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理想の言葉

スピッツの曲をよく聴く。

そして草野マサムネが創り出す言葉が好きだ。

絶対的な意味やメッセージを提示していないから。
短いフレーズで心に残る言葉はあるけれど、全体の歌の流れで、
「こういうことを歌いたいんだ!」という主張を感じない。

私は曲を聴く時に、何を考えてこの曲を作ったのか、
歌詞にはどういう意味が込められているのかをよく考える。

そうするとストーリーが見える気がするから。

でもスピッツの歌を聴いていると、
そのストーリーを自分で描ける。

草野さんが放ったストーリを受け取るというより、
メロディーや、澄んだ美しい声や、サウンドからインスピレーションを得て、
自分の思い出や記憶や、はたまた未来への想いや理想的な世界へのイメージが湧き上がり、自分のストーリーが出来上がっていく。

きっと、一曲を別の人が聴いたら、十人十色のバラバラの解釈が返ってくるとおもう。

その柔らかさ、押し付けのなさ
受け手に主体性を促す創作が心地いい。

現実と非現実を彷徨う、
さまざまな世界や惑星が共存するようなファンタジー感

儚く優しいけれど、確かに強さを感じる。

草野さんが書いた歌詞を見ていると、それぞれの言葉単体の意味はわかるけれど、それらを結びつけた時に、ふと現実から離れ、不思議や世界が現れる。

そんな時は、自分でイメージする。
色や風景や植物や動物や、現実と非現実を彷徨う自由な世界を。

草野さんが書く言葉はとても詩的で、深い意味がありそうで、実は意味はないかもしれない。
彼の中で、社会や、世界に対する想いは感じる。
一曲一曲自体での区切りではなく、
彼が作り出す音を聴いて、一見繋がりのないところに気づきを見出す楽しさがある。

絶対的なメッセージやシナリオを汲み取るのではなく、
音楽としての言葉を受け取る。

なにかと意味や繋がりを求めてしまう時、
スピッツの曲を聴くと曖昧な、ふわふわしたままでいいんだよ、とそっと包んでくれるような気がする。

青い猫がいたっていいし、
草が喋ってもいいし、そんな世界を想い描いて生きていけるよ。自分のありたい世界を作れるんだよって

浮かんだメロディーにのせる言葉選び、その世界観と完全に調和した歌声。

こればかりは、独自のイメージとか、歌の上手さとか、声の綺麗さとか、そんな小さな枠にはまらない天性が生み出すものと思う。
そして、この現代に生きる中でなぜあんなに純粋な精神を持ち続けられるのか、不思議にすら思う。

私は小さなマイナスなエネルギーも吸収してしまって、自分を保てなくなることがしょっちゅうあって、
いいものだけに心動かされたら、どんなに平穏でいられるかと、傲慢なことを思ってしまったりもする。
草野さんの手にかかると、そんなネガティブなものも、あの素敵な音楽に変えてしまうのだろうか。

きっと頭は別の世界に生きているのだろう。

想いが溢れると、どうしても具体的なイメージを提示したくなる。
私は、こうやって文を書いたり、ものづくりをしたり、音楽をしたり、写真を撮ったり、
その中で、どうしても自分の想いや描くイメージを意図したまま届いてほしいとつい考えがちで、強く発したくなってしまう。
それも一つのスタイルかもしれない。
ただ、スピッツの懐が深い創作は、いかなる者も包み込む優しさを感じる。

スピッツの音楽を楽しんでいると、ただ謙虚に、確かに力強く、包み込むように柔らかく、ひたすら誠実に創作に向き合うことの素晴らしさを思う。

そんな言葉を、世界を創りだせる人になりたい。

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