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生ききっていこうよな


先週の日曜日、地元で古本市が開催された。その日の秋らしい綺麗な青空が、どこまでも遠くまで澄きとおっていたのを今でも思い出される。
「第一回うだつの上がる古本市」というイベントで、会場は職場から歩いて5分のところだったため、彼と一緒に行ってきた。なんでこんな日に限って出勤なのだろうと何度も思ったけれども、いけない距離じゃないだけマシだと思い、1時間というタイムリミットに追われながら本を見てきた。
イベントは盛況で、ただでさえ狭い会場内にぎっしり客が入っており、動くのに多少難儀したけれど、各ブースをさっと周り、気になる店をピックアップした。高知からいらしていた三帆堂さんと歩く本棚さんの出品がとてもよく、歌集がたくさんあったのと、気になるZINEも見つけたので迷いなく買った。買わなければ意味がない。とにかく買った。
職場の人も休憩時間に何人か行っていたそうで、後から買ったものを教え合い、他の出店者の本もどんなのがあったとか、あのお店が気に入った、とかの話をして、円満な会話。本の話あんまりしないから、楽しかったな。

 そうしてお迎えした本たちを読み漁り、その中でも仲西森奈さんの歌集とエッセイが織り交ぜられた『起こさないでください』がとてもよく、彼もまた気に入っており、とても好きになった。短歌ってやっぱいいな、好きだな、と再確認したのだった。歌の中でいくつも、周りにいる人に対して幸せになってほしいという願いが込められているものが多く、それ読むたびにあなたももれなく幸せになってくださいよ、と思うのだった。どんな人でも誰でもなんでもよく、ありたいままに生きることの難しさを感じる人は一定数おり、わたしの目では見えていない、耳では聞こえていないところで苦しんだり、諦めたり、怒ったり傷ついたりしているのだと思うと、それを言葉に表現することの尊さや勇気や、言葉にすることでどうにかなる精神や、とにかくいろんなことがグッときて、人間だからできることに救われたり、絶望したりするのだなと改めて思った。揺さぶられるからこそ愛しいのだと思う。なんでも。実はなんでも愛せるのだと思う。実は。すぐにはできないだけで。知らないだけで。見えないだけで。愛せない理由を探す方が早かったり、簡単だったりするから、どうもそっちに流れちゃうだけで。嫌いと好きなんて言葉があるから、分けなくちゃいけない気がするだけで。本当は、愛せるし、愛されたいのだと思う。みんな。

そうして読書と心の刺激をもらった数日後、というか昨日に、笹井宏之賞の結果。落選。悔しい。悲しい。でも、好きな短歌を作れた。人の目に触れてもらうにはまだ何か足りないかもしれないけれど、それでも、作れた。

受賞された方々、おめでとうございます。ほんと受賞される方々かっこいいんよ毎回毎回。キラキラしている。今どんな気持ちでいるのだろう。どれだけ幸せだろう。どんなふうに世界が見えているのだろうな。
2月に誌面で読めるので楽しみです。あー!来年も絶対、出すぞっと。


歌うことを忘れてしまわないようにしたい。表現することがないと生きていけないわけじゃないけれど、そうすることで私がもっとより良い人になろうと頑張れるから、まだ、もう少し、いや長く、作っていきたいです。
詩を書く人も、短歌を詠む人も、小説を書く人も、みんな自分と向き合って、何かに突き動かされてやってきているのだと思う。多分。だから読むものがどんどん増えていくんだろうし。私じゃない誰かが書くもので心がみたされてばかりだろうけれど、私が息をしていたことがなんか残したいから書くみたいなものが、いつかちゃんと誰かの手に取られるようにしたい。え、できるかな。やりたいんだけどな。やろうと思ってるよ。やるぞ。頑張る。

今日も明日も明後日も生きるのだから、生ききっていこうよな。言葉と、文字と一緒に。


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