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「極め(きめ)が強い」を言語化してみよう(全文無料)

今日も今日とて柔術は楽しい。


1.極め(きめ)が強いとは

タップが取れる、相手を壊せるという意味で「極めが強い」という表現をするときがあります。

たしかに組技格闘技をやっていると「極めが強い」と感じることが多いです。便利な表現なのでよく使われます。

要はタップが取れればいいんです

極めるためには、タップ=ギブアップが取れればいいです。もしくは絞めで落とすか折ってしまうか。(一応、ルール上は関節技で折っても関節を外してもタップしなければ負けにはならないですが、それを耐えるのはバケモンなので今回は除外します。あと確かキッズは見込み一本あり)

やり方はどんな形であれとにかくタップが取れればよし。一般的な正しい形でなくとも。というかタップが取れる形が正しい形です。

今回は極めの強さ、を整理して言語化してみようと思います。

2.極めが強いの細分化

要は「心技体」です。

2-1 「体」パワー(筋力、階級)

シンプルにパワーがあれば極まります。体重が3倍違うキッズと大人だとさすがに厳しいです。パワー大事。あと階級も。

鬼のパワーがあれば、関節ではなく骨を折ってタップを取れるかも(腕十字で肘ではなく前腕を折る、フットロックで足首ではなくスネを折る的な。)

2-2 「技」テクニック(効率的に自分のパワーを伝える、相手をコントロールする)

いくらパワーがあっても相手にそれを伝えられなければ極まりません。ボディビルダーでも寝技をやったことのない人が柔術家を極めるのは無理です。

サブミッションのテクニックの哲学を言語化するとこんな感じだと思います。

自分の力が最も発揮できる形をつくる
+
相手の力が最も発揮できない形をつくる

「相手の耐える力」 < 「自分の折る(絞める)力」

の図式をつくる

腕十字なら、「相手は仰向けで肘を伸ばされて力が入らない」「自分は相手の肘を抱えて全身の筋肉を使って伸ばせる」という有利な形を作っています。

そして「相手の上腕二頭筋で肘を曲げる力」<「自分が全身を使って腕を伸ばす力」という図式になるので強いです。

フットロックなら
「相手の足首を曲げる力」<「自分が背筋で相手の足を伸ばす力」
の図式なので強いです。

テクニックを使うことで、自分よりも筋力がある相手でも極めることが可能になります。

2-3 「心」メンタル(気持ち、殺気、勝ち気)

これも大事。やっぱり格闘技なので。

試合だったら「タップしなければ折る」くらいの強い気持ちがあってもいいと思います(もちろんケガがないのがベストではありますが、柔術は格闘技であり、試合は真剣勝負なので)

これは才能や持って生まれたものもあるような気もしますがどうでしょう。

躊躇なく相手をフルパワーで折りに行けるメンタルは極めの強さにつながります。

2-4 感覚、センス、“絞め勘”、”極め勘”

才能的な話になるんですが。打撃の”当て勘”のような感じで絞め技にも“絞め勘””極め勘”のようなものがあります。最初から絞めやサブミッションのポイントができている人が一定数います。

じゃあ、センスがなければダメかというとそんなことはなく。センスはスピリチュアルなものではなく、「感覚的に技のディティールを理解している」だけのことです。極めのセンスがなくても、しっかり理論的に技の仕組みを理解して打ち込みやスパーでたくさん練習すれば極めは強くなれます。

3.技の種類と極めの強さ

3-1 極めが強くなりがちな技

極めが強くなりがちな技、というのがあります

例えば下からの腕十字はゆっくり極めるとそのまま潰されて逃げられるので一気に極める必要があります。モンジバカ(手首固め)やフロントチョーク、パス際の襟絞めなどもそうですね。

コントロールしている部分が少ない技は一気に極めないといけないので極めが強くなりがちです。パス際の襟絞めは首しかコントロールしてないし、モンジバカは手首だけです。下からの腕十字やフロントは相手の下半身のコントロールがないです。

あと可動域が少ない関節を狙う破壊力の高い技。代表的なのはヒールフック(道着アリの柔術では反則、ノーギのみ可)。ヒールフックは一気に膝が極まる(場合によっては足首)ので極めが強くなりがち。あとはV1アームロックとかも一気にバキッといきがちです。

3-2 極めが強くなくても取れる技(ゆっくり極められる技)

逆に極めが強くなくても極めやすい技、というのも一定数あります。(これらの技は極めが弱い、という意味ではない)

極めが強くなりがちな技の逆で、コントロールが強い形で極めるサブミッションはゆっくり極めてもタップが取れます

代表的なのは、バックからのチョーク、送り襟絞めはゆっくりでもタップが取れます。バックコントロールしているので。三角絞めなどもコントロールが強くてなおかつ相手の顔が見えるのでコントロールしやすいです。

あと、可動域が広い部位を攻める技もゆっくりと極められます。一気にバキッとなりづらいです。

表の腕十字(マウントなどから自分が上になって極める腕十字)や、相手の頭を跨いで極めるキムラロック、がっちり逃げられないように固定したフットロックなども比較的ゆっくり極められます。

ただ、これらの技はあくまで「ゆっくりでも極められる」というだけで決して「極めが弱い技」というわけではないです。バックチョークも表の腕十字も、キムラロックもフットロックもやろうと思えば一気に強く極めることも可能です。

3-3 落ちやすい技

極めの強さ≒タップの取りやすさ

なんですが、もう一つ

極めの強さ=落としやすさ というのがあります。

これも極めが強いといえるでしょう。

①苦しくないので落ちる

代表的なのは肩固め。精度の高い肩固めは苦しい思いをすることなく意識が遠のきます。他にもきれいに首に入った襟絞めなども落ちやすいです。苦しくないので入ってると思わずタップしないのでそのまま落ちます。

②技が分からなくて落ちる、折れる

自分の知らない技だとかけられたときに「なんじゃこれは!」とパニックになって暴れているうちに落ちてしまう、折れてしまうパターンです。

絞め技は「このままだと落ちてしまうな」と思ってタップするものなので、知らない絞め技をかけられるとどこでタップすればいいか分からず落ちてしまうことがあります。

関節技は痛みが伴うのでだいたい「あ、このままだと折れる!」と気づいてタップできますが、初心者などは技の仕組みを理解できていないがゆえにタップのタイミングが遅れてケガすることもあります。

③入ってると思わず落ちる、逃げられると思って落ちる

上からの突っ込み絞めやサイドにパスできそうな形でのベースボールチョークや襟絞め(小手絞りなど)入ってるとは思わないのでタップが遅れて落ちやすいです。

自分がサイドとれそうな状態やクローズドの中に入れてる状態なので絞めが入っていると思わず(もしくは逃げられると思って)、タップしないことがあります。そうすると落ちます。

4.まとめ

極めが強くなるには心技体どれがかけてもダメです。全部必要。

極め力とは、「強い気持ちと圧倒的なパワーと精度の高いテクニック」が合わさったものと言えるでしょう。あとはその人の技のチョイス。

極めが強くなるにはどうしたらいいのか

心技体が大事、と言いましたが、極めを上達させようとするなら磨くのは「技」一択です。「技」を伸ばそうとすれば自然と「心」「体」も磨かれます。

まず「心」を鍛えるのは難しいです。「極めを躊躇しないようなメンタルを鍛えるぞ!」とやっても多分ほとんどの人は成長しません

次に「体」。これは極めに重要な要素ではあるのですが、じゃあベンチプレスやスクワットや握力強化をしたら極めが強くなるかというと疑問です。極めに使う筋肉や体の使い方は単なる筋トレだと鍛えるのは難しいです。それにパワーをつけてもそれを伝える技術がなければ極めは強くなりません。

やはり「技」を伸ばすことを意識しましょう。教則やクラスで技の仕組み(コンセプト、哲学)を理解する、打ち込みで体で覚える、スパーで試行錯誤、調整。極まらなかったときに「なぜダメだったんだろう」と考えることで技術が伸びます。

スパーをガンガンやることで絞めに必要なパワーもメンタルもついてきます

極めが強い人を「あの人は気持ちとパワーが強いから」と言いがちだけど本当か?

なんどもいいますが、極めには「心技体」すべて大事です。でも、極めの強い黒帯の先生の技を見ると「気持ちとパワーが強いから」極まっていることは少ないです。

多くの場合

「極めの強さ=恐ろしく精度の高いサブミッション」

だと個人的に思っています。

「襟を持つ位置、相手と自分の体の位置取り、体重をかける位置、手首の返し方、タイミング、力を入れる方向や部位、etc…」そういったディティールの精度の高さに加えてパワーや気持ちがのると極めが強くなる、というイメージです。

長くなりましたが、極めの強さについて自分の考えをまとめられて満足です。精度の高い技を目指して極めを強くできるよう精進します。

2024/10/22 アンディ

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