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loquat

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VOCALOID楽曲と小説の連携企画。 Loquat第一作目 空を夢見る少女。 無機質な世界で育った女の子はどんな夢を見て、どんな世界を見たいのか。
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記事一覧

#8 raindrop-END

#8 raindrop-END

-----感情

あれから、10分は経過しただろう。
だけど、彼女にとってはとても長い10分だった。

誰も居ない、静かな公園でただ一人。
涙を枯れる程流した彼女は静かにベンチで佇んでいた。

「…フラれちゃった、な…」

呟いた言葉が、体に染み渡る様な感覚に生きている現実と実感する。
夢でも、妄想でも無いこの現実に。

手の甲に一つの雫が落ちてくる。
涙ではない、別の雫に彼女は雨が降ってきたと察

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#7 raindrop-困惑

#7 raindrop-困惑

------------困惑

「おはよー!」「あ、おはよー!」「昨日の番組見た?」「あー!見た見た!」
「ていうかさー、マジあの先生うざくない?」「あーわかるー………」
「化粧品没収されたわ-…マジむかつく」
「昨日さ、ゲーセンで佐山と清水見かけたわ!」「え!?マジかよアイツらデキてんの?」

教室のドアを開けると変わらないクラスの友達の声。
友達、と言えるかは分からないけどたまに話すくらいの知

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#6 raindrop-揺れる心

#6 raindrop-揺れる心

--揺れる心

「いってきまーす」

父親に挨拶をして家を出るその姿は、以前のような暗い雰囲気とは一転していつもの明るい彼女に戻ったようだ。

今日は休日、彼女はデパートに洋服を買いに行こうとしていた。
楓にも以前この日、デパートに買い物をしに行くから付き合ってほしいと連絡したが別件で行けないと断られてしまった。

以前の彼女だと落ち込んで悲しい表情を見せるが、楓と買い物をした一件以降悲しい表情は

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#5 raindrop-呼吸

#5 raindrop-呼吸

その時、この世界の時が止まった。

周りの音等聞こえなくて、目の前も見れなくて。

まるで、世界は私を否定しているようで。

---------------呼吸

朝起きるのが億劫になる。

布団の魅力がより一層強くなり、父親に開けられた自室の窓から流れ込む空気が
肌を刺す様な痛みで朝が来たと脳が認識する。

クリスマスも終わり、年が明けて三学期に入ってまもない頃、まだ冗談半分で年始の挨拶をしてい

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#4 机上妄想論-END

#4 机上妄想論-END

ーーー妄想、理想。

夢を見た。

春花にとっては、現実かと錯覚するかのような、妙にリアリティのある夢。

楓と、見知らぬ女の人が手を繋いで、仲良さそうに遠くへ歩いていく夢。

 まって!楓ちゃん!

 私を置いていかないで!私、どうしたらいいのか、、、!

 楓ちゃん!

 行っちゃ嫌だ!

 わたしを、一人にしないで。

 もう、一人になりたくない…

ハッと目が覚める。
体から滲むように出て

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#3 机上妄想論-感情

#3 机上妄想論-感情

-----疑問

電話で夏祭りの日を決めてから数日

梅雨も本格的に始まり、道浮く人が傘をさしている。
最近は晴れの日も少ないからなのか、全体的に空気も重く感じる頃

春花は一人、授業終わり、昼休みの教室の窓際で外を眺めながら窓に当たる滴の流れを追いながらボーッとした表情を浮かべていた。

 雨は嫌い、だけど少し嬉しい。
 楓ちゃんの部活が休みになる事が多いから、 一緒に帰れる事が増える。
 今日

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#2 机上妄想論-[私の友達]

#2 机上妄想論-[私の友達]

---プロローグ

タイミング、運命というのは余りにも突然で。

急に不幸なこともあれば、幸せなことだって起きる。
幸と不幸はルーレットのように巡り回ってくるものだ。

あの出来事から数年、私の人生は大きく変わっていた

父と二人で施設から出て、普通の人間と変わらない生活を送るようになると、身の回りに起こる全てのことが、新鮮な、初めての出来事。

身の回りの知識、時間という概念。色とりどりの景色

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#1 空を夢見る少女

#1 空を夢見る少女

———空を夢見る少女―――

—-----プロローグ

「…おはよう、ございます。」

— — — —

放った言葉に対して何も返事は帰ってこない。
いつもなら父が横でパソコンをカタカタ打ちながら返事してくれるのだが
最近はその頻度も減っていっている。

「…」

少女は少しだけ悲しそうな顔をしてベッドからゆっくり降り始めた。
だからといって特にやる事はない、少女が暮らしているその部屋は真っ白

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