脂肪吸引の全身麻酔

みなさん、麻酔を愛する麻酔科専門医のアネちゃんです❤️
今回は全身麻酔下脂肪吸引術において、手術の流れ、周術期のリスクと注意事項を説明します。

1.手術の流れ:


輪郭形成のための脂肪形成術は、体重を減らす(肥満の治療手術)手術ではなく、 蓄積脂肪を除去し、体の輪郭を整える手術です。

①Tumescent法


脂肪吸引を行う最も一般的な方法はTumescent法です。生理食塩水にリドカイン(0.05~0.1%)とエピネフリン(1:500,000)を加えたTumescent液を注入します。
混合物中のリドカインは、鎮痛作用があり、エピネフリンは止血作用と鎮痛効果の延長を期待しています。

手術開始時に、まず手術用切開創に1%リドカインを皮内注射し、次にカテラン針でtumescent液を脂肪吸引部位に、深部から浅部の皮下脂肪まで均等にtumescent液液を注入します。 tumescent液液注入時の患者への刺激を最小限にするため、術者の手は皮膚表面から注射針先端の位置と高さを感じながら、術部を扇状にゆっくりと往復させ、徐々に速度を上げていきます。
皮下脂肪に刺す時に、痛みが強く、長時間に及ぶこともあるため、鎮痛レベルをアップする場合もあります。

手術部位の皮膚が膨張して硬くなり、エピネフリンの血管収縮作用で皮膚が白くなるまでtumescent液液を注入します。 この時点で手術部位の脂肪の全層に均一に膨張液を注入し、注入が完了したら針を抜きます。 tumescent液液の効果が十分に発揮されるまで、20分程度待ちます。

②脂肪吸引

現在、脂肪吸引の主流は、伝統的陰圧脂肪吸引(SAL, Suction-assisted lipectomy )、電動などの動力を用いたパワーアシスト脂肪吸引(PAL, Power-assisted liposuction )、体内超音波を用いた超音波アシスト脂肪吸引(UAL、Ultrasonic-assisted liposuction )、水圧を用いた水圧アシスト脂肪吸引(WAL、Water-assisted liposuction )、皮下レーザーを用いたレーザーアシスト脂肪吸引(LAL, Laser-assisted liposuction )などでありますが、最も広く用いられているのはやはり伝統的な陰圧脂肪吸引(SAL)です。

SALの流れとして、メスで2~4mmの手術用切開創を作り、脂肪吸引カニューレを設置し、陰圧装置を接続して脂肪吸引を開始します。 吸引は通常、深い脂肪層から始まり、深部から表層へと進み、それぞれのトンネルを針が往復し、脂肪を吸引します。 各トンネルを長く放置しておくと、吸引しすぎて修復不可能な凹みができてしまうので、注意が必要です。

③包帯圧迫

脂肪吸引終了後、ダウンタイムを軽減して効果を高めるためtumescent液や血液を出来るだけ絞り出します。また、患部をガーゼで圧迫し、包帯を巻きます。 圧迫包帯はtumescent液の吸収と排出を促進し、皮膚の収縮を促進し、痛みを軽減することができます。 tumescent液の蓄積を防ぎ、除去を早めるために、手術翌日には脂肪吸引の切開部を一時的に開閉する必要もあります。手術の翌日は、より均等な圧力で圧迫下着に変更します。

2.周術期の注意事項

脂肪吸引の麻酔法は、患者の合併症、施術部位、脂肪吸引の種類、手術時間と範囲、脂肪吸引量、医師の希望と患者の好みなど、多数の要因に基づいて選びます。顔や上腕、腹部などの小面積の部分脂肪吸引は局所麻酔で対応できますが、大面積の場合は全身麻酔をお勧めします。単一麻酔方法を支持するエビデンスはありませんが、American Society of Plastic Surgeons Practice Advisoryでは、低血圧や容量負荷のリスクがあるため、オフィスベースクリニックでは脊椎麻酔、硬膜外麻酔などの区域麻酔を避けることを推奨しています(1)。

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