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Apple製品の基本形はiPodからiPhoneでどのように変化したのかを考える

Apple製品はどれも非常にシンプルで、多くのデバイスは基本的な幾何学的図形に還元できます。
ですから、製品のデザインを考える上では、その製品の元になっている形状(基本形)は何なのかを考えると有益です。

今回は、iPodとiPhoneのデザインを検討して、Apple製品における基本形のあり方の変化を考えてみたいと思います。

iPod(第1世代)

最初に登場したiPodは、スクリーンとホイールの並んだ平面に厚みを与えた形状でした。

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しかし、開発過程に注目すると、形の意味は変化します。
バッテリーやハードディスクドライブ、そのほかの内部コンポーネントを1つにまとめた結果、このシルエットになったと言われています。

初代のiPodはエンジニア主導であったため、デバイスの形状がデザインコンセプトから始まっているわけではないのです。

ここでは、デバイスの形状を理由づけているのは、部品の形状です。製品の基本形を観念することはできますが、製品のコンセプトとしての基本形は存在していませんでした。

iPod mini

この後、iPod miniが登場しました。

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このモデルでは、押出成形という製造方法を用いて、アルミニウムを筒状に形成して筐体を作るようになりました。iPod(第1世代)のモナカ形状と異なり、デバイスの表面と背面が一体となっています。

かわりにデバイスの上下を別パーツで塞いでいます。
物理的な分割線と、面と面が接して生じる辺が一致しているので、分割線の存在を意識させず、シンプルな印象を与えます。

製造方法を考慮すると、デバイスは、陸上競技に用いられるトラックのような底面に高さを与えたものとしてとらえることができます。

幅を与えるのではなく、高さを与えているのは、持ちやすさの問題でしょう。あえてエッジの効いた面を手に当たる部分に持ってくる理由はありません。

ここでは、新しく採用された製造方法がデバイスの形状を理由づけています。


iPhone

そしてiPhoneです。

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iPhoneはタッチパネルの技術から始まった製品で、長方形のディスプレイを基本に、そこに厚みを持たせたデザインです。

デバイスとしての形状はデザインチーム主導で作られました。2007年に発表されて以来、様々な製造方法を用いて、コンセプトに忠実な製品を作ろうとしてきました。

iPod(第1世代)との比較で考えると、基本形の捉え方は同じですが、ただ事実としてそういう形状になっている、というだけでなく、デザインコンセプトという実態が伴うようになったのが大きな変化です。

余談:Apple TVのリモコン

Apple TVのリモコンのデザインの変化を見ると、ここでみたiPodからiPhoneに至るデザイン手法の変化が表れています。

最初のリモコンでは形状が完全にiPodです。製造はポリカーボネートの押出形成かもしれません。

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その後は、iPodのデザインからは脱却し始めましたが、楕円形の底面に高さを持たせた基本形は変わりません。

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最新のものはタッチ操作を取り入れ、形状も表面と裏面の組み合わせからなり、iPhoneに近い基本形となりました。

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というわけで、iPodとiPhoneのデザインを検討して、Apple製品における基本形のあり方の変化を考えてみました。

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