AppleのARデバイス開発ストーリーはリアルだが、創作でもおかしくはない
Appleが開発を進めていると噂の「Apple Glass」(通称です)について、ジョナサン・アイブのApple社内におけるやりとりが報じられています(以下、引用は上記サイトからのものです)。
ウェアラブル製品としては前代未聞のグラフィックスと処理速度を備えた超強力なシステムだったものの、熱を発生するためヘッドセット内部には収められなかったとのこと。そこでロックウェル氏のチームは小型のMacのような固定式ハブとのセットで製品化を計画する一方で、ヘッドセット単体でも低消費電力の独立モードでも動作するようにしていたと述べられています。
しかしアイブ氏は据え置き型のハブが必要になることに難色を示し、デバイス単体で完結する、それほど強力ではないスペックとしてN301を再開発するように推奨。これに対してロックウェル氏は無線ハブさえあれば他社の競合製品すべてが吹き飛ぶほど優れた性能を実現できると主張して反発し、膠着状態は何ヶ月も続いたとのことです。
この話はいかにもな話です。
技術面を盛大にアピールし続けたMagic Leap 1は製品の小型化に苦労し、最終的には本体デバイスを腰にぶら下げなければならないデバイスになりました。
https://youtu.be/gxkWMtLh7aY
表示される映像のクオリティは、当初宣伝していたほど凄くはないようですが、それでも最初に映像の凄さをアピールしていたので、デバイス本体の小型さよりも映像のクオリティを重視せざるをえなかったのだと思います。
Apple社内でも、技術面を重視する開発者が外付けの本体デバイスを用意してでも映像のクオリティにこだわっていたという話は、Magic Leap 1の開発経過を見れば納得の話です。
そうやって製品をダメにしてしまうというのは、よくある話。
また、据え置きのときと携帯のときで、映像の品質に差を設けるという方式だったと書かれていますが、一度ハイクオリティを体感したユーザーが低クオリティの映像で満足できるはずはないので、かなり危ないやり方です。
これに対してジョナサン・アイブが単体で完結するデバイスを求めたというのも納得です。
ARデバイスの本質は、その名前のとおり、拡張された現実です。あくまで現実の延長として、そこに有益な情報やコンテンツが追加されることで、生活を豊かにすることができるのではないかと考えています。
AppleはVRには興味がないようですが、人の日常と完全に切り離されたVRをジョナサン・アイブが好んでいないというのが理由のようです。VRシステムは他のメーカーに任せておけばいい(VRのジャンルでApplegやりたいことがない)ということなのでしょう。
動作時間が極端に短かったり、デバイスが大きすぎたりすると、ARデバイスの本質的な体験を阻害します。デバイスが単一で完結しないことも同じです。
いくらハイクオリティな映像が実現できるとしても、据え置きのデバイスとつながっていては屋内でしか利用できないですし、身体に装着できるとしても邪魔なことには変わりがありません。
いまだギーク向け(もしくは特定の業務向け)のデバイスでしかないARデバイスを普及させるには、ユーザー体験を邪魔する要素をいかに取り除くかが大事になります。
本質的な体験を邪魔しないようなデザインを考えてきたジョナサン・アイブが反対するのも道理です。
もう1つはメガネ型のARデバイスで開発コード名は「N421」。現在のプロトタイプは「バッテリーとチップを収納する分厚いフレーム」を備えた高価なサングラスに似ており、アップルを退社したアイヴ氏はこちらのコンセプトを好んだとのことです。
そりゃそうだよなという話。
とはいえ、この話、情報として特に意外な情報が含まれてないんですよね。開発中のデバイスも、予想外のデバイスは出てこないですし。ジョナサン・アイブの言動も意外性がない(ブレブレの発言してたらそれはそれで信用できないわけですが)。
本当だとしても昔の話で、今の開発状況とは全然違うような気がするのですが、いかがでしょうか。
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