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“真理は常に概念の外にある。そこに踏み込むことで、また別の景色が見えてくるからさ”

09. よも夫婦 / 作庭家・ツリーハウスビルダー、鍛造作家

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作庭家でツリーハウスビルダーの四方谷毅さんと鍛造作家の礼子さん。結婚されてからずっと2人で作家活動をされているお2人は、肩書きにも、扱う素材にも囚われず、様々な創作をされている。

固定概念を外した先にあるものづくりをするお2人。見る者の心に、新しい風を通すような彼らのモノ作りの背景となる思想を伺いました。

■四方谷毅(よもや つよし)、四方谷礼子(よもや れいこ)
デザインから制作、施工までの創作を夫婦2人のユニットで営む。通称、よも夫婦。

代表作はEXILE ÜSAのツリーハウス【ヤシ子】、EXILE TETSUYAがプロデュースする【AMAZING COFEE】や廃墟だった鉄工所をリノベーションした【Cafe Soul Tree】の空間、世界各地にある会員制レストラン【Bohemian】のNY店では庭、カフェバーラウンジ兼ホステルの【Nui】【Len】【CITAN】ではデザイン金物やシーリングファンなど、国内外でジャンルを問わず幅広く活動している。

Instagram
四方谷毅
: @yomoya
四方谷礼子 : @reiko0227

制作一覧: https://m.facebook.com/YOMOYAREIKOSAKANO


_自分自身をいい状態に保つためにしていることや、習慣はありますか?
毅さん(以下、T): 習慣じゃないけど、心がけとるのは、ちゃんと笑うこと。

礼子さん(以下、R): 私は心の状態を無に戻すこと。自分の調子ってメトロノームみたいなもんやと思ってるから、良い方でも悪い方に触れても、自分らしく消化して真ん中に戻って来れるようにしてる。そこがベストと思うから。


_発想やクリエイティビティの源泉は?
R: 自分の経験の中で起こった陰のことも陽のことも、アイディアとして持つこと。
相手から「これが欲しい」って具体的なモノをお願いされても、お話して受けた相手の印象とか、話の深層にあるところを読み解いて、「たぶん、本当に欲しいのはこんなんじゃない?」って引き出すことを、私は1番主体にしてるんよね。

そうするには、その人からもらう情報だけでは完全に読み取れないから、自分が記憶してる経験を引き出して、相手になり代わってみる必要がある。そうやって相手に同調すると、本当に求めてるモノを探し出せるから。

T: 俺は万物を知ること。博学であった方がアイディアは湧くし、あらゆる現象とかモノの形をロジックと自然科学的に考える方。

礼子が相手の気持ちとか、ほんまに求めてるモノを引き出してるときに、俺はそれをどう実現させるかを考えてる。大体その役割分担やな。2人の役割が重なってないから、やりやすいのかもしれん。


_お2人で仕事されるようになって変わったことは?
R: 夢中になりすぎるとさ、やりすぎちゃうことがあるやろ?人に対しても、モノを作る過程に対しても。でも相手のことは客観的に見れるから、止めることが出来るやん。「もう大丈夫やよ」って。

もともと私は集中してしまうと3日5日と、寝ずに食べずに没頭して、作業し続けてしまうたちやったんやけど、それはやっぱり状態的にあんまり良くなくて。気がしっかり定まらないから。
それがつーちゃんと一緒におるようになってからは、地に足がついた感じ。しっかり毎回一緒に解決して、向き合ってくれる人やから。

T: お互い別々で歩きながらも、存在を意識し合って進む感じよね。
任せておく部分もあるし、任される部分もある。そこに明確な線を引いてるわけじゃないけど、自然とそうなっとるな。


_お2人で活動していて辛いことを挙げるなら?
R: 日本ってやっぱり男女差別が根底にあって、「旦那さんの仕事についてきた嫁」って捉えられることが多いんよ。

逆に、私の仕事でつーちゃんがついて来ても、その評価は、私が1人では無理やからってなるわけ。
楽しいから2人セットでやってるのに、やっぱり日本はまだすごい男社会で、女の人が不利になることが多いし、私は人が何を考えてるか感じ取りやすい分、現場にそう思ってる人がおると解るから、悔しい。

T: けど結果はいつも、「2人で来てもらって良かった」ってなるんやで。「そんな態度とる?」っていう人が、いつの間にか「2人がいると、不可能が可能になると思える」って言ってくれたりして、その後も会いに来てくれたりするし。

やし、最初は2人で仕事をすることに否定的な態度を取る人がおっても、俺は「明日になったらお前らも考えが絶対変わってるよ」と思っとる。

_あなたにとって仕事とは?
R: 生きがいというか、生きること。今、こうやって話してる時間も、何かを作る時間も、全部自分のしたいこと。

T: そこにお金が発生するかしないかっていうところで、仕事として成り立つのかは分かれるのかもしれんけどな。全部いっしょ。

R: でも全部本気やよ。だって空間やモノを作るっていうのは、その人の時間やお金を預かるわけやから。

T: 言い換えたらそれは人生の一部を預かることやしな。そこは毎回覚悟しとるし、ちゃんとやり切る。


_新しい挑戦をすることに恐怖や、できないかもしれないと不安を感じることはありますか?
R: 自分のことを過大評価してないからね。やるべきことをやるっていうだけで、できる、できないとかじゃなくて…。

T: 俺はできるとしか思ってない。できるって思ってる範囲内+αでしかモノを考えてないからかもしれんけど、「これを作りたい」と思ったら、どうしたらええのかをバーーって考えるし、考えることによって、変な奇跡が起こって、できてしまったりするんよ(笑)

そうしてここまでやって来れたから、解決の糸口は必ずあると思ってる。


_転機になった出来事はありますか?
T: 自分がかっこいいと思う人に認められたことかな。面白そうなイベントがあるって耳に挟むと、「どんな形でもいいから加わらせてくれませんか?」って飛び込むことを20代のとき、よくしてて。そしたらやっぱりそういうことを企画してる人らは面白い人たちなんよね。

そんな人らに「こんなん作れる?」って難題を振られることが多かったんやけど、自分のひらめきを全部形にしてってん。
その出来上がったモノを、「ええもん作ってくれた!」って、その当時第一線で活躍しとる人たちに喜んで言われたのが、すっごいええ経験でさ。
「なんかいけるかも」って思うようになった。

R: 相手がどう見てくれるかが、その時の自分の評価やからね。「どう見られたいか」じゃなくて、「どう見られたか」がその時の結果やから…。作ったモノで評価してもらうのが1番嬉しいよな。

私にとって1番転機になったんは、「本物のなかで生きろ」って言葉が見えた時やな。

別に普段からそんなスピ系で生きてるわけじゃないんやけど、元から見えへんものは感じ取りやすい方で、その時はそういう力がすごいある陶芸家の先生と作業してたんよ。その先生との相乗効果やったんやろうな。家の中におるのに、空間がパカっと開いて、その文字が降りてきたん。

「本物のなかで生きる」ってすごい言葉で、それ以来、自分に選択肢があったら「本物や」と思うものを選ぶようにしてる。

T: ほんまラッキーでしかないんやけど、出会った人たちが今の自分を形成してるのは間違いない。偶然なんか必然なんかは分からんけど、言葉のアドバイスよりも、人の存在に影響を受けてるな。


_仕事をやり続ける原動力は?
T: 俺は好奇心。万物にやな。人に対してもモノに対しても。

R: それはそうやな。好奇心があるからやったことのないことも、してみようと思うし。
あとは型にハマらんこと。一応、私は鋳造作家で、つーちゃんは作庭家であり、ツリーハウスビルダーって名乗ってるけど、うちら何でも作るし、やりたいことをやればいいと思っとる。

T: 肩書きを作って線引きするから、これはできない、あれはやれんって概念が生まれるんよね。でも真理は常に概念の外にある。そこに踏み込むことで、成り立つはずのない全く別のことが同時にできるし、また別の景色が見えてくるからさ。

R: だからうちらは名刺も持ってないし、ホームページも作ってないし、「何しとるんですか」って聞かれたら「何を…したいですか?」って逆に聞く(笑)


_型にはまらないスタイルは、仕事を始めてから何年ぐらいで出来る様になりましたか。
R: 歳月とか年齢っていう時間じゃなくて、自分が自分を認めたからできるようになったんやと思う。「私はこういうモノ作りをしてるからすごい」とかじゃなくって、「私は私として、この世界を歩んでいこう」って、自分自身の生き方をよしとできる瞬間が明確にあったから。

T: 時間で考えるのも、概念に縛られてるからよね。だって歳を取ることで解決するんやったら、年寄りみんなすごいはずやん?でも実際はそうじゃないし、若くして天才のやつだってめっちゃおる。

R: 社会の中におるから、無意識のうちにいろんな情報を拾って、「これはこうしないとダメ」みたいな、自分で縛りをかけてしまうことってあるやん?それってすごい無駄なことで、私が日常の中で1番意識して外すようにしてるところやわ。それに気付くのも難しいしね。

T: それを外そうと思うと、恐怖感もあるんよね。今まで生きてきた人生を否定される可能性もあるから。

R: でも外すことが怖いか、変わることに興味を持って外すかで、その後の人生だいぶ変わるからね。どっちが幸せかは人それぞれやし何とも言えやんけど…。

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