よく眠れる理科のおはなし

理科は理系のための学問なのか?受験が終わったら,必要ないものなのか?そんな疑問を抱きつ…

よく眠れる理科のおはなし

理科は理系のための学問なのか?受験が終わったら,必要ないものなのか?そんな疑問を抱きつつ,全ての社会人が理科を学ぶ意義について考えています。

マガジン

  • 中2理科の化学反応式を【理解】する

    中学校2年生の理科では,初めて「化学反応式」について学びます。しかし,多くのネット上の情報源には,化学反応式の「覚え方」と「作り方」しか載っていないことが多いです。  化学反応式にはどのような【意味】があるのか。これについては学校でも塾でも教えてくれないことが多いです。  このマガジンでは,化学反応式が持つ,隠れた【意味】について私の考えを,理科の教科書に沿って述べていきます。

  • 理科のおはなし

  • 高校生のための化学熱力学

最近の記事

成分という考え方

実体的な見方と熱分解反応  さて,次に中2理科「化学変化」における実体的な見方について話します。実体的な見方とは「見えないけれど,ある」と考える理科の見方のことでした。教科書では,最初に酸化銀の熱分解が扱われます。物質名反応式をもう一度,ここに書いておきますね。 【熱分解】 酸化銀 → 銀 + 酸素  状態変化では,物質の温度が変化すると物質の状態も変化しました。水は温度が上がると水蒸気になって見えなくなりますが,温度を下げると水に戻ります。しかし化学変化の場合は温度が

    • 粒子概念は仮説である

      現象と概念の間にある深い谷  中1理科「状態変化」では,物質を温めると固体は液体になり,やがて見えない気体に至ることを学びます。一方,気体を冷やすと液体になり,やがて固体に戻ってくることができます。このことから,固体,液体,気体の物質は共通の「実体」を持つのではないかと推測できます。  この実体とは一体何だろうか?と問うた時に,たぶん答えは一通りではないでしょう。人によって様々な解釈が可能なはずなのですが,理科ではここで「物質は粒子でできている」という解釈を一方的に教え,

      • 実体的な見方と状態変化

        実体的な見方の起源  学習指導要領理科編には,「理科の見方・考え方」という言葉が出てきます。理科の見方とは,様々な事象を捉える理科ならではの視点のことであり,理科の領域ごとに特徴があります。物理・化学・生物・地学の中で,化学は「粒子領域」と呼ばれており,粒子領域の見方の特徴として「質的な見方」と「実体的な見方」があります。  実体的な見方とは,「見えないけれど,ある」と捉える見方のことです。この見方の訓練は,小学校から始まっています。例えば小5「ものの溶け方」では食塩を水

        • 物体と物質の違い

          2つの外界の捉え方  私たちが知識を得るとき,どのような過程を経るでしょうか。まず,感覚によって対象を捉えます。感覚には視覚の他にも触覚,臭覚,味覚など,化学にとって重要なものがいろいろありますが,ここでは視覚のみに絞って考えてみましょう。  私たちは視覚によって外界を捉えますが,大雑把に言えば「物体」と「物質」という2つの捉え方があります。中1理科の教科書では,一番最初に「物質とは何か」という見出しがあって,以下のようなことが書いてあります。 物質に対して物体という言

        マガジン

        • 中2理科の化学反応式を【理解】する
          17本
        • 小学校の理科
          3本
        • 理科のおはなし
          8本
        • 高校生のための化学熱力学
          9本

        記事

          中2理科の化学反応式を【理解】する(16) 反応式は変化の過程を表さない

          前回のお話↓ 物質名反応式は平衡状態を前提とする  私は今まで,化学反応式は物質が「変化する過程」を表現したものであると思っていました。しかし,よく考えてみると,その理解は不十分だったのかもしれないです。物質名反応式は反応物と生成物の物質名を矢印で結んだものですが,この物質は平衡状態にあり,かつ純物質である必要があります。 反応物の物質名 → 生成物の物質名 (反応物・生成物は共に平衡状態かつ純物質)  高校以下の化学(理科粒子分野)では,圧力が1気圧,温度が室温で一

          中2理科の化学反応式を【理解】する(16) 反応式は変化の過程を表さない

          中2理科の化学反応式を【理解】する(15) 定比例の法則

          さあ,理科の教科書を読む作業は今回で終わりです。 前回のおはなし まとめページ↓ 化学変化と物質の質量 2 反応する物質の質量の割合 銅と酸化銅の生成比を調べる実験 【目的】 銅の質量変化に規則性があるか調べる。 【予測】 銅と酸素が反応する割合は決まっている。 【計画】 反応する銅の量を変えて,酸化銅の量を比べてみる。 【実験】 銅粉の質量を変えて加熱し,生成した酸化銅の質量を記録してグラフを作る。 【結果】 酸化銅の質量は銅の質量に比例する。      反応し

          中2理科の化学反応式を【理解】する(15) 定比例の法則

          中2理科の化学反応式を【理解】する(14) 混合物と純物質

          中2理科の教科書を読み進めています。 前回 まとめページ 化学変化と物質の質量 2 反応する物質の質量の割合 空気中で加熱すると、銅も酸素と結びついて酸化銅になり,質量が増える。 【問い】そのまま加熱を続けたら,生成する酸化銅の質量は増え続けるだろうか。 【予測】 1 銅原子に無限に酸素が結びつく。  2 銅原子に結びつく酸素原子の数には限度がある。 【実験】空気中で銅粉を加熱し,その質量を測定する。 【結果】一定量の銅と反応する酸素の質量には,限界がある。

          中2理科の化学反応式を【理解】する(14) 混合物と純物質

          中2理科の化学反応式を【理解】する(13) 質量保存の法則

          引き続き,理科の教科書を読んでいます。 前回のお話↓ まとめページ 化学変化と物質の質量1 質量保存の法則 【実験】化学変化前後の質量を測定し,変化がないことを確かめる。 A 気体が発生する化学変化 密閉した容器で実験し,化学変化前後の質量をはかる。 炭酸水素ナトリウム + 塩酸 → 塩化ナトリウム + 二酸化炭素 + 水 B 気体が発生しない化学変化 ビーカーで実験し,化学変化前後の質量をはかる。 炭酸ナトリウム + 塩化カルシウム → 塩化ナトリウム 

          中2理科の化学反応式を【理解】する(13) 質量保存の法則

          中2理科の化学反応式を【理解】する(12) 化学変化と熱の出入り その2

          この記事は前回の続きです。 前回のおはなし まとめページ↓ 温度と濃度の関係  さて,今もし中学生にわかるように熱と温度の違いを説明するとしたら,どうしたらよいだろう?教科書には載っていません。検索にも頼らず,中学生の立場に立って自分の頭だけを使ってなんとか考えてみよう。  熱と温度の性質には,次のような違いがあります。今,コップに入った50℃のお湯100 gが2個あったとします。二つを混ぜると200 gのお湯ができますが,温度は50℃のままですね。質量は足すことが

          中2理科の化学反応式を【理解】する(12) 化学変化と熱の出入り その2

          中2理科の化学反応式を【理解】する(11) 化学変化と熱の出入り その1

          長らくお待たせしました,中2理科の教科書の化学反応式の部分をさらに読み進めていきましょう。 前回のおはなし↓ まとめページ↓ 化学変化と熱の出入り1 熱を発生する化学変化 【発熱反応】 酸化カルシウム + 水 → 水酸化カルシウム 【実験】かいろの成分(食塩水,活性炭,鉄粉)を混ぜて温度変化を記録する。 【発熱反応】 鉄 + 酸素 → 酸化鉄 2 熱を吸収する化学変化 【実験】アンモニアを発生させ,温度変化を記録する。 【吸熱反応】 水酸化バリウム + 塩化

          中2理科の化学反応式を【理解】する(11) 化学変化と熱の出入り その1

          中2理科の化学反応式を【理解】する まとめページ

          おはなしが長くなってきたので,一旦まとめましょう。 (1)物質名反応式 化学反応式では,物質変化の途中を無視し,変化前後の変わらない状態に注目する。 酸化銀は全く性質が違う2つの物質に分解できる。 【熱分解】      酸化銀 → 銀 + 酸素 【実験を記述する意味】酸化銀から銀と酸素が生じた。 【成分としての意味】 酸化銀の成分は銀と酸素である。 (2)元素の定義 物質は分解できるが,限界がある。 【熱分解】  炭酸水素ナトリウム → 炭酸ナトリウム + 二酸化炭素

          中2理科の化学反応式を【理解】する まとめページ

          中2理科の化学反応式を【理解】する(10) 硫化反応と組成式

          中2理科の教科書を読んでいるところです。 前回のおはなしはこちら 最初から読みたい場合はこちらから。 3.硫黄と結びつく化学変化(硫化)【実験】 鉄と硫黄の粉末を混ぜて加熱する。加熱前後の性質を調べて,以下のことを確認する。 できた物質は磁石につかなくなる。 できた物質にうすい塩酸をかけると,腐卵臭を持つ気体が発生する。 鉄 + 硫黄 → 硫化鉄 $${Fe + S → FeS}$$ 【実験】銅線を硫黄と一緒に加熱する。加熱後の物質は青色になる。 銅 + 

          中2理科の化学反応式を【理解】する(10) 硫化反応と組成式

          中2理科の化学反応式を【理解】する(9) 酸化還元反応と金属の序列

          中学校理科の教科書を読み進めています。 前回のお話はこちら 最初から読みたい方はこちら 中2理科 還元反応2.酸素を失う化学変化ー還元 酸化鉄 + 炭素 → 鉄 + 二酸化炭素 鉄は錆びて酸化鉄になる。自然界では鉄は酸化鉄(鉄鉱石)の中に元素として存在している。 炭素が主成分のコークスを鉄鉱石に加えて加熱すると,単体の鉄を取り出せる。 酸化物が酸素を失う化学変化を還元という。 【実験】酸化銅と炭の粉末を混ぜて加熱する。生じた気体は石灰水を濁らせ,残った物質は金

          中2理科の化学反応式を【理解】する(9) 酸化還元反応と金属の序列

          中2理科の化学反応式を【理解】する(8) 金属の燃焼

          中2理科の教科書を読んでおります。 前回のおはなしはこちら↓ 最初から読みたい方はこちら↓ 中2理科 いろいろな化学反応 B. 金属の燃焼 【実験】マグネシウムとスチールウールを加熱し,前後の物質の性質を調べると,全く別の物質に変わっている。 マグネシウム + 酸素 → 酸化マグネシウム $${2Mg + O_2 → 2MgO}$$ 鉄 + 酸素 → 酸化鉄 C.穏やかな酸化 「錆びる」現象も穏やかな酸化である。 金属も燃焼する  さあ,ここでは何をして

          中2理科の化学反応式を【理解】する(8) 金属の燃焼

          中2理科の化学反応式を【理解】する(7) 燃焼と酸化反応

          さらに中学校理科2年生の教科書を読み進めていきましょう。 前回はこちら↓ 最初から読みたい方はこちら↓ 中2理科 いろいろな化学反応 1.酸素と結びつく化学変化ー酸化 A. 有機物の燃焼 炭素 + 酸素 → 二酸化炭素 $${C + O_2 → CO_2}$$ 水素 + 酸素 → 水 $${2H_2 + O_2 → 2H_2O}$$ 物質が酸素と結びつく反応を酸化という 酸化によってできる物質を酸化物という 光や熱を出しながら酸素と結びつく化学変化が激

          中2理科の化学反応式を【理解】する(7) 燃焼と酸化反応

          中2理科の化学反応式を【理解】する(6) 炭素の燃焼反応

           中2理科の教科書を読み進めています。さあ,これからいよいよ「化学反応式」に入っていきましょう。 前回はこちら↓ 最初から読みたい方はこちら↓ 理科教科書の内容化学反応式 化学反応の様子を化学式を使って表した式を化学反応式という。 原子は不生不滅で分割不可能だから,変化の前後で原子の種類と数は変わらない。 炭が燃えるときの化学変化 炭を燃やすと固体はほとんどなくなる。このとき発生した気体は石灰水を濁らせたので二酸化炭素だとわかる。 化学反応式を作る手順 (1

          中2理科の化学反応式を【理解】する(6) 炭素の燃焼反応