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桜道

 
河津桜のニュースを見た。
 

昔、一度だけ、見に行ったことがある。
桜のピンクと菜の花の黄色が、とても綺麗だったのを覚えている。

お互いに地元に帰ることが決まっていた、恋人との二人だけの卒業旅行。
もしかしたら、一緒にいられるのは最後かもしれないと、心に刻みながら歩いた桜道。

今でも、目を閉じれば思い出す。
 
 
こんなに綺麗な風景があるのだろうかと、目頭が熱くなった。
たくさんの観光客がいて、お店も賑わっていた。

土産物屋さんで、「兄妹?」と聞かれた。

よく、夫婦は似てくると聞くけれど、恋人でも似てくるのだろうか? と思った。
 


なんだか、嬉しかった。

 
宿は温泉旅館に泊まった。
 
 


 


実は、覚えているのは、これくらい。
 

他にも色々、観光したはずなのに、思いだせない。

ずっと、最後かもしれないと思いながら、旅行していたから。
声も、匂いも、ぬくもりも、胸の高鳴りも、感じることができなくなるかもしれないと思うと、切なかった。

楽しまなきゃ、と思ったけど、悲しみが勝ってしまっていた。

だから、どこに行ったか何をしたか、ほとんど覚えていない。

「離れたくない、いやだいやだ」

ばかりが、心に、こだましていた。
 
 
 
だから、もう一度、あのピンクと黄色の世界に旅行に行きたい。やり直したい。

すぐに行ける距離ではないし、この時期に休暇を取るのは難しい。
  

でも、いつかは行きたい。
 

私の密かな夢・・・。
 
 
今は子供もいるし、もうドキドキすることもなくなった。
でも、離れたくない気持ちは変わらない。

 



って・・・

 
部屋の隅っこで転がっている、あの人は、この私のセンチメンタルな気持ちを分かっているのかな(笑)
 
 

 
また、同じ土産物屋さんにも行きたいな。

恋人ではなく夫婦になったけど、また「兄妹?」と言われたりして・・。

あ、でも今は、「兄妹」と言われても、嬉しくないぞ(笑)

 


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