私の大輪の花はどこで咲くのか。
「好きなこと仕事にしている人なんてほんと一握りだからね。」
この言葉はどれだけ多くの若者の未来に陰を落としてきたのだろう。
そんなことを考えた。
冒頭の台詞、それは親から私自身が幾度となく言われてきた言葉だ。
言われるたび、心が痛んだ。
大人って、つまらないんだ。楽しくないんだ。
そんな風に後ろ向きに考えてしまう自分がいた。
冒頭の台詞には続きがあった。
「仕事は、それ以外の部分で楽しく生きるためにしてるんだよ。」
それもそうかと思う自分もいる。
洋服を買うこと、旅行すること、カフェ巡りをすること、それらを楽しみに仕事を頑張っている人が世界中にたくさんいるのだと思う。
大学生の私がするアルバイトなんてたかが知れているが、私自身だって”アルバイトの仕事”が好きでやっていたわけではない。必要に迫られてやっていた。
私は何も言えない。
仕事をしている人はどんな人だってすごいし、仕事に優劣はつけられないし、働いているひと全員を私は心の底から尊敬している。
仕事をするってすごい。世界を動かしているのだもの。
また、ある人は言っていた。
「好きなことを仕事にしない方がいいという大人がいる、でもその言葉は好きなことを仕事にできなかった人間の言葉だ。」
この言葉をかけてくれた人は本当に自分の仕事が好きだ、毎日ワクワクしている、と勢いよく語っていた。キャリアを考えるための授業の講師である。
私はその言葉を初めて聞いた時、ちょうど1年前くらいだろうか(流石キャリアについての先生をしているだけあって熱いこと言ってるなぁ)くらいにしか思っていなかったが今は違う。
語れるだけの熱量を持って仕事をしているのって率直に羨ましいと思う。
人生の多くの時間を捧げるのだからやはり好きなことであった方がいいに決まってる、そう思う自分がいるのだ。
でもそこにもう1人別人格が現れる。
そして『仕事は好きな事と向いている事どちらが良いか論争』が行われる。
何回も開催されてきたが、当たり前のように毎回決着がつかない。
実際、自分に向いていることなんてそう簡単には分からないのだ。
こんな話を聞いたことがある。
天国で、ある男が神に尋ねた。
「史上最も良い武将はどなたですか?」
すると神は1人の男を指差した。
「いやいや、そんなわけがない。彼は生前パン屋の主人だったんだから。」
そう男が返すと、神は言った。
「生きている間、彼はパン屋であったが武将として生きていれば史上最も良い武将だっただろう。」
大分うろ覚えだし、どこで聞いたか見たかを思い出せないのが悔しい。
だがこの話を見聞きした時、私は脳みそに稲妻が走ったような衝撃を覚えた。
「武将として生きれば最強だったのにパン屋だったの??????」
なんてことだ。武将として生きれば活躍できたのに。
そんな風に一度考えてハッとした。
パン屋の主人は武将であることを望んだだろうか。
「あなたは武将になれば活躍できますよ。」そう言われても
「いや、自分はパンが好きなのでパン屋がいいです。」そう答えたかもしれないじゃないか。
そうしてまたもや答えの出ない『仕事は好きな事と向いている事どちらが良いか論争』は私の中で考え続けられる永遠のテーマになるのだと思う。
私が就職し関わることになる仕事が好きなこと、向いていること、あるいはまた別の何かであったとしても、自分の行先を考える大きなきっかけを与えてくれた先生に感謝している。
いつか私も自分の仕事を先生に語ると、心に決めた。
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