持続神経ブロックもいらない?長時間作用の局所麻酔薬リポソーマブピバカイン

アネちゃん

1.長時間作用の局所麻酔薬リポソーマブピバカイン

リポソームブピバカイン(liposomebupivacaine: Lipo-B)は最大72時間の局所鎮痛効果がある徐放性製剤です。リポソームからブピバカインが緩徐な放出により、ブピバカインの局所麻酔作用の持続時間を延長し、血漿濃度のピークを遅らせます。2011 年に米国 FDA が腱膜瘤切除術と痔核切除術後の創部浸潤での使用を承認し,Pacira 社より EXPAREL® として発売されています。長時間作用の局所麻酔薬なので、持続神経ブロックもいらないではないかとう声もたまたま聞こえます。

2.効きますが高いお薬

Lipo-Bを乳房手術および腹部形成術術後鎮痛として使用した研究では、術後の痛みが軽減され、術後の麻薬使用量が減少し、満足度は高かったです1。しかし、やはり高価な薬剤のですので、費用対効果研究では違う結果になりました。大胸筋下豊胸術を受けた患者では、閉創前に片方のインプラントポケットにブピバカインを、もう片方にLipo-Bを投与し、RCTを行いました。Lipo-Bの使用により術後の痛みが統計的に有意に減少したが、患者調査による追加料金が利点にはならないという結論でした2。

さらに、整形外科領域のレビューでも、Lipo-Bは対照薬と比較して性能が劣ると結論づけられています3 4。最近のコクラン・レビューでは、Lipo-Bが標準的な塩酸ブピバカインよりも優れていることは証明できないと結論づけています5。Lipo-Bに関する文献の質が低く、十分な数のサンプルを用いた無作為化マスクデザインがまだ少ないです。2021年3月にJAMA openに掲載した胸骨切開が必要とする心血管手術を対象とした無作為化臨床試験において、Lipo-Bは従来のブピバカイン製剤と比較して、術後3日間の痛みのコントロールを改善せず、補助的なオピオイドの使用を減少させなかったです6。

2.安全性評価

また、Lipo-B を神経ブロックに用いた場合の安全性について,過去の第I~III相試験を検討し問題ないことが示されています7 。しかし、Lipo-B はカテーテルを介して持続投与をしなくて済む点は魅力であるが,一度投与してしまうと途中で中断できないという調節性の悪さが欠点となりうリマス。アナフィラキシーショック、局所麻酔中毒また過剰投与による運動神経麻痺などの副作用が出るときに、対応は困難かもしれません。

3.使うか?使わないか?

Lipo-B現時点では 未承認薬として美容外科手術術後鎮痛に多く使用されます。米国で承認されているが日本では薬事法上の承認がないものであるので、日本人や日本の医療環境において有効性・安全性が十分に確かめられていないために承認されていないものです。未承認薬の使用は、予測通りの治療効果が得られないばかりではなく、予期しない副作用で苦しむ 場合もあることを十分に理解し、納得しておく必要があります。副作用や予期せぬ状態になったときにどのような対応が可能であるか事前に患者さんとの話し合うべきだと思います。

参考文献

1. Edwards MC, Sorokin E, Brzezienski M, Nahai FR, Scranton R, Wall H, Wall S, Finical S, Smith K: Impact of liposome bupivacaine on the adequacy of pain management and patient experiences following aesthetic surgery: Results from an observational study. Plastic Surgery 2015; 23: 15-20

2. Nadeau MH, Saraswat A, Vasko A, Elliott JO, Vasko SD: Bupivacaine Versus Liposomal Bupivacaine for Postoperative Pain Control after Augmentation Mammaplasty: A Prospective, Randomized, Double-Blind Trial. Aesthetic Surgery Journal 2015; 36: NP47-NP52

3. Kuang MJ, Du Y, Ma JX, He W, Fu L, Ma XL: The Efficacy of Liposomal Bupivacaine Using Periarticular Injection in Total Knee Arthroplasty: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Arthroplasty 2017; 32: 1395-1402

4. Kolade O, Patel K, Ihejirika R, Press D, Friedlander S, Roberts T, Rokito AS, Virk MS: Efficacy of liposomal bupivacaine in shoulder surgery: a systematic review and meta-analysis. J Shoulder Elbow Surg 2019; 28: 1824-1834

5. Hamilton TW, Athanassoglou V, Mellon S, Strickland LH, Trivella M, Murray D, Pandit HG: Liposomal bupivacaine infiltration at the surgical site for the management of postoperative pain. Cochrane Database Syst Rev 2017; 2: Cd011419

6. Sandhu HK, Miller CC, III, Tanaka A, Estrera AL, Charlton-Ouw KM: Effectiveness of Standard Local Anesthetic Bupivacaine and Liposomal Bupivacaine for Postoperative Pain Control in Patients Undergoing Truncal Incisions: A Randomized Clinical Trial. JAMA Network Open 2021; 4: e210753-e210753

7. Hadj A, Hadj A, Hadj A, Rosenfeldt F, Nicholson D, Moodie J, Turner R, Watts R, Fletcher I, Abrouk N, Lissin D: Safety and efficacy of extended-release bupivacaine local anaesthetic in open hernia repair: a randomized controlled trial. ANZ J Surg 2012; 82: 251-7

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