鼻形成術の麻酔
1.総論
鼻形成術麻酔の最大の特徴は、術野に血液、消毒液、口腔分泌物が存在し、確実な気道確保や咽頭反射がなければ誤嚥のリスクが非常に大きいことです。
挿管を伴わない鎮静(静脈麻酔)下の鼻形成術を全否定するつもりはないが、気道確保がないので患者の呼吸数、分時換気量、上気道の開存度、CO2蓄積などをしっかり観察する必要があり、麻酔科医にとっても難易度が高いです。
したがって、鼻形成術では術式によって静脈麻酔やMAC(意識下鎮静法)を選択することも可能だが、安全面、また手術時間を考慮すると,全身麻酔のほうが患者の負担が少ないため、 望ましいと考えています。
2.手術方法
白人に比べると日本人をはじめとするアジア人の鼻は基部が広く、鼻根が低く、皮下組織が厚い(丸い鼻先)という特徴があります。
手術法として主に以下のようです。
①隆鼻術
プロテーゼや自家組織(主に耳介軟骨)を用いて鼻を高くします。
②鼻尖形成術
③鼻中隔延長術
鼻中隔軟骨に自家組織(鼻中隔軟骨、耳介軟骨、肋軟骨)を移植して延長します。
④ 鼻骨骨切り術
鷲鼻、広鼻、斜鼻などの改善を目的に顔面骨である鼻骨の骨切りを行います。
実際の手術では 症例毎に複数の手技を組み合わせることになります。
手術の特徴:
1.手術による侵襲が少ない
2.出血量:通常200ml以下
3.手術時間:術式、症例の難易度、術者の腕、他部位の手術併用などによるが、一般的には1~4時間となります。
3.麻酔注意点
適切な鎮静、鎮痛で、筋弛緩は必要ないが、体動は危険です。
プロポフォール 、レミフェンタニルによるTIVAが理想ですが、GOSとしっかりしたPONV対策は可能です。
1).術中の注意点
①.挿管チューブ固定:
気管内チューブはRAEチューブ、スパイラルチューブを使用することが多いが、LMAを使用する場合もあります。
しかし、LMAは利便性があるが、骨切りを伴う広範囲の修復では出血が多いこともあり、誤嚥またPONVのリスクが高くなります。
術中に鼻柱と鼻尖部の左右対称を判定するために、挿管チューブは基本的に下顎正中に固定されます。
咽頭パッキングで、食道や胃への血液の垂れ込みを防ぐことができますが、咽頭痛という欠点が高いです。
術中に洗浄液や血液、分泌物が咽頭に流れ込む可能性があるため、気管チューブカフをしっかり入れることも大事です。
手術時間が長い場合、抜管する前に明らかな出血がないことを確認し、口腔内の血液、分泌物を吸引した上抜管します。
②.麻酔維持:
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