青柳 まさのり

2008年にメキシコで惣菜デリ・デリカミツを妻と当時3歳の長男と開業しました。 202…

青柳 まさのり

2008年にメキシコで惣菜デリ・デリカミツを妻と当時3歳の長男と開業しました。 2020年10月 デリカミツ代表を引退し、飲食コンサルなどをやりながら、2021年3月から広島にプチ移住中。 飲食店でのマネジメント・コンサルをしながら再び海外で日本食の魅力を伝える為に準備中。

マガジン

  • −地球の裏の惣菜日記−

    2008年に地球の裏側、メキシコで開業した ”惣菜屋”の波乱万丈物語。 ビザ取得から開業、そして非日常的な人間模様を綴ろうと思います。 これを読むとちょっとだけ強くなれる気がする。備忘録。

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日本食を世界へ

初めまして青柳正則と申します。これからnoteに海外での生活・飲食店開業・経営の日々の話や、毎日ありえない事が起こる海外生活で得た楽しく生きるコツなんかを綴っていきたいと思います。 2008年4月に突如、日本から見れば地球の裏側、メキシコにある世界遺産の街グァナファトの路地裏で妻と息子(当時3歳)と小さなお惣菜デリカを開業しました。最近はタイトルにもあるように「日本食を世界へ」というのをライフワークとして「どうすっべか?」と考えながらコーヒーを飲むのが好きです。 初めまし

    • われてもすえにあわんとぞおもふ

      メキシコ人には驚かされることが多々ある。それは僕の常識というものが全く役に立たないことを突きつけられていて僕にはとても心地が良かった。 突然仕事に来なくなったクラウディアは申し訳無さそうに電話をかけてきた。妻が電話に出たのだが、電話の主がクラウディアとわかると、僕は首を振り受話器を受け取ろうとはしなかった。それどころか、電話でクラウディアと話す妻にも八つ当たりをする有様。 それはまさに昭和の頑固オヤジの絵である。 妻の声を聞いたクラウディアは 「ごめんなさい。」 と

      • 驚きと失意と憤り

        クラウディアの出勤時間は朝9時半。それまでも多少の遅刻はあったけれど、メキシコという国において「遅刻」はある程度の許容をしなければやっていけない。それはメキシコで仕事する上で一番最初にぶつかる壁かもしれないけれど、僕は自分も怠け者の性格なのか30分程度の遅刻は許容範囲だった。 その日、10時になっても出勤しないクラウディアに僕は電話をかけた。 いつもなら 「今向かってる!バスが渋滞にはまってて〜」 と他愛もない言い訳を交えてすぐに応えるのだが、この日ばかりは電話に出ない

        • メキシコ人従業員採用開始

          2008年4月に開業して以来、街の大学に通う日本人留学生や当時は日本人宿があったこともあってその宿に長期宿泊していた日本人にお願いしてお店でアルバイトとして働いてもらっていた。賄い付き、時給15ペソというそれなりに良い条件でのアルバイトではあったけれど、ある日移民局の制服を来たグループが街をウロウロしていたのを見つけた僕は少し弱気になってしまって、日本人にアルバイトしてもらうことを躊躇い始めていた。 それから、その街の大学には日本語学科があって、日本語を習うメキシコ人学生が

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        日本食を世界へ

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        • −地球の裏の惣菜日記−
          16本

        記事

          アルコールライセンス取得

          コロナビール会社のシャツを来たアレハンドロと付添の女性は軽く挨拶を済ませるとアルコールライセンス取得までの流れを説明して、契約書を渡してくれた。 アレハンドロ曰く、僕のお店の規模的にテキーラなどの度数の高いお酒を提供できるライセンスは無理だが、ビールを含めアルコール度数が低いお酒を提供できるライセンスは彼の会社が協賛してくれ取得してくれるそうだった。 条件は通常飲食店へ提案しているディスカウント価格ではなく、1割程高くなるが卸値でビールを購入すること。その差額でアルコール

          アルコールライセンス取得

          アルコールライセンス

          そもそも、僕のお店は惣菜デリカテッセンである。なのであまりアルコール提供に関して言えば重要度が低かったのだけれど、そこはメキシコ、欧米人も含め昼間っから飲むという文化の中ではアルコールの提供ができた方が良い。というセニョールの助言のもと僕のお店にもアルコールライセンスが届けられた。  実は、開店当初に自力でアルコールライセンスの取得に向けて動いた。だけれど結果は撃沈。もともとランチとテイクアウトをメインで営業するつもりでもあったので、以降アルコールライセンスについては断念し

          アルコールライセンス

          ゴットファーザーと僕

          「それで?? 今朝はどんな用件で?」 セバスチャンは僕なのかセニョールなのかどちらか一方に話しかけるでもなく政治家っぽい堂々とした口調で話始めた。 「えーっと。。いや。。実は。。。」 僕自身なぜここに連れてこられたのか、どうしてここにいるのかわからない。が、とにかく自分のお店の前にテーブルをどうしても置きたい僕は自分なりに事情を説明しようと頭の中にあるスペイン語を絞りだそうとしたその時 「この日本人が自分の店の前の路地にテーブルを置きたいそうなんだ。場所は、もう知って

          ゴットファーザーと僕

          虎子を得るには虎穴に入る 

          「いいかい?君のような外国人がこの街の仕組みを理解するのは難しいと思うが、今日はこの街で生き抜くためのヒントをあげるよ。市役所というのは組織だからね。君の店を見廻りに来た人間は勝手には動けない。誰が彼らのボスか?それを知る必要があるのを覚えておきなさい。そうすれば、困った時に何処に相談をすればいいかがわかるから。」 セニョールはそう言いながら、2階から3階に向かっていた。市役所の3階は議会室があって、そこで色々な市政についての議論や決議がされる。その脇の小部屋に僕達は入って

          虎子を得るには虎穴に入る 

          市役所へ 

          「テラス席のない営業」は僕のお店にとって死活問題だった。 10坪にも満たない店内スペースはお惣菜を並べるショーケースでほぼ占められていたし、店内はとにかく暑すぎた。 「店内で食べるしかないなら帰る」 というお客さんがほととんど。食べに来たのに食べずに帰る人達はテイクアウトすらしてくれなかった。 中には「店内の方が良い」というお客さんもいたけれど、テラス席がないとテーブル2つしかない店内はすぐに満席になる。それを「満席」と言っていいいのか?はさておき、とにかく機会損失ば

          救世主 2 【ゴットファーザー】

          写真のお店が僕が2008年に地球の裏側メキシコの中央部にある世界遺産の街グアナファトに開いたお店である。僕は毎朝仕込みが終わり、正午に開店してからメキシコ人スタッフ達に営業を任せて近所のカフェで一息入れたあと、街を散歩する。そして、お店に帰る時のこの路地裏の入り口から見える景色がとても好きだった。店内よりもスペースがあり、席数も多い路地裏のテラス席。パラソルの隙間から見える真っ青な空の下で食べるヘルシーなジャパニーズテイストのデリ惣菜。隠れ家風じゃなく正に隠れている路地裏のエ

          救世主 2 【ゴットファーザー】

          救世主 1

          世界遺産の街を一望できる丘の上。街からタクシーで10分。僕は予約の時間を少し遅れていたけれど、そこはメキシコ、焦っているわけでもないのに、渋滞に巻き込まれたタクシードライバーは窓から顔をだしてクラクションを鳴らし続けていた。青い空から照りつける太陽と爆音の音楽、そして道行く人と車が喧騒を作り出す。そんなメキシコのシートが破れたタクシーに乗って僕は家族と丘の上にあるレストランへ向かっていた。 何気なく気になった場所で運命的な出会いをすることは人生の醍醐味だ。僕がそのレストラン

          救世主現る

          「お前は労働ビザを持っているのか?!」 市役所の人間にここまで言われることはありえない。 意外とメキシコの行政は縦割りで各部署間は繫がっているようで繫がっていないのが僕の経験上の印象だったのだ。しかも、市役所は文字どおり「市」で移民局は「国」、連携があったとしてもこんな路地裏の日本人の取締を市がするわけがない。と何故か自信満々だった。 特に、この日突然来た市役所の人間はテラス席の許可云々よりもいきなり営業許可や労働ビザのことを僕に問い詰めだしたので、僕はきっとこれは誰かの

          テラス席攻防戦の始まり

          冒頭の画像は僕がテラス席を設ける為に10年以上も市役所と許可の攻防戦を繰り広げた実際の場所である。画像だけみれば、路地のそこだけ少し広くなっているこの部分は公共の場所というより「自分家(ち)」だ。 その僕の主張は全く聞き入れられることもなく、この約10m2にも満たない場所を使うことすら、冗談でもなく最初は私物を置くことすら許されなかったのだ。 驚くことに市役所の誰も、市長ですらその存在を知らなかった細い裏路地なのに。。。 お店を訪れる誰もが大好きだった路地裏のテラス席は僕の

          テラス席攻防戦の始まり

          真打ち登場 その2 【家賃の行方とチェロとの思い出】

          メキシコ特有の真っ青な空を見上げて、息を切らしながら僕は坂道を登っていた。「映画館の手前の路地を左に曲がって一軒目」僕のお店の2階部分に住む大学生達が「大家」と主張する彼女の家を教えてくれた。 古びた映画館の手前の路地。一軒目の大きなドアの鉄格子にぶら下がる呼び鈴を押すと、屋上から電話の主と同じ声の女性がさっきの電話と同じように大きな声で「今すぐ降りるからちょっと待ってなさい」と叫んだ。 両側に大きな家が並ぶ細い路地は太陽が遮られていてひんやりとしているのかさっきまで坂道

          真打ち登場 その2 【家賃の行方とチェロとの思い出】

          真打ち登場 その1 【本当の大家】

          メキシコで家を借りるときまたは購入する際に、特に店舗物件で注意しないといけないのはその建物のオーナーについてだといわれている。 大きな建物だと所有者が多数いて、それが家族の名義になっていて家族間の仲が良ければ問題はないのだけれど、泥沼のような関係の場合トラブルに巻き込まれるケースがあるとは聞いていた。また、日本のように仲介の不動産業者が少ない当時のメキシコでは個人間の取引が多く僕の借りた物件も公衆電話の張り紙を見て、ディアナと公園で待ち合わせをして文房具屋で買ってきた契約書

          真打ち登場 その1 【本当の大家】

          ウルフという名のルイス

          「俺は根っからの悪じゃねえ。お前が俺のことをリスペクトすれば俺もお前をリスペクトしてやるさ。」 ウルフという名のルイス いや。。ルイスという名のウルフはしきりにこのセリフを繰り返していた。 ルイスの言い分はこうだ。 実はルイスは僕が契約しているこの店舗の大家であるディアナの父親で、つまりディアナの母親の夫なのだが、数年前から別居中で娘であるディアナの大学の学費の為にこの物件の家賃をディアナが受け取ることにしていた。 ルイス曰く。。ディアナの母親とは最近離婚したらしい

          ウルフという名のルイス