飲み終わるまでそこにいて
沙央理はここまで来るまでの記憶がなかった。いや、考えたくなかっただけかもしれない。
慎太郎に話があると言われ、昼前の待ち合わせに指定されたこの場所は、かつて彼と初デートをしたカフェだった。給仕係に案内されたテラス席は、台風一過のあとの晴天だからか、いつもより賑やかだった。あまり会話が弾んでいない、大学生になりたてのような若い男女、スーツ姿で電話をしている男性、なかにはペットを連れて過ごしている客もいた。
彼から仰々しく誘われたのは、おそらく別れを伝えるためだろう。それなのにな