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読書記録

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#読書感想文

『氷柱の声』を読んで

『氷柱の声』を読んで

 梅雨の明けた真夏の夜に読了した。エアコンの冷房が効いた部屋で、YouTubeから穏やかな音楽を流しながら。静かに読み終わり、静かに胸がぎゅっとなり、「あぁ、」と誰に返事したでもない声が、吐き出す息と共に出た。とても心に残る物語を書いてくれたな、とぼんやり思った。

 第165回芥川賞候補作という帯が巻かれたこの作品、『氷柱の声』は、くどうれいんさんの初の小説である。それまでの作品には、『わたしを

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6月の読了本と上半期ベスト本

6月の読了本と上半期ベスト本

 出会いがあれば別れがあるのは当たり前だが、時には一方的な別れがある。時間が解決してくれるとかそういう話でもなく、話し合う余地もなく、こちらの言い分も何も伝えることもできず、呆気なく、文字だけで終わるような別れ。

 そういう経験をすると喪失感に暮れるというよりは「何故」という疑問ばかりが浮かぶ。雨の日に散歩していたら車で後ろからバシャーンと水溜りを全身にぶっかけられそのまま走り去れられてしまうよ

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5月の読了本とか

5月の読了本とか

 5月からとっくに梅雨が始まって、カエルの合唱コンクールがそこらじゅうで行われていたのに、今は梅雨明けたの?と言いたくなるくらいの晴天が続いてスッキリしている。布団も干したしたくさん洗濯もした。掃除が特に捗った。

 夕方の風は適度に冷たくて気持ちが良く、軽快に網戸をすり抜けてきては部屋の中をきれいにしてくれている。ちょうど良い湿度とちょうど良い軽さ。気持ちの良い風とは清潔さを感じる風だ。

 と

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