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異端iMac G4のデザインを考える(2)〜大福型の本体の意義とは〜

この記事の続編です。たぶんこれで終わりです。

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今回考えたいのは、本体のデザインです。
大福と呼ばれたりする部分ですね。

半円の回転体

球体を半分に切った形状をしています。分類としては半円(もしくは4分した円)の回転体ですね。

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上部に近づくにつれて、すぼまっていて、手に持つと滑り落ちそうな形状です。手に持って使う製品ではなく、一定の場所に置いたまま使うものなので掴みにくい形状になっているのでしょう。

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底面はエッジがわずかに丸みを帯びていて、一応、持ち上げる際に指をかけられるようになっています。
この部分は通気口になっていて、本体の冷却に使われています。一つの要素が複数の機能を持っているAppleらしいデザインです。

アームとの関係

本体部分がこのような円形のシルエットになっている理由は、またしても、iMac G4の特徴的なアームと関係しています。

前回の記事(1)でお話ししたとおり、iMac G4の最大の特徴は、自由自在に動くアームです。

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このアームは縦軸で左右に180度回転します(無制限に回転しないのは、ディスクトレーやポートの位置の関係で設置する向きが決まっているからでしょう)。

このような構造の場合では、アームを左右に動かしたとき、本体が半円の回転体以外の場合、ディスプレイが本体にぶつかってしまう可能性があります。


そして何より、アームを動かすことでシルエットが変化してしまいます。

例えば本体の部分が立方体だったりすると、見る角度によって、普通の立方体にも、ひし形の立体にも見えます。回転させただけなので、実際の形状は変わっていないのですが、形状によって見る者に与える印象は変わってしまいます。

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そこで、ディスプレイの回転軸と、本体の回転体としての軸をそろえることで、アームを動かしても見た目が変化しない形状にしたわけです。


全体の構成

iMac G4の形状は、半円の回転体と板状の部品を球体を引き延ばした棒状の部品でつないだだけですから、非常にミニマルです。全体的に丸みを帯びているのであまり意識されませんが、1世代前のiMac G3が比較的有機的な形状であったことからすると、方向性がだいぶ変化しています。

方向性としては、バウハウスに所属していたデザイナーのマリアンネ・ブラント(Marianne Brandt)が作ったポットに近いですよね。要素を幾何学的形態に還元してしまうやり方です。

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iMac G4とやっていることはそれほど変わらないのですが、印象はかなり違いますよね。素材の使い分けやディテールの情報量、エッジの処理の違いが、違いを生み出しているのだと思います。


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