけでは全然ないのです。中には、「え、それって戦略って言えるの?」というテーマもあります。

テーマのマッピング

このように様々なテーマがありますが、テーマによって難易度やどのような能力が求められるかはかなりばらつきがあります。ここでは、

・難易度:アウトプットを出す難しさ。難しいほど再現性が低く、易しいほど再現性が高い(=型にしやすい)と言える
・価値の出し方:発想的か分析的か。右脳が求められるか左脳が求められるかという言い方もできる

の2つの軸で、上記の11テーマの位置づけをマッピングしてみましょう。

マッピングの結果が、次図になります。

note貼り付け用

このマッピングは、アップルの経験に基づく主観が入っているので、人によっては「このテーマの位置はここじゃない」というご意見もあるかと思いますが、概ねこんな分布をしているイメージです。

なぜこういうマッピングになるのか、この図の見方を縦軸方向、横軸方向それぞれで解説をします。

【縦軸:難易度】

上に行けばいくほど、難易度は高くなります。新規事業立案やシナリオプランニング、また大企業の本質課題にメスを入れる構造改革は難易度が高く、コンサルタント初心者がこの手のプロジェクトにアサインされるとなかなかバリューを出せず苦労することになります。

一方、下に行けばいくほど難易度は低くなります。ビジネスDD、業務改革、コスト削減などは、課題も特定しやすい傾向にありますし、コンサルティングの「ひな型」のようなものもあるので、難易度としては低めになります。某ファームにはコスト削減の報告資料の基本パッケージ(=ひな型、フォーマット)まであると聞いたことがあります。

【横軸:分析的(左脳)⇔発想的(右脳)】

右にいくほど右脳が求められます。最たるものが新規事業立案で、愚直に分析をすれば面白い新規事業が出てくるというわけではありません。当然、立案するにあたって3C分析などのベースの分析は行いますが、

・いろんなビジネスモデルの知識
・最新のテクノロジーの動向
・クライアントが属する業界以外で出てきている面白い事業
・ビジネスモデル設計のノウハウ

など、様々な知識、情報、ノウハウを総合し、クライアントと議論やブレストをしながら深めていくことで、初めて面白く実効性ある新規事業が定義できます。

以前、地頭とは何かを論じた記事の中で「発想力は知識や情報がベースになる」ということを書きましたが、まさにその辺が求められます。

シナリオプランニングも、不確実性がある中で未来を予想することがベースとなり、未来像を描くプロセスは発想力が求められます。

図の真ん中あたり、左脳と右脳のバランスが求められるのが事業戦略やマーケ・営業戦略です。左脳的分析(課題分析や3C分析)が土台となりつつも、そこに右脳的な発想を加えて面白さを出していきます。

左の方は、左脳的、つまりロジカルシンキングや定量分析で答えを出していく世界です。左脳を駆使していかに本質的な課題やイシューにたどりつけるかがポイントになります。

この図を斜めにみると、、

このマップを斜めにみたとき、右上に行くほど難易度が高くて発想的、すなわち再現化や形式知化が難しい領域になります。職人技の世界です。

一方で左下にいくほど型にはめやすいです。型通りにやることでコンサル経験の浅い人材でもバリューが出しやすいです。また、型にはめやすいので量産化しやすい(似たようなPJを売りまくることができる)一方、コモディティ化するので値崩れが起きやすいという側面もあります。

マッピング2

ちなみに、今後、コンサルティングの仕事も部分的にAIなどの機械に置き換えられていく可能性がありますが、おそらく左下の領域からじわじわと機械化が進んでいくと思われます。

踏まえ、戦略コンサルタントとして長く食っていくためには、右上の職人技の領域を手掛けておくことが大事なんじゃないかと勝手に考えております。


今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!

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