各論-フェイスリフト(SMAS法)の周術期管理

みなさん、こんにちは。
麻酔を愛する麻酔科専門医のアネちゃんです❤️
今日は美容麻酔の各論として、フェイスリフト(SMAS法)周術期管理の注意点を説明します。

フェイスリフトとは

フェイスリフトは、余分な皮膚を除去し、顔の筋膜や組織を吊り上げることで、皮膚のしわを減らす手術です。顔を若返らせるだけではなく、頸部のたるみやしわに最も有効です。

フェイスリフトは色な種類がありますが、今回はその中で一番効果が大きく、効果持続時間が長いフェイスリフト(SMAS法)を紹介します。

フェイスリフト(SMAS法)手術の流れとして、側頭部の有毛部から耳前部を通り耳介後部、さらに頸部の頭髪生え際の目立たない所を切開します。鼻唇溝の近くまで、SMAS上の皮下脂肪層を広範に剥離し、SMASをリガメント上で縫縮します。最後に余った皮膚は切開線上で切除します。

そして、手術終了時に吸引ドレーンを挿入、包帯圧迫をしっかり行います。ドレーンは、術後の翌日に抜去し、包帯圧迫は術後3日後で解放し、術後7日に抜糸します。

出典:日本形成外科学会:フィスリフト
出典:日本形成外科学会:フィスリフト

局所麻酔でも可能ですが、広範囲を安全、確実に手術するには全身麻酔が必要なことも多く、入院をすすめることもあります。

日本形成外科学会

術前の注意点 

フェイスリフト(SMAS法)を希望する患者さんは45歳以上が多く、さらに手術時間も4時間以上になることも多く、適切な術前スクリーニングが必要です。麻酔科専門医による併存疾患、休薬に関して、慎重に術前診察を行う必要があります。

術中の注意点 

1.挿管チューブは下顎正中固定

挿管チューブはスパイラルチューブ、RAEチューブ、あるいはLMAが可能ですが、気道確保の際には正中固定、また顔の左右対称を歪ませないことが非常に重要です。個人的に頭頸部の手術では、確実な気道確保が大事なので、基本的に気管内チューブによる挿管管理を行います。

美容外科医は好みの固定方法がありますので、その好みに合わせる必要もあります。挿管チューブは下顎正中固定し、あるいはデンタルフロスで犬歯や前歯に結ぶ口内固定をする方法もあります。

術野は挿管チューブに近く、また術中頭部を動かすので気管内チューブが安定して接続されていることを確認しなければなりませんし、体動やバッキングも起こりやすいので鎮痛鎮静深度を一時的に深めることもあります。

2.血圧高めで止血確認

術中血圧コントロールが重要で、皮膚切除中はベースラインより20~30%低い血圧を維持しますが、皮膚縫合時に止血を確認するために、血圧ベースライン近くまで戻すことが大事です。

3.体動とバックングは禁

片側の縫合が終わったら、顔を反対側に移す時、麻酔深度を深めにし、筋弛緩薬の追加でバッキングを予防します。

4.顔面浮腫の予防

出血は少ないので、輸液量を最小限にキープします。過剰な輸液は顔面浮腫の原因となるため、維持輸液のみを行います。また、浮腫みを最小限に抑えるためにデキサメタゾン(4-10mg)を使用することもおすすめです。

覚醒時の注意点

咳、バッキングは静脈還流と出血を増加させるので、安静に患者を抜管することは大事です。抜管後の出血を最小限に抑えるために、美容外科医は覚醒前に包帯を巻き、その後包帯圧迫を続けます。頭部の包帯圧迫は顔面と頸部の円周方向に行い、包帯が首を締め付けすぎないようにする必要があります。息苦しい時に、適宜に包帯の圧迫度を確認し、緩めにしてもいいです。

また、手術後出血、血腫を減らすために、血圧上昇を避けるべきです。頭部を30度以上高くしておくと 、手術部位にかかる静脈圧を軽減し、出血を減らす可能性があります。

術後の注意点

フェイスリフト(SMAS法)には術中に局所麻酔が使用されるため、術直後にあまり痛くはありません。しかし、皮膚牽引の強い術式ではPONV(術後吐気嘔吐)のリスクが高いので、マルチモーダルにPONV を予防することは大事です。Aldreteスコアに基づいて退院に必要な期間を超えても、しばらく回復期の患者を観察した方はいいかもしれません。

いかがでしょうか?
少しでもフェイスリフト(SMAS法)の周術期管理に詳しくなりましたか?
麻酔科医も美容外科医も安全快適な美容医療を行うことを頑張りましょう!
それでは、引き続きよろしくお願いします❣️


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