6月の読了本と上半期ベスト本
出会いがあれば別れがあるのは当たり前だが、時には一方的な別れがある。時間が解決してくれるとかそういう話でもなく、話し合う余地もなく、こちらの言い分も何も伝えることもできず、呆気なく、文字だけで終わるような別れ。
そういう経験をすると喪失感に暮れるというよりは「何故」という疑問ばかりが浮かぶ。雨の日に散歩していたら車で後ろからバシャーンと水溜りを全身にぶっかけられそのまま走り去れられてしまうような感覚。避けられなかったのならば減速してくれればいいじゃないか。何故?そんな感じ。帰ってびしょ濡れになった服を洗濯機に放り込みシャワーを浴びれば冷えた体も温まるのでよしとするが、モヤモヤは少し残る。そんな感じ。
そんな感じを抱きつつ(あ、でももう大丈夫、そのうち笑い話になるので)6月の読了本を記録する。
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・女が死ぬ 松田青子
・ひとさらい 笹井宏之
・てんとろり 笹井宏之
・ファットガールをめぐる13の物語 モナ・アワド
・茶色の朝 フランク・パヴロフ
・桜桃 太宰治
・断片的な社会学 岸政彦
・滑走路 萩原慎一郎
・ダイオウイカは知らないでしょう 西加奈子・せきしろ
・春になったら苺を摘みに 梨木香歩
・つぼみ茸ムース 森博嗣
・回復する人間 ハン・ガン
の、合計12冊でした。
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月に10冊読むのが平均になってきている。(買った本の量はもっとあるのにね)去年の読書量半端なかったんだなと自分に驚く。月に15〜20冊は読んでいたと思う。この調子だと今年は読了数200冊いかないのでは。なんてこった。もっと読みたい。お金がない。本気で図書館の利用を考えている。遠いのが難点だがクレストブックスがたくさんあるみたいなのでちょっと気持ちは高まっている。返却は地元の図書館でもいいらしい(これがさ、私にはめちゃちゃハードル高いんだけどね)ので、そろそろ行こう、行ってみよう、えいや!のタイミングを待っている。
ついでに言うと今月はアウトプットすることもあまりなかった。ひたすら頭の中で考えることが多くて、落ち込んで、迷って、だめだだめだと自分を責めていた気がする。原稿用紙は使い切った。だけど、頑張っていることは嘘ではないのに嘘のような気持ちになったり、孤独と仲良くしようと思った矢先にパニック発作が起こり、『孤独死はできるだけ避けたいかもしれない』と思ったり。
しばらく短歌と自由律俳句はペースが落ちると思う。一首、一句の重みを感じ始めた。偽物になりたくないと思う気持ちだけが先走って躓かせる。センスを磨くにはたくさん読むこと、外に出ること、たくさん想像すること。たくさん感じること。原点を大事にすることを忘れないでいたい。
読書の中で感動した部分に心の赤でアンダーラインをひく。もしくは手帳に殴りがくようにメモする。そうしていくうちに忘れたくない言葉が増える。誰かに伝えたいシーンも増える。感動を残したいのでなるべく何かしらの形で読了した本の感想を書いている。ノートに書いたり、たまにTwitterにあげてみたり。そこで繋がる人たちと仲良くしたいと思う。のに、時々フォローしてくる、フォロー数は数百人なのにフォロワー数0の人って何なんだろう。そういった明らかに読書垢でも短歌でも共通点のない人、「何なんだろう」の人はちょっとごめんなさい(ブロ解)している。noteの方でもいらっしゃる。ちょっと怖さすらある。人付き合いって本当に、難しいなと思うことを経験したので(まだ言うか)見極めることも大事なのだな、と思う。
気がつけば6月が終わる。そして上半期が終わるということでもある。しいたけ占いの下半期の占いを読んでちょっと慰められた。遅れた青春時代をとり戻す時らしい。取り戻すよ。キラキラしちゃるよ。前向きな言葉って元気になれるね。
ということで上半期のベスト本を記録しておきたいのですが、ベスト本と言いますが一体何冊までなんでしょうね、5冊?10冊?今のところハズレとかなくってどれも良かったのですが、強いて言うならばの10冊を記録しておく。
(ちなみに順位はありません。あしからず。)
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・夏物語 川上未映子
・水の聖歌隊 笹川涼
・水中で口笛 工藤玲音
・家守綺譚 梨木香歩
・てんとろり・ひとさらい 笹井宏之
・リボルバー 原田マハ
・正欲 朝井リョウ
・女が死ぬ 松田青子
・ファットガールをめぐる13の物語 モナ・アワド
・クララとお日さま カズオ・イシグロ
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・・・です。(11冊になっているけど許して)本当に良かった。感動した、と一言で表すことは簡単だけども、どの作品も心が動かされることがたくさんあった。最近だと『ファットガールをめぐる13の物語』は、自分のコンプレックスと向き合ういいきっかけになったし、もっと自分の体のことを大切に思ってもいいのではないか、と思えるようになった。体ってただの器のようなものだけど、細い方が美しいみたいな考えってずーーーーっとあって、細い方が幸せになれるよ、っていう謳い文句はまだまだある。ダイエットって健康のためにすることであって、痩せることが目的ではない。どんな体型でもおしゃれは楽しめる。今の私でもいいんだよ、というメッセージを伝えてくれた作品でした。
『女が死ぬ』は、「女らしさ」が全部だるい、といった、女だから、女であるが故に起こる様々なモヤっとするところをがっつり書いてくれていて、文庫本サイズに53ものお話が詰まっている掌篇集。はっきりと書いてくれているのでだんだんスッキリしてくる。「そうそうこれなんだよ!これこれ!」」とか「少女は細くて可憐ではかなげじゃないと少女じゃないの?はあ?!」とか、ほんと色々共感するし、世の中そういった印象操作とか、イメージの植え付けみたいなものって多いだろうな、と気付かされるので、『ファットガール〜』とセットで読んだことで心に余裕が持てた気がした。
笹川涼さんの『水の聖歌隊』や工藤玲音さんの『水中で口笛』、どれだけ私は水が好きなの?と思うほど、青いもの、水系が好きなのですが、笹川さんも工藤さんも、お二方の短歌はどれも美しくって、頭の中ではたくさんのイメージや、感動が渦巻いているのに、言葉にしようとすると一気に枯れてしまう感じがしてなかなか文字でも言葉でもうまく伝えられない。みずみずしくて、青くて、本当に脳内の水中のなかでは感動や美しさは悠々と泳いでいるのですが。とにかく素晴らしいのです、ということは残しておきたい。
笹井宏之さんの『てんとろり』『ひとさらい』もそうで、短歌の美しさって、ひとそれぞれだと思うのですが、日常的なものもあれば歌人の豊かな想像の中で煌めくものを歌にすることもあって。その美しさが私は好きで、どの歌人にもそれぞれの個性とその美しさを持っていて。私も私の思う美しさを表現できるようになりたいと切に思う日々。大切につくっていきたい。
そのほかの作品もとにかく心にグッとくるものばかりで、共通して私は心の傷に関係する作品をよく読んでいる。だけど、その傷に対する処方の仕方や見方がそれぞれ本によって異なっている。
傷を作った原因を知るパターン、傷口の細部をよく見てその組織を説明するパターン、「痛いね」と共感して消毒液を優しくつけてくれるパターン。「傷つくことは悪いことではないよ」と慰めてくれるパターン。そんな感じ。
心の傷に向き合うことで自分を慰めるのであれば、ハン・ガンさんの作品はダントツであるが、(もはや私の心を浄化してくれる本である)多くの作家さんのそういった作品を読むことで私の心の幅も深さも成長していって、より良い人になれる気がする。そう期待しているので、今後も本を読む。
明日から7月。下半期が始まる。夏が始まる(もう始まっとるが)。
自分を深めていける日々でありますよう。
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