シェア
青日タロウ
2020年3月31日 03:56
雪が降ると、辺り音が止む。僕が世界から取り残されたような静寂。氷の結晶が落下していくとき、周りの空気を巻き込んで、冷気のカーテンが僕らの生活音を遮断する。深々と降る、雪。東京に大雪が降った、3月29日の朝。それは静かだった。自粛を要請され、それぞれの家で、それぞれの場で、生活をしている。別に当たり前のこと生活をするということ、それ自体。確かに目に見えない危険
2020年3月19日 14:31
春。芽吹きの季節。若い緑が顔を出し、桜が咲き誇り、暖かな陽ざしに包まれて、なんだか心地が良くなってしまう、春。僕は春が苦手だ。なぜだか浮ついてしまう春に、居場所を見失ってしまう。流れて、移っていくには穏やかすぎて、愛を語るには陽気が過ぎて。別れと出会いの季節だと、使い古されてきた言葉たち。いつだって別れも出会いもあるけれど、特別視されてしまう、春。僕は、期待し
2020年3月4日 22:16
ある日、親友は僕に告げた。「もう少し、『好き』って何かを考えなよ」え。好き、って好きでしかないじゃない?説明しようとすれば、いくらだって言葉が弾む。僕は人間が好きだ。僕とは全く持って違う人間が。何を考え、何を嗜好し、何を言葉にするのか。言葉にできない微細な表情の変化も。言葉になる前のとっさの行動も。僕とは何一つ異なる。その違いに、どうしようもなく打ちのめ
2020年2月27日 19:37
人には忘れられない匂いがあるとしたら、貴方は、どんな匂いを思い返すだろうか。僕にとってのそれは、14歳の冬の新宿駅の匂い。初めて好きになったアーティストの初めてのライブ参戦。山と空に囲まれた小さな村に生まれ育った。冬の澄んだ空気は鼻の奥を突き刺してくる。近いようで遠い東京。初めて乗り継いだ電車。ひとりってこんなに心細かったっけ一駅、二駅、過ぎてゆく毎に増える人。