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読書まとめ『YOUR TIME ユア・タイム』→あなたの思考のクセを知れ

『YOUR TIME ユア・タイム:4063の科学データで導き出した、あなたの人生を変える最後の時間術』鈴木 祐


一言でいうと

あなたの思考のクセを知れ



概要

時間術に関する人気本と知り、読んでみました。動機が『限りある時間の使い方』の時と同じですね。「時間の家計簿」のおかげか、それほど時間に追われている感覚はないんですが、新しい発見が欲しいのかも。

人それぞれに時間の考え方が異なるから、自分に合った時間術を選ぼう、というのが本書の主張です。世に数多くの時間術・研究がありますが、データ上で万人に効果のある時間術は存在しません。これは、誰のどんな病気でも治せる薬がないことと同じです。例えば体調不良になったとき、いきなり薬を飲むのではなく、まずは診察と検査をしますよね。それと同じように、まずは自分の時間の考え方を把握した上で、効果がありそうな時間術を選択する必要があります。本書の副題にある「最後の時間術」という表現は、ひとつだけの正解ではなく、各自に合ったものを選ぼう、という意味ですね。

時間の考え方と時間術の効果を、予期と想起で分類していることが本書の大きな特徴です。ちょっと難しい表現ですが、要するに未来と過去の見方のこと。予期の濃さ・多さ、想起の正確さ・ポジティブさを軸に、それぞれ4タイプに分類しています。自分の時間の考え方を知るための助けとして、下記のサイトで簡単な診断テストができますので、ぜひ。


私の診断結果は下記のようになりました。生産性に全振り。

右上が最良というわけではなく、どこかの方向に大きく偏っていないことがよいとされています。禁欲家×自信家の組み合わせは、生産性の高さにおいてはベストですが、燃え尽き症候群や過信による失敗を起こすリスクもあります。過度に肯定的なのも確かによくないので、ほどほどが重要ですね(想起の正確さだけは、正しければ正しいほどよいかも)。

本書では、時間術を「予期と想起を調整するもの」と捉えています。たくさんの時間術が掲載されていますが、絶対の正解があるわけではなく、予期と想起をどう調整するかがそれぞれ異なります。例えば「To Doリスト」を作る時間術は、予期を薄める・想起を肯定的にする効果があります。つまり、「To Doリスト」を使って改善がみられるのは、他のタスクに意識が向かってしまい今のタスクに集中できない人(予期が濃すぎる)や、ネガティブな思考が浮かんで不安に取りつかれやすい人(想起が否定的すぎる)などです。

私が続けている「時間の家計簿」は、想起を正しくする効果がありそうです。これで効果があったということは、かつての私は想起が正しくなかったと言えますね。一般的には「タイムログ」と呼ばれる手法で、振り返って分析する「タイムログ・アドバンス分析」も本書で紹介されています。


本稿では、本書からの学びを3つ紹介します。



① 管理すべきは時間ではなく集中力

そもそも、大半の時間術は時間の使い方とは関係がありません。「To Doリスト」や「カレンダー」を使った時間術は、タスクやタイミングを明確にするだけで、タスク実行そのものの生産性を上げる効果はないはずです。それでも、実験では一部の被験者に生産性向上の効果が出ています。

それは、時間術で管理しているのは、時間ではなく集中力だからです。先述の時間術で今やるべきことを明確にすれば、脳のリソースをそれに集中させることができるので、結果的にタスク実行の生産性が上がったと考えられます。

人間には、緊急性の高いもの・期日が設定されているものから対応する習性(単純緊急性効果)があります。重要性は、実は後回し。重要性×緊急性を軸にしたマトリクス(アイゼンハワー・マトリクスと言うそう)がよく使われますが、これには自分の価値観を把握する効果があります。自分にとって大事なことを明確にすることで、後回しにされがちな重要タスクに集中力を向けることが期待できます。



② 課題を主観から切り離して見る

想起の誤りを減らす方法として、タスクの所要時間を他人に見積もってもらう方法があります。学生に卒業論文執筆の時間を見積もらせたところ、自分に対する見積もりよりも他者からの見積もりの方が正確だったという実験結果が紹介されています。応用して、これから自分がやることを、他人がやるとしたらどのくらいかかるか?で見積もってみるのもよさそうです。

同じ目標を持つ他者にアドバイスする「アドバイス法」は、想起がネガティブな人にオススメされている方法です。ペンシルバニア大学の実験では、勉強に悩む後輩にアドバイスをするよう指示された学生は、勉強時間が38%増えました。自己効力感がアップし、想起を肯定的にする効果があります。

上記2つから、自分のことを客観的に見ることの重要性を感じました。自分の課題を自分から切り離し、客観的に見ることで、所要時間を見積もったり肯定的に捉えたりすることができそうです。本稿前半でも説明したとおり、自分の時間の考え方を正しく認識することともつながりますね。



③ 時間術は中庸に近づくための手段

予期を薄くする方法として、余暇のスケジュールを事前に決めておく「プレコミットメント」があります。禁欲家×自信家の私が取り入れるべきものだと思いました。朝活で映画を見る日を決めておくとか、娘と遊ぶ時間はそれに全力集中するとか、取り入れたいです。

予期が濃すぎる場合、実際には短期的な予期が濃すぎることが多いと感じます。10年後・20年後どうしようとかよりも、明日・今週・今月どうしようの予期の方が思いつきやすいですからね。長期的・大局的な予期にシフトする方法として、「この選択をした場合、10年後の自分は後悔するだろうか?」と考えてみる、「リマインディング」が使えそうです。

いくつかの時間術を紹介してきましたが、予期と想起を調整する行為は、『論語』で説かれる中庸の精神だなと思いました。濃すぎてもいけない、薄すぎてもいけない、偏らずにほどほどに。本稿で紹介した時間術以外にも、本書では予期と想起の分類ごとにたくさんの時間術が解説されています。

あなたの時間の考え方を中庸に近づける時間術を、ぜひ見つけてください。



参考

自分を知る=『孫子』からの、中庸を目指す=『論語』です。「最後の時間術」は、2,500年前からすでにあったわけですね。


本稿では取り上げていませんが、生産性を上げればいいってものでもない、ということも本書の後半で主張されています。『限りある時間の使い方』に近いものです。


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