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読書まとめ『一度読んだら絶対に忘れない地理の教科書』→人間社会の分業は、気候がもたらした必然

『一度読んだら絶対に忘れない地理の教科書』山﨑 圭一


一言で言うと

人間社会の分業は、気候がもたらした必然



概要

以前読んだ『一度読んだら絶対に忘れない 世界史の教科書 経済編』がとてもわかりやすかったので、同シリーズの地理版を読んでみました。



地理学の分類の中では、原因・理由を考察する系統地理学に特化しています。なぜこの地形になったのか、なぜこの産業が発達したのか、といった具合。『世界史の教科書』シリーズが「歴史のHow・Why」にフォーカスしていたように、本書は「地理のWhy」に特化していると言えます。

目次を見ればわかるとおり、地理学が扱う範囲は、人間の生活のほぼすべてを網羅しています。狩猟採集の時代から、国家や社会が発達した現代まで、人間の生活は地理で説明できるということです。おそるべし、地理学。


構成としては、マクロ視点の自然地理学から、ミクロ視点の人文地理学へと順にクローズアップしていく形になっています。順を追って理由を知っていくことで、人間社会は自然がもたらした地形や気候に大きな影響を受けていることがよくわかります。この納得感が「一度読んだら絶対に忘れない」をもたらすポイントですね。

また、各章のはじめに示されるマインドマップ的な図解が秀逸です。各章の要素の親子関係・並列関係が示され、アイコンもあってわかりやすいです。優秀な人の頭の中を覗いているような感じ。学校教育の教科書にも載せてほしいレベルです。


本稿では、印象に残った学びを3点でまとめます。



① 気候と気圧帯の縞模様

地理の重要概念・ケッペンの気候区分については、なんとなく覚えている方も多いのではと思います。日本は温帯湿潤気候(Cfa)、とかのやつですね。

ケッペンの気候区分を理解するには、気候を作り出す気圧帯の存在を意識するとよいです。地球を横から見ると、高圧帯と低圧帯(収束帯)が縞模様になっています。低圧帯では上昇気流が発生して雨雲が作られ、逆に高圧帯は乾燥します。砂漠といえば猛烈に暑いイメージですが、一番暑そうな赤道付近(低圧帯)ではなく、赤道から20~30度ほど低緯度側にズレた高圧帯に発生します。

https://juken-geography.com/systematic/atmosphere/



② 気候に適した作物を世界で分業

農業は、人間の自然利用の代表格です。温度・湿度だけでなく、土壌の質などの要素でも地理的な影響を受けています。

農作物には、生育時の環境によって、それぞれ適した気候があります。たとえば、サバナ気候(Aw)のアフリカ・エチオピア原産といわれるコーヒーは、同じサバナ気候の南米ブラジル・コロンビアや、ベトナムで多く栽培されています。遠く離れた地で栽培されているように見えて、同じ気候区分である、という共通点が見えてきて興味深いです。



③ 人口・産業の分布は人間の集合知

農業に限らず、産業にも適した立地があります。原材料が重ければ産地の近く(鉄鋼業)に、原材料が普遍的に手に入るなら市場の近く(飲料)に、といった具合です。

住みやすい場所に人が集まり、その周辺には産業が発達します。現代では、大都市・東京と、周辺のベッドタウン・郊外型農業、といった形で役割が明確になっていきます。人口や産業の分布は、居住や産業の役割が明確化した結果であり、人間の集合知なのかなと感じました。



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本書では、図解は豊富ながら写真がないのがネックかもしれません。ネットで画像検索するか、地理系の写真集を片手に読むとよさそうです。

※具体的な地域を扱うのは、系統地理学よりも地誌学



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