シンガポールのApple Storeはなぜ球体なのか
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シンガポールに新しいApple Storeがオープンしました。今回は、水上に浮いた球体のような外観となっています。
土地がないなら水上に作ればいいじゃないのということでしょうか。あとは空中に浮いたApple Storeが出るのを待つばかりですね。
外観については、中秋節の提灯がモチーフではないかという指摘もありました。たしかに、縦横に延びる骨組みの組み合わせは提灯の骨組みにそっくりです。
ただ、Appleにその意図はないようで、水面に浮かぶ球体をモチーフとしているという説明しかありません。見たままですね。
デザインの理由
Storeの外観は真球をモチーフにしています。真球は真円という基本的な幾何学図形を基にして作られているので、ミニマルでAppleらしい図形です。
もっとも今回の場合、別に円柱とかもあり得たわけです。そうであるにもかかわらず、真球が用いられているのはなぜかを考えてみましょう。
これは、水上に存在しているということに関係していると思われます。
水上に円柱を設置しても浮いているように見えませんが、真球であれば浮いているように見えるのです。
円柱の場合、浮いているというよりも、突き出しているように見えるはずです。柱状の物体を水に浮かべても、ぐらつくか、横に倒れてしまうはずだからです。安定して水上に建っているということは、水底に突き刺さっている可能性が高いわけです。
真球は安定しているので、水上に設置すれば浮いているように見えます。
突き刺さっていてもいいじゃないかと言われそうですが、水に浮いているのと、水に突き刺さっているのとでは、前者の方が魅力的なのではないでしょうか。
その他の設計
さて、実際の店舗の話に戻りたいと思います。
球体といっても、実際に完全な球体を作るのはむずかしいので、角度をつけた輪っか状のガラスを積層して球体に近いかたちにしているようです。
オープン前のカバーつきの時点ではちょっと表面のガタつきが目立ちましたが、カバーを取ってガラスだけにするとそれほど目立ちませんね。
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反射の具合によっては分割線が見える場合もあるようですが。
さて、設計上は縦方向の10本の骨組みで構造を支えているとのことで、横方向の骨組みに見えるのは、ひさしのようです。Appleにしてはやたら骨組みが多いなと思っていたのですが、骨組みではなかったようです。
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外からの写真だと、ひさしが視界を遮っているよう見えますが、実際は利用客の視線を邪魔しないようになっています。写真だと建物が小さく見えますが、実際はかなりの大きさです。
この規模にもかかわらず、地上1階(地下1階)という設計は大胆ですよね。
それにしても非常に眺めの良いStoreです。
心地の良い場所には人が集まりやすいので、近年の他のStore同様に、公共空間的な性質を持たせることを意図していることが読み取れます。
以下はプレスリリースの一部をDeepL翻訳版。
全体を水に囲まれたApple Marina Bay Sandsでは、シンガポールの街とその壮大なスカイラインを360度のパノラマビューでお楽しみいただけます。この球体は、114枚のガラスで構成された完全自立型のドーム構造で、構造的な接続のために10枚の細い垂直方向のマルチオンのみで構成されています。Appleのシンガポールでの3店舗目となるこの新店舗は、お客さまにとって忘れられない空間を演出します。
商品展示用のテーブルの基本的なかたちは他のStoreのものと変わりませんが、それぞれのテーブルにライトが設置されているのはこのStoreだけかもしれません。天井が高いので、照明の光が足りなくなるのを補うためでしょう。
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少し前にオープンしたタイのApple Storeにはエレベーターがありましたが、今回はエスカレーターが追加されたようです。
一般的なエスカレーターと基本的な形状は変わりませんが、要素が削ぎ落とされているので、建築全体と統一感がありますね。
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エスカレーターを降りると地下にも商品の陳列がされています。
おそらく隣接するショッピングモールとつながっていると思われます。
また、地下にはほかのStoreと同様に、商談室があるようです。
世界初の水中ボードルームとのことで、もしかすると水中の景色が見えたりするのでしょうか。
また、天井には採光のために円形の穴が設けられています。ローマのパンテオンの造形を引用しているとのこと。
プレスリリースの記載は以下のとおり(DeepL翻訳版)。
ローマのパンテオンにインスパイアされたドームの頂点にあるオカルスが、空間を行き交う光の洪水を提供しています。
というわけでシンガポールのApple Storeのデザインの話でした。今回も細部まで作り込まれた店舗でワクワクしますね。
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