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春は揺れている

春。

芽吹きの季節。

若い緑が顔を出し、桜が咲き誇り、暖かな陽ざしに包まれて、
なんだか心地が良くなってしまう、春。

僕は春が苦手だ。

なぜだか浮ついてしまう春に、居場所を見失ってしまう。

流れて、移っていくには穏やかすぎて、
愛を語るには陽気が過ぎて。

別れと出会いの季節だと、使い古されてきた言葉たち。

いつだって別れも出会いもあるけれど、
特別視されてしまう、春。

僕は、期待してしまっている。

やってくる出会いに、目の前に迫っている別れに。

君とはもう会わなくなるんだろうね、
と、どこかで分かってしまっていることに。

感情が、春が、僕を追い抜いていく。

置き去りにしていく。

その心持を僕は受け止めきれない。

浮ついた心で、ただ受け流していくだけだから。

浮ついた心で、君と会話をするだけだから。

せめて、今は、今だけは。

揺れ動く僕の心をそのままにしておいて。

流す涙は暖かくて、

君と体温が近いことを知るだけで、

春の陽だまりに溶けてゆける。

置き去りにされてしまって、
どうしようもなくなってしまうこの季節は苦しい。

けれども暖かで、揺れている今に
ほんの少しの期待をのせている。

その期待のおかげで、

僕は浮ついたまま、

今年の春を楽しみにしている。



あなたのサポートが僕の背中を押して、いつか届くべきところに言葉を届けられるようになると思います。少しでも周りが温まるように。よろしくお願いします。