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また読みたくなる、お薦め集 その2!
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記事一覧

4回目の春がきた

寝ていたら、包丁のトントンいう音が聞こえてきたので、私はてっきり母が朝ごはんを作っている…

高山唯
4日前
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【40秒小説】ふたりだけのかくれんぼ

「もういいかい?」 ミヨちゃんを見つけたら ヘビのおもちゃで驚かせてやろう。 「まーだだ…

404

ミュージック・アワー(フォークダンスの思い出)

高校生のときの話。体育の授業が終わって教室の席につくと、私はふり返り、 「ええのう、お前…

箱男
1か月前
121

「旅館」ーーおばあちゃんと真っ白なシーツ

家の近所に小学校から一緒だった女の子がいた。教室でからかうと、「うっさいねえ。あんたに関…

箱男
1か月前
110

大学の友人たちと文通を始めた話

大学の友人たちと文通を始めた。もちろんLINEだったりインスタだったりで繋がってはいるけれど…

7等星
2週間前
34

わたしらしさを整えてゆく

遺伝って、ふしぎ 親子って、ふしぎ 父と母から DNAを受け継いで それぞれに似たところがある…

ちる
3週間前
304

柳あをめる

川沿いの道を下流へと、車を走らせた。四万十川は流れているというよりも、細長くくねる一本の物体がゆっくりと海に曳かれているようだ。 キャンプサイトにテントを立て、買い出しに行く。3月の末、暖かい日だった。散髪屋を見つけて入る。旅先で髪を切るのは、私の愉しみのひとつである。バンダナを巻いた理容師のおじいさんは、腕が確かなうえに面白かった。伸び放題だった髭を剃ってもらい、「はい、生まれかわりました」とおじいさんは肩を叩いた。「帰ってまいりました」と私は言った。 スーパーでカツオ

【短編小説】春は、ドブにて

 どうもならんかったね。何だろうこれは。どん詰まり、というのとも違う。詰まるような何かす…

No.1196 生みの親 海の母

「私たちん新婚旅行は、別府ん海岸に行くことじゃった。握り飯だけ持っち行ったわ。別府ん店屋…

仁の音
1か月前
135

ドーナッツの真ん中

ドーナッツが好き。 たまに何だか食べたくなる。 それも着飾った甘いカラフルなものではなく、…

CHA-TOMO
1か月前
175

さよなら111号室

明日は4年間暮らしたこの部屋、この町を出る。初めてひとり暮らしした部屋、すっかり見慣れた…

7等星
1か月前
42

物語を交換するために僕たちは生きている

電車の中でスマートフォンを覗く習慣をやめたら、長らく下駄箱の上に積まれていた本たちがすこ…

nobuyuki
1か月前
2

そして僕は途方に暮れる

2年前から母に認知症の始まりのような言動が増えてきた。少しずつ。 毎日小さなトンチンカン…

chai-lotta
1か月前
85

弓矢

 僕が子供の頃、家の近くに平和台球場という野球場があった。  結局、一度も中に入る事はできなかったけれど、外から僅かに覗く事のできる、ゲートで区切られた四角の中に見える絵画的な芝生は、いつだってとても青々しく綺麗だった。風が吹くと光そのものが揺れているのがわかる。  球場の近くには、小学生の手には負えないくらいの広大な公園があって、どんな季節でも、僕たちは日が暮れるまで辺りで遊びまわっていた。樹木と昆虫が多くて、厚かましくない程度にきちんと手を入れられた素敵な公園だ。そこでは