コンサルの資料の作り方は漫画と同じ ~共通点から窺えるアウトプットのセオリー~
戦略コンサルタントのアップルです。
戦略コンサルティングに限らず、ビジネスにおいてはドキュメントを作成してアウトプットすることを日常的にします。
アップルは長年の戦略コンサルティングの仕事を通じた得た「資料作りのセオリー」についての持論を持っており、メンバーに対しその点について指導・アドバイスすることもしばしばあります。
もちろん、資料作成のやり方は、唯一の正解があるわけではありません。スピーディーに質の高い資料が作れるなら、その人なりのどんなやり方でもいいと思います。
ですが、これまでのアップルの経験上、またいろんな同僚の資料作成のプロセスを観察する中で、セオリーとも言うべき最大公約数はあります。
で、最近、それは漫画家が漫画をつくるプロセスと非常に似ているということに気づきました。
今回の記事では、両者のアウトプットの作成プロセス、それらの共通点から窺えることについて論じてみたいと思います。
漫画の作り方の4工程
読者の中に漫画家の方は多分いらっしゃらないと思いますが、漫画家がテレビドラマに出てくることはあります。また、漫画好きの方は、日々お気に入りの漫画や雑誌を読んでいるでしょう。
漫画を作る工程は、次の通りです。
①ストーリーを考える
②ネームを描く
③ペン入れをする
④仕上げる
順に説明しましょう。
①ストーリーを考える
漫画というのは、言うまでもなく「お話」であり「ストーリー」です。これを考えなければ筆は進みません。
ストーリーというのは、
・ロングストーリー
・ショートストーリー
の両方があります。
(若い人は詳しくなさそうですが)ドラゴンボールを例にとって説明しましょう。
主人公の孫悟空が、亀仙人のもと修行を重ね天下一武道会で勝ち抜くことを目指し、大人になっていく。大人になると、ベジータやピッコロなどの宇宙人の襲来に見舞われ、それらの強い敵と戦う中でさらに成長していく。ついには、ナメック星という地球からはるかかなたの星へ行き、そこでサイヤ人のプライドをかけた戦いが繰り広げられる。
ストーリーに通底するのがタイトルにある「ドラゴンボール」。これを集め、願いをかなえることが、敵も味方も共通の目的になっている。
こういうのがロングストーリーです。鳥山明さんも連載当初からこうしたロングストーリーをどこまで想定していたかはわかりませんが、漫画の作者は先まで見据えた長い時間軸でのストーリーを考えています。
一方で「毎回の連載をどういうお話にするか」というのがショートストーリーです。ドラゴンボールでいうと、「今回の連載でナメック星における孫悟空とフリーザとの戦闘シーンをどう面白く描くか」というような話です。次のような名セリフ・名シーンをどこにどう入れ込んで”パンチ”を出すかということも考慮する必要があります。
参考:孫悟空がスーパーサイヤ人になった瞬間の名シーン
このように、ストーリーにはロングとショートの両方がありますが、いずれにせよこのストーリーメイキングが漫画というコンテンツの出発点です。
②ネームを描く
ストーリーが出来たらネームです。
ネームというのはいわば下書きで、コマ割りと、各コマに書き込む絵柄を大雑把に描いたものになります。鉛筆で手書きで描くのが一般的です。
ネームの例(出典はこちら)
③ペン入れをする
ネームが出来たら、いよいよインクでペン入れをしていきます。いよいよ漫画がカタチになっていきます。
売れっ子の先生ともなればペン入れはスタッフと分担して進めます。キャラクターAをペン入れする担当、キャラクターBをペン入れする担当、風景をペン入れする担当、・・といった感じで分業しながら進めます。
④仕上げる
ペン入れが終わったら、いよいよ仕上げです。下書きの鉛筆の線を消しゴムで消したり、スクリーントーンで陰影をつけたり、細かなところを修正したりと、いよいよ雑誌や単行本に耐え得るクオリティへと細部まで含めて仕上げられていくわけです。
コンサルのアウトプットの4工程
さて、漫画の工程は上記の通りですが、コンサルのアウトプットの作り方も非常によく似ています。漫画を作る工程とコンサルの資料作成の工程を対比してみたのが、次の図です。
作家⇔スタッフ
の役割分担と、
マネージャー⇔メンバー(コンサルタント)
の役割分担まで酷似しています。
<コンサルの資料作成の4工程>
①ストーリーを考える
コンサルの資料作りでもストーリーが起点になるのは漫画と全く同様です。誰かがストーリーを作らないと資料作成は一向に進みません。
で、コンサルティングファームではそのミッションをプロジェクトリーダーやマネージャーが担っています。プロジェクトの実行責任者が自ら筆をとってストーリーを書き上げるわけです。
・クライアントのニーズ(知りたいこと)
・お話の分かりやすさ
・どこで山場にもっていくか
こんなようなことを考えながら、マネージャーは知恵を絞ってストーリーを書きます。ストーリーの書き方は様々です。アップルもそうですが、
・頭でストーリーを組み立て、口頭でメンバーを伝える
・紙に手書きでストーリーラインを箇条書きで書き下す
・Wordにストーリーラインを打ち込む
の3つの手法をその時々で使い分けています。
②空パックを作り、スライド手書きでデザインする
空パックというのは、コンサル用語かもしれませんが、パワポのヘッドラインにタイトルやメッセージだけが入ったパワポ資料のことを言います。
ストーリーラインをパワポにひとまず落としたようなものと言えばいいでしょうか。漫画でいうと「コマ割り」に相当するものです。30シーンで構成されるストーリーであれば、パワポのスライドも30枚になります。
これを作るところまでは、指揮官であるマネージャーの役割です。
空パックができあがると、個々のスライド作成に取り掛かります。
ここからはプロジェクトメンバー総動員で役割分担をしながら進めます。
スピーディーに資料を完成させる上でポイントになるのが「いきなりパワポで作らない」という点です。パワポで清書する前に、いったん手書きで書くのが、「急がば回れ」で結果的にスピードがアップします。
③パワポでスライドを清書する
漫画のペン入れに相当する工程です。手書きでスライドの構成や書き込む内容を大まかに定めたら、あとはパワポに落とすだけです。
手書きで作ったものを見ながら、見栄えの良さも考慮しながらきれいに表現していきます。
④仕上げる
晴れて30枚のスライドが埋まったらいよいよ仕上げです。
ここでまたマネージャーにお鉢が戻ってきます。
メンバーが書いたスライドが分かりにくかったり、雑な部分があれば、そこを念入りに修正していきます。クライアントに見せても問題ないレベルへとプロ意識を持ちながら徹底的にブラッシュアップします。
両者の類似から窺えるセオリー
以上漫画の作成工程とコンサルの資料の作成工程を対比しながらみてきました。とてもよく似ていることがお分かりいただけたのではないかと思います。
これらの共通点から窺えることは3点あります。
①クリエイティブな仕事には共通セオリーあり
両者が似ているのは、漫画もコンサルもクリエイティブな仕事だからです。
漫画だろうが、小説だろうが、絵画だろうが、作曲だろうが、デザインであろうが、戦略コンサルであろうが、クリエイティブな営みには共通するアウトプットのセオリーがあるということをあらわしているように思います。
②アナログとデジタルのベストミックスが大事
漫画とコンサルの共通点として示唆深いのが「アナログとデジタルのベストミックス」という点です。
漫画もコンサルも、アウトプットの上流工程は手書きが中心です。アナログなやり方でアウトラインを作った後にパワポなどのデジタルツールできれいに仕上げていくという流れは共通しています。
昨今デジタルが流行りですが、ことクリエイティブな営みにおいては、
・手書き(手を動かしながら頭を動かす)
・対面でのブレスト(口を動かしながら頭を動かす)
といったアナログ要素がとても大事であるということは見落としてはいけないような気がします。アナログもデジタルもそれぞれ最適な場所で使い分ける。デジタルリテラシーも去ることながら「アナデジ使い分けリテラシー」が大事なんじゃないかという気がします。
③「集約」と「分担」の使い分けがポイント
漫画でもコンサルでも、司令塔となる人材(作者、マネージャー)が一手に引き受けるべき工程と、チームで分担すべき工程に分かれます。これらを熟知した上でうまくハンドリングすることが、チームをリードする人材には求められるでしょう。
今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!
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