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第65回:料理で「推し」を応援!

こんにちは、あみのです!アイデアが非常に面白い、「料理」をテーマにした小説と出会えたので、紹介します。

今回の本は、秋杜フユさんの『推し飯研究会』(集英社オレンジ文庫)というライト文芸作品です。

小説でも「料理」をテーマにした作品は、数多くあります。「食」は誰もが魅力を感じるであろうテーマだし、この手の作品では美味しいものを食す「幸福感」を読み手も味わえる内容が多い印象があります。

今作でも、美味しい料理から得る「幸福感」をところどころで感じることができます。しかし、今作の「幸福感」の得かたは、他の料理をテーマにした小説に比べるとかなり個性的だと思います。

美味しい料理を食べて満足する幸福感と、熱中できる「好き」があることへの幸福感を同時に味わうことができる、最高に「尊い」1冊です。

あらすじ(カバーより)

食べれば、ますます「尊い……!」
この春から一人暮らしを始めたものの、料理嫌いの佳奈子。ひょんなことから入った大学のサークルは、その名も『推し飯研究会』。みんなの「推し」への愛を語り、「推し」にまつわる食べ物を手作りのうえ食し、「推し」がいかに尊いのかを実感するという不思議な活動だったが、意外と居心地が良くて?「ストイック素うどん」「懐深いカレー」など……推し飯、召しあがれ!

感想

推し飯——自らが全力で愛し、応援する人物・キャラクターの好物といった、その人を想起させる食べ物のことである。

主人公の佳奈子は、ちょっとオタクな友人の誘いで「推し飯研究会」の活動を覗くことになります。そこで待っていたのは、アイドルや二次元のキャラクターなどを「推す」ことが生きがいの女子学生たちでした。

喫茶店が舞台の漫画に登場するたまごトースト、アイドルがSNSに画像を投稿していたクッキーetc…それぞれの「推し」を象徴する料理を作っては、その愛を必死に語るメンバーに、佳奈子はじわじわと惹かれていきます。

ジャンルは違っても、それぞれの「好き」を否定せずに理解し合う。私も「推し飯研究会」のメンバーから「推し」への愛を必死に語られたら、佳奈子と同じく自分の中の新たな扉を開けてしまいそうです…!

「推し飯研究会」と関わるようになってから、メンバーが推す様々なジャンルだけでなく、これまで独特な事情で自分とは縁がなかった「料理」にも佳奈子は関心を持つようになります。

佳奈子にとっての「推し飯研究会」は「居場所」であって「推し」でもある。自分の中に「推し」ができることは、日々に楽しみが生まれるだけでなく、これまで興味がないと思っていたことに挑戦するきっかけにもなることを感じる作品でもありました!

また、今作で興味深かったのがメンバーの「推し」の対象が予想以上に幅広かったことです。研究会には二次元やアイドルだけでなく、アプリの開発者やフィギュアの原型師のようないわゆる「クリエイター」を推している子が何人かいたのが驚きでした。

私もイラストレーターや小説家といった人々が大好きなので、私の「推し」について「推し飯研究会」で語ってみたら、メンバーはどんな反応をするのだろうか、また私の好きなクリエイターからどのような「推し飯」が生まれるのかといろんな想像が膨らみました。

好きなイラストレーターがイラストで入れたモチーフとか、好きな小説に登場する料理とか実際に作ってみたら普通に楽しそうだし、料理への意欲ももっと上がるかもしれませんね。

自分の「好き」をきっかけに、料理の世界にも夢中になる。これまでに読んだことがない形の「飯テロ」小説でした。私はこの物語を全力で推します。「推し飯」に没頭する女子大生たちの幸福感あふれる日常がもっと見たいので、続編希望です!

そして、今作を読了して一言。

「尊い……!」

***

ここまで感想を読んで頂き、ありがとうございました。何か「好き」と呼べるものがひとつでもある人には、共感や発見が絶対にある作品だと思うので、興味があれば読んでみてください!

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