なぜ美容麻酔塾を開講するか? 安全、快適な美容医療のために

初めまして、麻酔を愛する麻酔科専門医のアネちゃんです❤️
この度、美容麻酔塾を開講しました!!!
美容麻酔に関する資料が少ない中、自分の経験に基づいて、海外文献を参考にし、美容外科クリニック向けの周術期管理をなるべくわかりやすく説明します。
主に美容外科クリニックの麻酔科医、美容外科医、看護師など医療従事者向けですが、美容外科手術を受けたい患者さん向けの内容も多く含まれていますので、参考にしていただければ幸いです。
稚拙なノートですが、ぜひ読んでください。
日本で安全な美容医療が行われることに少しでも貢献したいと思っています。

美容医療の手術件数の急増

日本美容外科学会(JSAS)、日本美容皮膚科学会(JSAD)、日本形成外科学会(JSPRS)、日本皮膚科学会(JSD)が発表した統計によると、2019年に日本で行われた美容医療の施術数は198万件程度でした。そのうち、約26万件(13.1%)が外科的手術で2018年(23万 件、13.7%)より14%増加しています。

病床がないクリニックでの全身麻酔下美容手術

日本では入院施設がある美容外科有床診療所あるいは病院が少ないため、美容外科手術が増えていることは、クリニック(無床診療所)ベースの日帰り手術の増加を反映します。病床がないクリニックでの全身麻酔下日帰り手術への需要が年々高まる中、患者の安全性を最大限に高め、不快感や後遺症を防ぐ、信頼性の高い麻酔技術が非常に重要です。

 美容麻酔と日帰り麻酔の違い

クリニックベースの美容麻酔は非常に需要がありますが、日本では美容麻酔、さらにクリニックベースの日帰り手術の全身麻酔に関する教科書、あるいは知識、経験をシェアする学会、勉強会などがないのが現状です。

日本麻酔科学会による“日帰り麻酔の安全のための基準”は1999年に制定され、日帰り手術全身麻酔の普及にも非常に役に立ちます。しかし、病院ベース日帰り手術の全身麻酔とクリニックベース日帰り手術の全身麻酔は、設備、目標と課題が全く違うので、その経験はそのまま当てはまりません。

病院ベース日帰り手術の全身麻酔では、一泊入院が予定される日帰り手術も含まれ、また午後5時以降の予定外入院も可能ですし、院内に多数の診療科医師、熟練した看護師、臨床工学技師が常在し、術前併存症の悪化、術中麻酔あるいは外科合併症の対応は容易です。

しかし、クリニックでの美容麻酔は入院施設がなく、基本的に美容外科医と臨時に雇われる麻酔科医しかおらず(多くの場合は麻酔科医すらいない)、看護師も手術室業務、急変対応に熟練しておらず、環境面で非常にリスクが高くなっています。

保険診療麻酔と自由診療麻酔の違い

保険診療と違い、自由診療の患者は病気を治すために、手術あるいは麻酔を受けに行くわけではありません。そのため、安全面と快適性の面では保険診療より高い質の医療を期待しています。

麻酔科学と周術医療の進歩により、周術期死亡は1万例中1例まで低下しましたが、美容医療による死亡はなかなか患者さんから受け入れられないでしょう。麻酔科学と周術医療の進歩により、日本の麻酔関連偶発症例(心停止、不整脈、低血圧など生命を脅かす事故事象)は1万例中2、3例まで低下しましたが(2016年麻酔学会)、美容医療ではこの程度のリスクでも患者さんは受け入れができないのではないでしょうか。実際、過去において日本で発生した美容医療事故は麻酔関係のものが大半を占めています。

さらに、美容医療は病気を治すものではないので、痛み、嘔吐、寒気などの麻酔関連不快感も受容されにくいです。"高いお金を払っているのに、なんでこんなにしんどいの"、"きれいになるために、リラックスするために手術を受けに来たのに、なんでこんなにしんどいの"とよく患者さんの不満が聞こえます。

美容外科医と麻酔科医の協力と理解

低侵襲術式の開発などの外科手術の進歩と同時に、即効性の短時間作用麻酔薬と鎮痛薬を利用できるERAS快速回復麻酔など麻酔技術も進んでいます。美容外科医と麻酔科医は、それぞれが相手を十分に理解した上で、連携し、よりよい美容医療を提供すべきです。

美容外科医は、患者に周術期リスク合併症を事前に説明するために、麻酔技術を理解していなければなりません。同様に、麻酔科医も手術方法を理解した上で、最適な麻酔方法を選択すべきです。

麻酔科医と美容外科が協力するこそ、患者さんの安全性を最大限に高め、患者を安全に帰宅させ、早期回復、術後の副作用を最小限に抑え、全体的に快適な周術管理を提供するという目標を達成することができます。

しかし、現況では大きな病院しか経験したことのない麻酔科医は美容外科手術への理解も乏しいし、2ヶ月間の麻酔科研修だけしか経験したことのない美容外科医は麻酔また美容麻酔の特徴も理解できません。無痛分娩、小児歯科局所麻酔中毒で死亡例が出現した後に、外科医が自分で麻酔すること(自家麻酔)はどんどん減っていますが、美容外科領域はまだたくさん自家麻酔がされています。

より良い美容医療のために

そのために、麻酔科専門医のアネちゃんは美容麻酔塾を開講し、今後美容外科クリニック向けの周術期管理をなるべくわかりやすく説明します〜〜〜
美容麻酔、またクリニックベースの日帰り手術の全身麻酔に関する内容をわかりやすくお届けし、日本で安全な美容医療が行われることに少しでも貢献したいと思います。

以下の順番で順次更新しますので、今後ともよろしくお願いします❣️

美容麻酔塾の目次

総論
美容麻酔は術前評価と検査が必要か?
術前訪問
麻酔モニター
全身麻酔
鎮静、静脈麻酔、ガス麻酔、全身麻酔って何が違う?
美容麻酔の局所麻酔、脊椎麻酔、硬膜外麻酔って何?
美容麻酔だからこそのオピオイドフリー麻酔
術後鎮痛法
持続神経ブロックもいらない?長時間作用の局所麻酔薬リポソーマブピバカイン
術後吐気嘔吐
術後肺血栓塞栓と脂肪塞栓
各論
脂肪吸引の麻酔
腹部形成術の麻酔
フェイスリフト(SMAS法)の麻酔
鼻形成術の麻酔
骨切り手術の麻酔
豊胸術の麻酔


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